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知る人ぞ知る~ダンジョン発生のあおりで失業した薬師の娘は薬膳料理店を開きます~  作者: 高瀬あずみ


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7.秋の実りと岩魚のあんかけ仕立て

投稿忘れてました。



 洞窟通路を問題なく抜け、人間の居住区域へと戻ってくると、私はようやく溜め込んでいた緊張から解放された。お山の聖域は基本、人を拒む。例外として受け入れられてはいるが、体内の機能すら止められて、人間をやめたような気分になるのだ。それにあの場所で起こることはどれもがあまりに非日常的すぎる。お山の意思が伝わって来るとか、あちこちに誘導される鍵だとか。


 いや確かに? お山で得られる素材各種は大変に魅力的。ご先祖から代々、我が家の人間を虜にしてきたくらいに。未知の薬効のある植物を少しの労働で得られる。だからこそ我が家は村に居座って来た。

 でも私は地に足つけて生きたい。普通の、人間の手の届く範囲で、ちまちま薬草やら山菜やらを採取して。そうして薬とおいしいごはんにしたい人種だった。ある意味、我が家系の中では異端かもしれない。お山への奉仕は見返り付きと割り切って、投げ出すつもりは今後もないけれど。まあ私の身体に流れる血は、もうほとんどが現地産に置き換わっているから仕方ない。



 だから馴染みのある裏山を私は飛び回った。何しろ、秋の実りが待ってくれていたから。

 野蒜(ノビル)、山栗、銀杏、木通(アケビ)に山椒。蟒蛇草(ウワバミソウ)零余子(ムカゴ)。そして様々な、きのこ・キノコ・茸!

 秋の山は美味しいで溢れている。


 ただ、茸には注意が必要だ。大半の茸には毒がある。毒は薬にもなるから少量は採るけれど、見誤って食べると洒落にならない。残念ながら私の<鑑定>は茸は対象外。植物じゃないから。茸こそ鑑定したいのに! もしかしたら茸ばかり集中採取していたら、菌類も鑑定できるようにならないだろうか。そんな期待はあるものの、実際は知識にあるものだけを慎重に選んでいく。我が家には手描きの茸図鑑があって、小さい頃から絵本代わりにして育った。絵心もあったらしいご先祖作の図鑑は、細かい特徴まで教えてくれる優れもの。貴重品過ぎて、山に持ち込んで比較できないのが残念だけれど、幼少期から繰り返し眺めた記憶は強い。

 ハナイグチ、舞茸、ムキタケ、なめこ、クリタケ、タモギタケに松茸、まだまだある!


 私の後をついて収穫物を収納してくれるアルマジット氏は、元々がそう口数が多くはなかったが、裏山でまたもや天幕にお世話になった翌日もはしゃぐ私の姿に、最後にはずっと沈黙していた。

 でも例えば、私が栗の木に登ろうとすると、それを押しとどめて呪文を発して、誰もいない方向へと実を落としてくれたりしたし。手の届かない場所の木の実をとってくれた(普通に手を伸ばして)のも助かる。なんか一家にひとりいたら便利な人材だ。


 どんぐりを拾っていたら、同じ目的の猪に遭遇して血の気が引いた。いつもならば猪が嫌がる匂い袋を提げているんだけれど、今回はお山帰りで用意がなかったのが敗因。

 我が家は代々薬師だから、獣を狩るような戦闘能力はなかった。内臓が薬にできる獣もいるけれど、鮮度も大事なので、狩りの現場にたまたま居合わせたとかでないと意味がない。だからか薬にするのは植物系中心になった模様。

 アルマジット氏がさくっと魔法で退治して収納もしてくれて本当に助かった。攻撃手段がないと詰む上に、倒せても猪は大きく重すぎて、通常は運ぶにも男手複数が必要な大物だ。ただし以前の村でこんな大物が狩れて持って帰れたら祭だったよ。


 植物などの採取と違って、お肉になる獲物は手間がかかる。すぐに血抜きしないと味が落ちるし。だからって血抜き作業は場所を選ぶ。水辺がいい、水辺が。内臓もすぐに取り出さないといけないから、やっぱり川で作業したい。特に猪というやつは身体から降る程にマダニがいるから即、水で洗いたい! あと、美味しいお肉にするためには狩ってすぐ冷やすの大事。つまりこの三つの作業には水場でないと厳しいのに、猪と遭遇した場所は近くに川がなかった。

 川まで運ぶのにかかる時間と労力(人手を呼んでくる)を考えると、収納ありがたすぎる。しかもアルマジット氏の収納、時間停止なんだって。最高かよ。戻ったら、うちの中庭で魔法も使って解体までしてくれるそうだ。私が料理で返すという前提で。大歓迎。ただまあ、すぐには食べられないけどね。少しは熟成もさせたいと説明済み。




 そんなこんなで猪という予定外もあったけれど、昼過ぎには懐かしの我が家に帰還。

 今夜も夕食に招待するために、アルマジット氏は我が家にいる。なんか近くに彼がいることに慣れた。


「このあたりの土地だが、所有者はどうなっているのだろう?」

「我が家以外は空き地ですけど、おそらく街の所有物になるのでは?」

「しばらく場所を借りても問題はないだろうか」

「私が答える権利はないですけど、どうせ使ってないし、他の人はほとんど来ないので事後承諾でもいけそうですけどね」

「ふむ。ならまあ、ギルドには貸しがあるからなんとかなるだろう」


 そしてアルマジット氏は我が家の敷地の隣に天幕を張ってしまった。たしかにダンジョンに今日すぐ用事があるわけでもなかったら、わざわざダンジョンまで行って、そこで泊まる必要もないから合理的なのか?

 水なら我が家の井戸を使ってもらってもいいし。お世話になったから、食事の他にお風呂だって貸してもいい。身内でもない男性にするには結構破格な対応だと思う。


 そう言うと彼は非常に戸惑った顔をした。なんでも彼の出身地のあたりは砂だらけで乾燥しているので、入浴の風習がないらしい。え、砂浴びって何!? 土地が違えば風習も違う。一応、ダンジョン生活でも身体を拭ったり、魔法で清浄をかけたりはしていたらしい。たしかに彼から異臭を感じたことはなかったし、髪もさらさらで髭もあたっているようで、そこらの冒険者よりもよほど清潔感があったけれど。

「絶対、入浴してもらいます」

 私がそう言い切ったのは、決して咎められることはないはず。薬師としても清潔は健康のためだから推奨一択なんだから。



 さて帰宅して。五日も家を空けたので、まずは扉と窓を全開にしていって空気の入れ替え。開けっ放しでもこのあたりに人は来ないから大丈夫。

 二人で一旦、温かい薬草茶を飲んで一服してから中庭に移動。

 アルマジット氏に預けてあるものは多岐にわたる上に、今回非常に量が多い。考えた末、裏山採取物を先に出してもらうことにした。猪? 奴はその後で血抜きと解体と水路浸けだ。大きすぎて今出すと邪魔。


 各種山菜を洗って洗って洗って干して干して干して。一部はただ洗うだけでなく塩水に浸ける必要もある。

 店舗と作業場所、保管場所もある上に、元々複数人で住むように増築された我が家は、一人暮らしの現在、異様に広いと言える。しかし今回の収穫物、収納してもらえるのを良いことにかなり調子に乗っていた自覚もある。ほとんどが洗った後に乾燥させる必要があるのだが、干す場所が足りないかもしれない。特に大量すぎる葛の処理とか、冬中かけても終わら無さそうな予感。



 まだ明るいので、私が作業している間、アルマジット氏は興味深そうに中庭を見ていた。中庭は十分に日が届く上に、水路に井戸に温室まであるが決して狭くはない。むしろこの中庭は、十分家が建てられるほど広い。

 水路だって暗渠を通って中庭を流れ、また暗渠を通って下流へと通じているが、それなりの水量があるし幅もある。基本は水深は浅くしてあるが、大物用に深く掘った池もあって、普段、池へと、そして池から水路に戻る弁は閉じてあるが、今はどちらも全開。間に網は張ってあるけれど。池の形はなんとはなしに三日月に似ているかもしれない。

 とにかく、家に水路を引いてくれた先祖には感謝している。飲料に使う水はあくまでも井戸からのものを使うのだけれど。



 今日の分と決めた採取物の洗浄を終えた私は、笊に入れては各部屋に運んだりと慌ただしく動き、一段落ついた時点で夕食の支度に移行する。アルマジット氏はその間、猪の処理をしてくれるようだ。魔法ってすごいよね。あれだけの巨体を人の手も借りずに浮かしたり、そのまま血抜きしたりできるんだから。内臓摘出まで終わったら、池に沈めておいて欲しいと頼んである。魔法を使うことで処理がどの程度で終わるのかは読めないが、こちらの食事の準備が終わるまでに目途がついていれば良いのだけれど。



 さて。一般家庭にはないものが我が家には沢山ある。薬師だから、で押し通すにも無理じゃないかという設備もあって。しかも妙に技術が高かったりするから、何を目指してきたのかご先祖たちに聞きたい気になることもある。

 今私が対峙しているのは、台所の床の一部に設けられた生け簀だ。うん、普通の家にはないと思う。この生け簀は魚を飼うためにあるのではない。泥を吐かせるための生け簀。お山に向かう前に中庭の池に放していた岩魚をこちらに移しておいたので、これで泥臭くなくなっただろう。こちらの生け簀には餌になるものがないからね。この生け簀は暗渠になっている水路の一部なので、水は常に流れて淀むこともない。


 岩魚は例の裏山と洞窟通路のある山との間を流れていた沢の、もう少し下流の街に近い渓流で釣れる。元村の釣り名人に頼めば、生きたまま桶に入れて持って来てくれるのだ。もう高齢だから仕事は特にしていない人なので、今も頼めば釣ってきてくれる。報酬は自家製の薬酒。もうかなり高齢なのだが、薬酒の愛好家なせいかとても元気。釣って貰ったすぐ食べない魚は、中庭の池に放しておくのだ。ちなみに私の釣りの腕は普通。



 生け簀から掬った岩魚は、塩でぬめりを取って水洗いして頭を落とし、エラと内臓を取ってまた水洗い後、三枚におろしていく。前回、アルマジット氏が意外に健啖家らしいと分かったので、自分の分も合わせて三匹。軽く塩を振って下拵え終了。


 キノコは熱湯でゴミ取りした後に石突を取って細切りに。舞茸なども熱湯のあと細かく裂いていく。エカアダシャと人参は細切りに。玉ねぎはもう少し大きく。野蒜は別に茹でてから大きさを揃えて切る。ダンジョン産のサプタとダシャも刻んだ。

 数日、家を空けていたのでパンはない。今から焼くには時間もかかるので、芋をふかして熱いうちにすり潰す。



 そこまでしてから思いついたことがあり、私は中庭に顔を出した。

「アルマジットさんてお酒飲む人です?」

 前回の試食の時にはお酒を出さなくても文句は出なかったし、お山にも持ち込んでいなかったから、彼が飲む所は見たことがなかった。

「まあ、それなりには」

「じゃあちょっと用意しますね。池に(それ)を浸けたら、終了してお風呂にどうぞ」


 中庭を覗いた時には、猪は血抜きを終えて、内臓も取り出されて池に浸けての冷却に入る状態にまでなっていた。なので作業のキリも良い。ただ、私の力ではおそらく水から揚げることも厳しいから、明日にでもまた彼に頼むことになるだろう。



 浴室は台所の隣にある。台所で火を使う際の熱を利用するためと、水回りをまとめた間取り。

 わざわざ井戸や水路から汲み上げなくとも、水を溜めることができ、排水も水路に流せるような作りだ。台所とは取水管が共通。ご先祖の誰かに風呂への拘りがあったらしい。水汲みって重労働だからね。

 元村の他の家でも、現街の宿などでも、ここまでしっかりした浴場はおそらく無い。ご先祖は入浴習慣を広めたかったようだけれど、水汲みの労力と薪の消費の多さで広まらなかったみたい。今なら魔玉利用できるから、街に公衆浴場でも作れれば良いのに。

 火属性の魔玉を水の溜まった浴槽に入れておいたので、そろそろ良い温度になっているはず。熱くてもぬるくても、彼ならば自力で調整できるだろう。大人だし、魔導士だし。


 本当ならば私だってすぐにお風呂に入りたいところだけれど、多分、入ったら脱力して寝そうなので、やれることは全部やってからだと自分に言い聞かせて、おもむろに私は残った岩魚の骨やヒレを炙り出した。傍らで、冷蔵していたスープを温めながら。このスープはメイン料理にも使う。

 台所の下に水路が流れているので、それを利用して地下を食材の冷蔵保管に使用している。水路に流れているのは山からの雪解け水なので、夏でもたいへんに冷たく、入ると涼しいくらい。


 食堂で勤めはじめて驚いたのが、まず厨房の水回りだった。井戸から人力で汲み上げて人力で運搬。それが普通だなんて知らなかったんだよ……。そして冷蔵保存となると井戸水に浸ける程度。家の環境設備の方がおかしいのだと、その時初めて自覚した。



 風呂上りでほかほかのアルマジット氏には店の方で待ってもらって、私は料理の仕上げに入る。

 野菜や茸を鉄鍋で炒めてから取り出し、今度は岩魚の切り身を多めの油で揚げ焼きに。火が通ったら岩魚は深皿によそっておく。炒めた野菜を再び鉄鍋に戻し、温めておいたスープを少量加え、そこに葛粉の水溶きを混ぜて野菜あんにするのだ。深皿の岩魚の上に回し掛けて完成。

 ふかして潰した芋にはスープと山羊乳とバターを加えて塩で味を調えて、こちらも完成。



 店へと料理を運ぶと、アルマジット氏は部屋を暖めていてくれたようだ。


「まずは、こちらをどうぞ」


 コップの中に熱い液体を注ぐと、ぷんと辺りに酒の香りが漂う。


「それは?」

骨酒(こつざけ)です。炙った魚の骨やエラに温めた酒を注いだもの、ですね。香りと旨味を楽しめて、身体が温まります」


 まずは匂いを嗅ぎ、それから一口。

「これは初めて口にする味だ。酒精は温めることでいささかとんでいるようだが、元は相当に強いものだろう?」

「ええ。薬に使うためのお酒だったんですけど、外には出せないほど強いので、飲む時には水やお湯で割るみたいです。今回みたいに骨酒にして飲むのは、祖父や父が好んでいたので作ってみました。ただ、私は当時子供でしたから、自分では飲んだことないんですよねえ」

「……つまり、私は毒見役ということか?」

「いえ、試食係です」


 私たちの間に、微妙な沈黙が落ちる。白旗を上げたのは彼の方だ。

「まあいい。旨いしな。酒でありながらスープのようでもある。ただこれは、店のメニューとして出すのはお勧めしない」

「それはどうして?」

「普通に出回っている酒はもっと酒精が弱い。このあたりでは水が良いから、酒を水替わりに飲む習性はないようだが、だからこそ、強い酒に慣れていない。潰れてしまうか、その場で戻すか。簡単に酔いが回って暴れるか。どれも店主である君にはよろしくないだろう」

「たしかに! 食堂でも酔客の相手は大変でした」

「詳しくは聞いていないが、君はこの店をひとりでやるつもりのようだ。ならば一切の酒を出さない方が良いのでは? ただし、常連になるつもりの私には、こっそり出して貰っても歓迎するが」

「すごい参考になるご意見、ありがとうございます! なるほど、お酒の取り扱いかあ。あ、料理も冷める前にどうぞ!」


 私は改めて彼と自分の前に深皿を置く。

「多数ご協力いただきました、秋の味覚と岩魚のあんかけ仕立てです。カップに入っているのはお芋と山羊乳のスープになります」

 ただ蒸かした芋だけでも主食の代わりにはなるのだが、スープの方が好きなので。


 基本が無表情なアルマジット氏ではあるが、勧められるままに深皿に挑んだ彼の表情が綻んだのを私は見過ごさなかった。

「この、タレ? あん? 魚と野菜が絡んで、実に旨い。よい味だ。とろみがあって、いつまでも熱いのだな?」

「ふっふっふー。このあんのとろみ、お山で最後に大量駆逐してもらった葛を使っているんです」

「は?」

「ここで使ったのは以前に葛粉にしていたものですから、奴らのご先祖かも?」


 私は疑問を顔に浮かべるアルマジット氏に向かって説明する。

「あの葛の根をですね。洗った後に、叩いて叩いて粉砕して、水に晒して晒して晒しまくって作るのが葛粉。最低でもひと月はかかる工程です。なので家にあるものを使いました。これもお山の葛から作ったもので、葛粉にして密閉保管することで長期間使えるので安心してください。料理に使ったり、冬場に飲み物にすると風邪予防にもなります。身体が温まるので」


 葛は爆発的に増殖するので、近場で見つけたら駆除一択なのだけれど、捨てるところがないほど有益でもあるのが微妙なところ。生薬に使うのは主に根で、そちらは乾燥させてから使うが、何しろ沢山取れるので、手間は手間だが葛粉も作る。花も蔓の先端も美味しく食べられるから、これからどんどん出していくつもりでいる。蔓は乾燥させて綱にしたり、籠などを編む材料になる。あと、繊維を取り出して布にすることもできるんで、夏場の衣料に仕立てたりも。冬場には温かくないからね……。



 でも今はまず、あつあつの料理に舌鼓を打とう。泥臭さのまったくない岩魚の、淡泊で上品な身に絡むやや濃いめのあんが美味しい。そこにたっぷり野菜と茸の、それぞれ違ったしゃきしゃきだったり、粘りがあったりの食感の違いと、滲む旨味を噛みしめる。うん、美味しい。

 濃厚なスープもしっかりお腹に溜まって、主食の代理を立派に果たしてくれていた。ただ、明日の朝にはやっぱりパンを焼こう。


 テーブルの上は、気が付けば料理がすべて消えていた。お山では薄く簡易で具もほとんどないスープだけだったから、ちゃんと手間かけて、色々な食材も使って、満腹するまで食べられるのって、なんて贅沢なのだろう。ただ胃袋を満たすだけじゃ、やっぱり物足りないよね。



 後片付けまで手伝ってくれたアルマジット氏には、翌朝の朝食時にまた、と挨拶して。私はお山で夢にまで見た浴槽へと飛び込んだ。

 ぬるめのお湯にじっくり浸かって、湯船に散らしたハーブの香りが充満する浴室でゆったり過ごす。全身がほぐれて、自分の骨まで柔らかくなった気さえした。汗もたくさん出して、汚れも共に流す。浴槽で眠ってしまう前に上がると、自家製の化粧水と乳液で全身を整える。これから冬に向かうから乾燥はお肌の大敵だ。

 残り湯はろ過して洗濯用にと桶へと流し込む。さすがに今日は疲れが出ているから、下着やブラウスを浸けておくだけにする。


 アルマジット氏の天幕はとても快適ではあったけれど、それでも自室で眠れること以上の贅沢はないと、心から思いながら眠りについた。



マルディカのおうちには、色々な願望が込められています。ただ、どこへ向かっているのかは……。とりあえず、敷地はやたら広い。田舎だから。今回は普通に玄関から入って中庭に行きましたが、台所にも、住居棟にもそれぞれ勝手口があって、かつどちらからも中庭に出られます。今は鍵をかける習慣ができて、勝手口はほとんど閉めたきり。以前は鍵なんてかけずに家を空けてたり。


骨酒は日本酒を熱燗にして作るものですが、マルディカの住むあたりでは稲というか米がそもそもない。だから日本酒はないんですが、山羊乳を発酵させたものや葡萄酒、雑穀を発酵させた濁酒どぶろくは作られています。あと、やはり国全体で麦が主食に用いられるので、エールの醸造は各地でされていますし、一番飲まれているのもエール。今回、岩魚の骨酒にマルディカは濁酒を更に自家蒸留したものを使っています。下戸が何書いてるんだか……。

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