アナベラとオルゴール
なろうラジオ大賞参加作品第二弾。
私がこの家に来て、いったいどれだけの時間が過ぎただろう。
ここは、王都から少々離れた場所に建ってるお屋敷。
私は、この屋敷に住んでるお嬢様の遊び相手として、この屋敷にやってきた。
お嬢様は、私の事を最初、ずっと無視し続けた。
生まれどころか種族も違うから当たり前だったかもしれない。
しかし私を買った、旦那様……お嬢様のお父様は、どうやら母親……旦那様の奥様を失って以来ふさぎ込んでしまったお嬢様を明るくできる存在を必要としてて、それでお試しで私を買ったのだ。
なのでこのままでは捨てられかねない。
そして私は、これからどうすべきか悩んだ……けどいつからか、お嬢様は私の事を気に入ってくださった。
旦那様の美的センスをお嬢様は継いでたのか。
私に慣れるとお嬢様は、私を普通にお友達として扱ってくださった。
「アナベラ、このオルゴールはね、お母様が好きだった音楽を奏でるのよ」
そして、さらに時間が経つとお嬢様は。
母親が亡くなった日に、私にその音楽を聴かせてくれるようになった。
私に音楽の良し悪しは分からない。
だって私は、そもそもお嬢様と同じ種族ではないから。
だけどその音楽は、不快なものではなくて。
そして音楽が流れる中で時々、お嬢様のすすり泣きの声が混じっても……ずっと聴いていられた。
とにかく私は、お嬢様に気に入られ。
それからずっと……お嬢様が大きくなって、お嬢様が大切だと思った令息と結婚して、二人の間に子供が生まれて、旦那様が天寿を全うして、そしてお嬢様と令息が亡くなった旦那様と同じ年齢になっても、一緒にいた。
けれど、そんな日々はいきなり終わりを迎えた。
お嬢様と令息……いやもうそんな歳じゃない。
奥様と、旦那様は、突然の事故によりこの世を去った。
そしてこの世には、そんな二人の子供達が残され――。
「あー、やっと死んだよ」
「今どき貴族とか古いのに伝統とかを俺達に押しつけやがって」
「やっといろいろ自由にできるね!」
――……子、供た……ち…………?
確かに、私は人間じゃない。
だから人間の感性は分からないけど――。
『オマエ、タチハ………キライ』
次の瞬間。
私は感情に任せて――。
あれから、どれくらい時間が過ぎたんだろう。
私は、奥様のお母様が好きな音楽を、オルゴールで聴きながら思う。
私は人形だから。
ビスク・ドールなのだから。
音楽の良し悪しは今も分からない。
でも奥様と共有したものだから……私は屋敷が老朽化しても聴き続ける。
アナベラはアナベル人形の並行同位体だと思っていただければ。




