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未成熟なセカイ   作者: 孤独堂
第一部 未成熟な想い~小学生編
110/139

第107話 美紗子が泣いた日その㊳ 終幕その①

平成最後の更新は、仕事から帰って慌てて書いたので短いです。

すいません。

「美紗ちゃん…」

 

 まだ床の上に丸まって肩を震わせている美紗子の方を見ながら、紙夜里はそう言うと壁に付けていた手を離しては五年四組の教室へと足を踏み入れた。


(まずいっ!)


 その様子に咄嗟にそう思いながらもみっちゃんは上手く誤魔化す言葉も思い浮かばず、ただ呆然とその足取りを眺める。

 そしてその足元にはまだ口に手を当てて、大粒の涙を流している根本が横たわっているのだが、そんな事はもうこの時のみっちゃんにとってはどうでも良い事だった。

 しかしその事をちっとも良い事だとは思っていない人物も、その時みっちゃんの側にいたのだ。


「ちょっと、あなたたち他所のクラスでしょ! まだ授業中よ。今すぐ自分の教室に戻りなさい!」


 副委員長の水口である。

 その言葉に咄嗟にそちらをギロリと睨むみっちゃん。

 しかし水口も負けてはおらず、それに対して同じ様に強い眼光で睨み返した。


(こいつ人に根本を倒して貰っておいて、その後はさっさと追い返し、何事もなかったとでも言うつもりか? ん? しかし待てよ。これを理由に紙夜里を連れ帰れば。倉橋さんと話しさえしなければ、まだ紙夜里はバレた事には気付かないでいられるかも知れない。そうすれば今は考えが浮かばなくても、後でゆっくり考えれば、良いアイデアも浮かぶかも知れないし…)


「チッ」


 そんな事を思うと、だからみっちゃんはワザと水口に舌打ちをして見せて、それから背を向ける様に紙夜里の方を再度振り返った。

 それから更に美紗子の方へとゆっくりと近づいて行く紙夜里の側へと近付くと、その肩に手を添えて、小声で話しかける。


「倉橋さんにはまた後で会えるさ。だから今はもう帰ろう」


 しかし紙夜里は歩を止める事はなかった。

 それどころかその表情は美紗子の状態から既に事は起こってしまったという事を知っている様で、血の気を失った青白い顔は、目も虚ろで、ただ一点美紗子の方だけを向いていた。

 そんな感じだから、ゆらゆらと美紗子へ向かって歩く紙夜里は、スルッとその肩に置かれたみっちゃんの手からすり抜けると、ポツリと囁く様な声で、「美紗ちゃんを守るって約束したのに」と、呟いては歩き続けた。

 当然そんな事を言われたのではみっちゃんは言葉もない。

 しょうがないので暫し事の成り行きを見守るみっちゃん。

 更にそれをジリジリとした目で見つめている水口。


 程なく、紙夜里は美紗子が膝を付いて丸まっている場所へと着いた。

 腰を屈め、美紗子の耳元で囁く様にしてその名を呼ぶ。


「美紗ちゃん」


 しかし美紗子は両腕で顔を隠す様にしてうつ伏した状態から何一つ変わる事はなく、声もあげなかった。

 だから紙夜里は再度囁いた。


「美紗ちゃん」


 その時だ、顔をうつ伏せたまま、その左手だけが突然宙を切ったのは。


 バシッ!


 美紗子の強烈な平手打ちが紙夜里の頬に炸裂する。


「紙夜里!」


 中腰だった紙夜里が、思わずその勢いで転びそうになるのを見ると、すぐにみっちゃんがその名を叫んで近付いて行く。

 そしてその瞬間、水口もその場のタイミングを読んでいたのか、五十嵐の名を叫んだ。


「五十嵐君!」


 呼ばれた五十嵐も咄嗟にその意味するところを理解する。

 だから直ぐに動き出すと、美紗子の側にいる紙夜里とみっちゃんの手を掴んだ。

 そして念を押す様な強い口調で言ったのだった。


「もういいだろう。自分のクラスに帰ってくれないかな」


 と。




            つづく

 

いつも読んで下さる皆様、有難うございます。

令和になっても読んで下さいね~!

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