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ギシギシと軋む潜水艇。このままでは崩壊する。こんな深海で崩壊してみろ。俺は間違いなく土左衛門だ。だが、驚いたことにこの潜水艇、なんと60m先のそこまで無事にたどり着いた。ゴトン……と音がして海底に着いた音がしたからだ。


「あ~あ~聞こえる?C」

「ああ、なんとか聞こえる」

「ロープが60mに達したから、そこが底だよ」

「そうみたいだが、何も見えんぞ」

「両サイドのランプを灯して、窓を開けてよ」


 俺はクロアに言われた通りに足元の2つのランプに火をつける。壁の取っ手をスライドさせるとガラス壁になってランプの明かりが海底にともされる。簡易的なヘッドライトだ。

 但し、光量が少ないので僅かに近くが見えるだけだ。

 だが、俺は幸運だった。沈んでいる商船が壊れ積荷が散乱しており、一抱えある木箱が近くに見えたからだ。かすかに「ゲベル」と書いてある。


「あった! あったぞ、クロア」

「おお。神はCを見捨てていなかったな」

「で、どうやってあれを引き上げるんだ?」

「目の前に赤いボタンがあるだろう?」


 そう言われて俺は幾つかあるボタンに目をやった。キャッチボタンと書いてある。


「それを押すと網が発射される。目標に向かって飛び出して広がるんだ。発射管はCの見ている方についているから、多少、方向がずれてもキャッチできるよ」

「ほほう。なかなかやるな」


 俺はガラス越しに箱を目視する。十分捕獲エリアにあるが、それでも念には念を入れて微調整をする。正面のハンドルを回すと外部に取り付けてある魚のヒレみたいなものが小刻みに動き、船体を移動させることができるのだ。


「主様、バッチリでゲロ」

 ゲロ子に言われて俺は確信してボタンを押す。

 バシュッと音がして網が広がった。見事にゲベル銃の箱を捉える。

「クロア、ゲットしたぜ」

「よし、今から引き上げるからね。まずは青いボタンを1つ押して。オモリを段階的に切り離すんだ。いっぺんに捨てると急浮上するから気をつけてね」


「主様。急浮上すると船体が持たないし、主殿の体にも影響するでゲロ」

 

 確かに圧力で耳がキーンとする。気は焦るがゆっくり上がるに越したことはないだろう。俺はボタンを1つ押してオモリを切り離した。フアリと船体が浮き上がる。だが、ゲベル銃の箱が重いので簡単には浮上しない。グルグリ……と音がしてクロアも引き上げてくれているみたいだが、なかなか上がれない。それよりもギシギシと船体がきしみ始める。


「C。第2ボタンでオモリを切り離して」


 俺は期待を込めて二つ目のボタンを押す。浮上のスピードが上がり始める。だが、船体からまた水漏れがし始めていた。樽の板が割れ始め水が急速に入り込む。

「だあ~。やばいぞ!クロア。充填材ももうないし」

「あと少しだから耐えてよ」

「あと、どれくらいだよ」

「40mはあるね。時間にして30分」

「だあ~無理だ」

 

 裂けてできた穴を手で抑える俺。そんなことで防げるかよ。さらにゲロ子が致命的なことを俺に告げる。


「主様。大きな魚が向かってくるでゲロ」

「な、なんだって!」

 

 俺はガラス越しに外を見ると大きな魚などではない。明らかにサメだ。しかも人を襲うホオジロザメ。そいつが潜水艇にゴツンとぶつかる。

衝撃が伝わる。かろうじて船体は耐えたが、もう一発喰らえば崩壊するかもしれない。


「クロア、サメだ!サメが襲ってくる」

「あちゃ~」

「あちゃ~じゃないだろ!」

「こういうこともあろうかと!」

「なんだ?」

「目の前に赤い扉があるだろ」

 

 俺はデンジャーと書いてある扉を見る。スライド式になっているそれを開けると、トラ柄のボタンが出てきた。


「サメに向かってそれを押すんだ。チャンスは3回だけだよ」

「3回だけって?」

「サメに向かって攻撃ができるんだ」

「くう~っ」

 

 今にも向かってきそうなサメに向かって俺はボタンを押す。外にセットしてある発射管からモリが打ち出される。それはサメの鼻先をかすめた。突然の攻撃にサメは方向転換をする。体当たりはまぬがれた。だが、まだ諦めていないようだ。


「主様。土左衛門になる前にサメの餌になるでゲロ」

「ゲロ子、サメまでの距離とタイミングを計算しろ」

「そうでゲロな」

 

 俺はこういう時にゲロ子が役立つことを思い出した。攻撃のタイミングを教えてくれるのもナビキャラの役割だ。


「主様。ゲロ子の計算によるとあと五秒であのサメ方向転換をするでゲロ。

その後、3秒でこっちに向かうでゲロ。有効射程に距離に入るのはその2秒後でゲロ」

「タイミングを教えろ!」

「五秒前、5、4、3、2、1……今でゲロ!」


 俺はボタンを押す。だが、同時に急に浮上スピードが上がった。クロアの奴、引き上げスピードを上げやがったのだ。発射されたモリがサメの体をかすめる。


「うあああっ……外した」

「まだでゲロ。主様。オモリを全て捨てて急速浮上でゲロ」

「そんなことしたら船体がもたない」

「ここでサメの餌になるでゲロか?」

「畜生!」


 俺はボタンを押す。オモリを全て捨て去った潜水艇は急速浮上し始める。水漏れが激しくなる。サメはまだ諦めていない。潜水艇の周りをぐるぐると旋回している。攻撃するタイミングを図っているようだ。


 ザブンっと船体が海面に浮き上がった。

(た、助かった~)

 と俺は思ったが、そうは甘くはない。サメの奴。海面に背びれを立てて攻撃態勢に入る。口を大きく開けていっき食いするつもりだ。


「食われてなるものか~」


いくら食われても復活できるとはいえ、そんな死に方はゴメンである。いや、このゲームでサメに食われる死因なんてなかったはずだが……。


「主様、今でゲロ!」

 ゲロ子が叫ぶと同時に俺はトラ柄のボタンを押す。モリが発射されてホオジロザメの口に飛び込んだ。


 やったでゲロ!

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