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登場人物紹介

クローディア(クロア)15歳の武器職人。クロノスの娘だそうだが、俺がゲームをやっていた時にこんなキャラはいなかった。武器作りに夢中な美少女。俺をいじめることを楽しんでいるような……。

 俺たちはバロア港沖に来ている。クロアは船から足場となる大きな筏を海に下ろし、そこに潜水艦クロア号をセットしていた。筏は真ん中がくり抜かれて、そこからこの潜水艦で海に入っていくのだ。

「こんなピンポイントでいいのか? 本当にこの下に船が沈んでるんだろうな?」

「あたしの計算じゃ、ドンピシャだよ。ただ、深いから誰も取りに行けないだけ」

「深いって?どれだけだよ!」

「およそ60mぐらい」

「60m……」


 深い。訓練された潜水士しか潜れない深さだ。それなのに俺はゲームの中とはいえ、こんな樽でできた見るからに無理っぽそう乗り物でそこに行くのだ。俺はその無理っぽそうな潜水艦に乗り込んでいる。大きさは2m×3。形は円柱状である。人間一人が操縦できるスペースがある。


「クロア」

「なんだい? C」

「この潜水艦、実験ではちゃんと60m潜れるんだろうな」

「あ、それね。それは今日分かるよ」

「へ?」


 俺はクロア号の上部扉から顔を出してクロアの答えに問い返す。クロアの奴、にっこりと俺に微笑む。

(畜生め! 可愛いじゃないか)


「それどういうことだよ!」

「心配しないでC。45mまでは潜れる。それは証明済み。それより強化したから、55mはいけるはず」

「ああ、そういうことか。納得……」

「じゃねえええええええっ」


「ちょ、ちょっとまて! ちょっとまてよ。クロア」

55mはいけるはずって!

「何? C」

「船は60m地点に沈んでるんだろ」

「ウイ」

「55mじゃ、行けないだろ!」

「ああ。そういう計算になるね」

「なるね。じゃねええええええええっ!」


「細かいこと気にするなあ……。傭兵だったら、アバウトにいこうぜ!」

「アバウトって、武器職人が言う言葉じゃないだろう!」

「まあまあ、あたしを信用して」

「信用できね~っ! どこに信用する要素があるんだ」


 この小娘の実力は全く未知数だ。オヤジは武器職人としては一流だが、その娘が一流とは限らない。いや、それよりもこの潜水艦は武器じゃない。


「ゲベル銃がなければ、どうせ死ぬんだろ。じゃあ、イチかバチかだろ」

「いやだああ……」

「いってらっしゃい!」


 クロアが容赦なくボタンを押すと、潜水艦は容赦なく海面に飛び込んだ。俺は慌てて上の扉を閉める。こうなったら、覚悟するしかないだろう。戦場で死ぬかここで土左衛門になるかだ。


 樽の潜水艦は一気に海に潜っていく。オモリが浮力以上あるのだろう。それでも一気に行かずゆっくり沈んでいく。これは急に圧力がかかることを避ける計算なのだろうか。

 上部に付けられた管からは空気が流れ込んでくる。代わりにもう一本から空気が排出される。海面の筏から手動ポンプで空気が送られてくるようだ。これを見るとクロアの奴もまったく努力していないわけでもなかった。


「主様、主様が何かするとき、スムーズに事が進むはずがないでゲロ」

 ゲロ子の奴が出てきた。俺に言わせると、こいつが出てくるからろくな事にならないような気がするのだが。そしてそのお約束は、ここでもお約束であった。


ピキッ……

 何か音がした。嫌な音だ。


「主様、壁が軋んでいるでゲロ」

ゲロ子がそう言った。やっぱり、こいつが出てくると大抵、良くないことが起こる。それは俺の目の前で起こった。


 樽の壁の隙間から水がピューっと漏れ始めたのだ。

「おい、クロア、水漏れだぞ! やっぱり圧力に耐えられなかったんだ!」


 俺は叫んだ。外への連絡管を伝ってクロアに告げる。

「ああ、たぶん、実験でも予想されていたことだ」

「はあ?」

「大丈夫。ツールボックスに充填材があるだろう」


 俺は慌てて艦内の……と言っても大人ひとりがやっと座れる狭さだ。足元にある箱はすぐ分かった。それを開くと中にいろいろな道具があるが、その中に「水漏れ防止剤=ピタットトマル」と書かれたチューブ入りの充填材を見つける。

「ピタットトマルってセンスねえ」

「この際、センスなんて関係ないでゲロ。要はこれが役に立つかどうかでゲロ」

「そうだな」

 俺はそれをぐっと握り、漏れ始めた壁の隙間に注入する。ニュルりとした充填材は、直ぐに固まる。これはこれですごい発明だ。クロアの奴も役に立つとちょっとだけ感心したが、今度は底がきしんで水が漏れ出した。俺は慌てて充填材を床に注入する。


「主様、まだ38mなのにこれでは厳しいでゲロ」

 ゲロ子の奴が俺の不安をあおる。

「おい、クロア。水漏れがひどすぎる。このままでは崩壊するぞ」

 俺は慌てて連絡管に向かって叫ぶ。


「じゃあ、もっと早く沈めるよ」

「は?」


 クロアの奴がとんでもないことを返してきた。しばらくすると、潜水艦につながれたロープを伝ってオモリが追加される。天井にゴトンゴトンとそれが積まれると、さらに潜水が加速する。


「おい、この状態で急速潜行するのか~」

「ゲロゲロ……。クロア、容赦がないでゲロ~」

海の底に到着でゲロ……。

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