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第35話 2人で歩く

 2人で並んで歩く。

 道行く男たちの目は全て綾芽に注がれていて、その後俺を見て諦めたような顔をする。彼氏だとか思われてるんだとしたら、優越感、すごいよな。


 ……ま、俺はただの男友達で、付き合う可能性なんて微塵もないモブなわけですが。


「楽しいですね」


 ふと、隣にいた綾芽が言う。


「本当に私、男の人への免疫がないんです。だから夢みたい」


 まぁ、そうだったよな。ゲーム内でも主人公以外の男とはまともに話せてなかったし。可愛かった分、今までいろんな好意にさらされてきただろうから、その恐怖心みたいなものもあるのかも。


「そうなんだ……男の人って確かに怖いかもね。俺は何もしないから安心してよ」

「そう、ですか。それは安心ですね!」


 綾芽がなんだか取り繕ったような笑顔を浮かべる。ん? 俺なんか今まずいこと言ったか?


「えっと、どこに行きましょうか。ノープランで来てしまったので……昨日、色々調べたんです。男の人が遊びに行きたいところとか。だけどよく分からなくて。錦小路さんはどこに行きたいですか?」

「俺? 俺は別にどこでもいいよ。花野井さんは行きたいところないの? 例えば男友達ができたら行ってみたかった場所とか」

「行ってみたかった場所……あっ、ありました! ゲームセンターですね。私、一緒にゲームしてみたくて」

「じゃあ、そこに行こうか。あとはある?」

「あと……映画も一緒に見てみたかったし、その帰りにショッピングとかもしてみたかったです。あとは……なんでしょう。水族館に行ったり、あとはバッティングセンターとかもなんだかんだ夢なんですよね」


 うっとりとした様子で綾芽は言う。確かに定番と言えば定番の場所ばっかりだ。

 うーん、でも最後の方とか特に、なんかデート感が否めなくないか?


「とりあえず、まずゲームセンター行く? さすがにこの時間から水族館とかにはいけないし、行くまでちょっと時間かかるもんなぁ」

「そうですね! ふふ、すごく楽しみ……本当に、夢だったんです」


 目の前で手を合わせ、嬉しそうに頬を染める綾芽は本当に可愛い。初恋の人だったから、なおさら。

 

「……そういえばこの先に行けば、私が錦小路さんに助けてもらった場所ですね」


 綾芽が指さす方向には、例のラブホ街だ。

 そういえばストーカーから助けたなんて、そんなこともあった。今から二カ月くらい前か。そう考えると、俺がこの世界に来てからそれくらいは経ったってことだ。もしくは、それくらいしか経っていない。物語が終わると考えてもいい期間は高校1年が終わるまで。それまでは気が抜けない。


「そうだな……」


 綾芽は学校の先生にもこんなところに人を案内するなと注意を受けていたし、きっとトラウマにもなってるはずだから、俺からは何も言えることはない。

 そう思ってふとラブホ街に目を向けると、見覚えのあるボブが視界の端を通った。あれは……


「錦小路さん、どうかしましたか?」

「……いや、気のせいだと思う」


 あの子やたら神奈に似てる気がしたけど……さすがに気のせいか。

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