奇跡を起こす方法
少女は語り始めた。
私には、病気の母がいます。母の病気はガンです。
最初は病気と戦っていました。抗癌剤をやったり、放射線治療をしたり。
民間療法も試してみました。生きるためにあらゆることをしました。
しかし、ガンは消えませんでした。いや、消えるところか、だんだん大きくなっていきました。
そして今日、父と母の担当の医師が話をしました。
医師は父に告げました。母の命は1ヶ月持つかどうか…。
父は私にそのことを話しました。でも、母には内緒です。本人が知らない方がいいだろうから。
母は今日もガンと戦っていました。でも、奇跡でも起きない限り、ガンに勝つことはもう無理でしょう。
私は、どうすればいいのだろう。母とどう接していいかもわからない。変に接して病気のことが母に感づかれそうで怖い。
そして、母が居ない世の中も怖い。いつかは私より先に居なくなってしまう。それはわかっていました。でも、それがこんなに早くに…。
語り終えると、少女の目から涙がこぼれ出た。
少女の話を静かに聞いていたマスター。
そしてマスターは静かに言った。
「奇跡を起こせばいいのです。」
奇跡を起こす?そんな簡単に起きるものなのか?少女は再び悩む。
「どうしたら、奇跡は起こせるの?こんなに手を尽くしてもダメなのに、奇跡って起きるの?」
目に涙を貯めたまま、少女は言った。
「ひとつだけ、方法があります。」
方法?それは何?
「ただ、それはとても難しいのです。」
マスターは困ったような顔をしていった。
どんな難しいものでも、奇跡が起きて母が助かるのなら、何でもやる。
少女は強い意志をもっていた。
「でも、あなたは強い意志があります。だから、出来るかもしれません。教えましょう。」
そんなことまで分かってしまうマスターが少女は不思議だった。
「私のことを不思議がっている場合ではないですよ。」
やっぱり、不思議だ。
マスターから教わった奇跡を起こす方法は。
毎日夕方5時ぴったりに、空から虹色に光る雪のかけらが降ってくる。
それは、誰にでも見えるものではなく、本当に必要としている人にだけ見えるという。
その雪のかけらを拾ってマスターに届ければいい。
「あなたは、簡単そうだと思っているようですが、とても難しいです。まず、見えるまでに相当時間がかかるでしょう。ここであきらめる人がほとんどです。出来ますか?」
少女はうなずいた。
「では、私は、ここで待っています。何かあったら、相談にのりますよ。」
マスターは少女に笑いかけた。
少女は、母親を助けられるかもしれない。その喜びで心の中はいっぱいだった。




