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 結果的に俺はこの賭けに勝った。見事にゲベル銃が50丁入った箱の引き上げに成功したのだ。ゲベル銃。ゲーム中盤に出てくる武器だ。これが俺の小隊に配備されれば、俺の生き残る可能性は高くなる。

 引き上げたゲベル銃はクロアの武器ショップでメンテナンスを受ける。なにしろ、海の底に沈んでいた代物だ。いざ、使うときになって故障しましたでは意味がない。

 だが、俺の心配も杞憂に終わった。箱は厳重に密封されており、保管維持の魔法がかけられていた。これは時を止める系の魔法がかかっており、海水による侵食が止められていたのだ。よって、箱の中身は新品同様であった。


「C、やったじゃない!」

 クロアが微笑んで俺の手を取った。


「これでC。戦場で生き残れるね。必ず帰ってきてね」

 さっきまで鬼だと思ったクロアが可愛く見える。俺に伝わるクロアの手の感覚もやわらかで思わずドキドキしてしまう。まだ15のガキだが、あと3、4年もすれば十分楽しみな素材である。まあ、胸は極力成長して欲しいものだが。

 きょとんとして首をかしげるクロアに俺は間の空いた返事をする。

「お、おう!」


 この武器職人見習い娘クローディア。まさかと思うが俺に惚れてるんじゃないの? 

(まさかね)

(そんなわけがない…って!)


 ハートゲージを見ると何と……。赤じゃん!

(うそ!)

 まあ、かつてハーレム王と呼ばれ、あまたの美女をはべらせた俺であるが、こんな小娘でも惚れられるのは悪くない。ちょっとおかしなところもあるが、よく見ればクロアは美少女なのである。

 

 しかし、俺のどこに惚れたのか? 見事に彼女の潜水艦の性能を証明したからか?


「主様でゲロ」

 ゲロ子が俺の服をツンツンした。


「あれを見るでゲロ。あのハートおかしくないかでゲロ」


 クロアのハートゲージ……確かに赤だ。だが、よく見ると小さく文字が見える。

(実験動物)

と書いてある。

(おいおい、まさか)

「どうやら、小娘、主様を男じゃなくて自分の実験動物としての魅力に惚れてるでゲロな」


「ぐええええっ。実験動物ってなんだよ!」

「人間扱いされてないでゲロな」

「モルモットってことかよ」

「そういうことでゲロ」

「実験ならゲロ子でやってくれ!」

「止めるでゲロ、解剖されるでゲロ」

「はあ……もうやめよう。何だか虚しくなってきた」


ゲロ子が俺の肩をペタペタと右手で叩く。

「実験材料でもいいでゲロ。興味持ってもらったことは今までになかったでゲロ」

「うるへー」 

 ゲロ子と俺の会話はクロアには聞こえない。きょとんとしてあの意地悪そうな目を俺に向けた。


「とにかく、生きて帰って来てね。それとお金を稼ぐこと。あたし、まだ銃の開発諦めてないからね。新銃の名前も決めたから」

「一応聞くがなんだ?」

「スーパークローディア銃。通称スパクロア銃」

「なるほどね。そういうことか」

スパクロア銃。ゲーム中盤でケインの戦いを支える武器である。


「それと……C」

 クロアが前掛けのポケットからゴロゴロっと机の上に置いた。弾丸である。赤いのや青い色である。

「これは……」

「魔法弾よ」

「赤いのは(爆裂弾)、青いのは(氷結弾)か?」

 魔法弾。国の高級武器店に置いてある高価な弾丸である。その弾1発に魔法が込められており、爆裂弾なら大砲一発と同じ破壊力がある。かなりチートな武器であるが、かなり高価で初期には使用できないのだ。


「いや、本物は高いからあたしが作った魔法弾」

「お前が作った?」

「そう。クロア特注の魔法弾。赤は(Sナパーム)、青は(ブリザード・フラッシュ)」

「なんじゃ、それ?」

 このSODでは聞いたことのない魔法だ。魔法弾は魔力が込められたもので、発射することで低レベル魔法を解放することができる。大抵は爆発系の(ファイア・ボム)(コールドボム)と言ったものや、魔法防御壁を破るアンチ系の(クラッシュ)や(アンチプロテクト)、散弾系の(マジックミサイル)、(サンダーレイン)といったものがある。


「おい、ゲロ子。Sナパームって聞いたことあるか?」

「知らないでゲロ。クロアのオリジナルでゲロ」

 

 心配そうな俺の顔を見てクロアはポンポンと俺の肩を叩く。ちょっとさみしそうな顔だ。そして小さな声でポツリと言った。


「死なないでね……」

「え?」

 クロアの顔が徐々に真っ赤になる。自分でも予想していなかった言葉が出てしまって我に返った感じだ。


「ご、誤解しないで。別にあんたなんて、好きじゃないんだからね。知り合いが戦死とか縁起でもないから言ってるだけだからね」


(何だ? このツンデレ展開は?)

(ツンデレじゃないでゲロ。実験動物でゲロ)

 

 驚いて唖然とする俺にクロアはさらに小さな箱を渡した。封印がしてある。


「もし、絶体絶命になったら開けること。我が家に伝わる秘伝のアイテムらしいから」

 そう言うとクロアは大きな黒い瞳の片方をパチっと閉じた。

 何だか不思議な子だ。俺がケインでプレーしていた時にお目にかかったことがないキャラだ。超レアなキャラなのだ。そんな子と関われることが何だかうれしくなった。


 俺は心に誓う。生きて帰るんだ。クロアはまだ子供だけど、いずれ俺が作るハーレムの住人にしてみせよう。


(ゲロ……。主様、ゲロ子は心配でゲロよ。そいつの発明を信用するでゲロか?)


 同時にゲロ子が思ったことを俺は知らない。


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