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【完結】窓際編集とバカにされた俺が、双子JKと同居することになった  作者: 茨木野
第6章

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76話 あかりと引き続きデート



 俺はあかりと一緒に映画館にデートに来た。

 俺たちが見ているのは、【デジタルマスターズ】。通称、デジマス。


 そのアニメ映画版の【天空無限闘技場編】だ。


『レイ! 死なないでよ! レイぃい!』


 主役のリョウが、相棒であるレイを失うシーン。


 主役のリョウを演じる駒ヶ根(こまがね) 由梨恵ゆりえの演技が、視聴者を泣かせに来る。


 現に映画館の中では、すすり泣く声があちこちで聞こえてきた。


 かくいう俺も、レイの死亡シーンは、原作を知っていても泣ける。


「…………」


 あかりもまた涙を流していた。


 俺はハンカチを取り出して、彼女に渡す。


 無言で受け取ると、目元を拭う。


 ほどなくしてリョウはヒロインのチョビを連れて、闘技場を後にする。


 そして……映画版は終了。


「はぁ~~~~~~…………良い映画だったねぇ……」


 あかりが目元を赤くしながら、俺に言う。


 演技ではなく、本当に、心から映画を見て感動していたのだろう。


「そうだな」

「アニメ2期がすっごい楽しみ!」


 俺たちは席を立ってシアターを出る。


 ちょうど5番シアターも上映を終わったらしい。


 人の波の中で、ターミネーターを見つけた。


「ターニャ、ディナーまでまだ少し時間ありやす。どこへ行きやす?」


「ドコデモ。イイ」


「どこでもって……おまえが行きたい場所へあっしは行きたいんですが……」


「アナタ。一緒。ドコデモ。楽シイ」


「……そうでさぁ。じゃああっちに赤ちゃん用品がありやすから、ちょっとそれを見に行きやしょう」


「気が早い。デモ、見たい」


「場所はちゃんと調べてありやすから。はぐれないようについてきてくだせぇ」


「ええ♡」


 二人は仲睦まじく手をつなぐと、歩き出す。


「赤ちゃん、男の子ですかね、女の子ですかね。どちらがいいですかい?」


「授かり物。ダカラ。ワカラナイ。デモ。アナタに似て。素敵な子。間違えない」


「そ、そうですかいっ? いやぁ、ははっ! 照れやすなぁ~」


「親馬鹿。ナリソウ。ヤレヤレ」


「そりゃあターニャとの子ですかねぇ! 絶対可愛いな決まってまさぁ!」


「……恥ズカシイ。照レル。言ワナイ」


 ばちっ、と途中で目が合う。


 気まずそうに顔をそらすと、ぺこりと会釈をした。


 俺たちは軽く手を振って、その場を後にする。


「デートの邪魔しちゃ悪いもんね~」

「そうだな」


 俺たちは映画館を後にして、外に出る。


「もう帰る……わけないな」

「とーぜんっ! せっかくおかりんと二人きりでのデートなんだもん! めいいっぱい楽しむぞー!」


 あかりが明るい笑顔を向けてくる。


 この子は本当に笑顔を絶やさないな。

 ……まあ、たまに小悪魔になるが。


「普段は天使?」

「自分で言うなよ」


 つん、と俺はあかりの額をつつく。

 彼女はふにゃりと笑って、俺の腕に抱きついた。


 ぐんより……と胸が俺の腕を挟んで、エロい形にひしゃげる。


「いこっか♡」

「ああ……そうだな」


 俺はあかりを腕に巻き付けたまま映画館を後にして、ショッピングモール内を歩く。


「おかりんおかりんっ」


 ニコニコとご機嫌なあかりとともに歩く。


「あたし達ちゃんとカップルに見えてるかなぁ~?」


「そりゃあまあ、手をつないで歩いてるわけだし」


「む~……それじゃあ足りないな。足りない! もっとイチャイチャを!」


 ぎゅっ、とあかりが強く腕に抱きつく。


「これ以上のイチャイチャがあるというのか?」


「そうだねー……たとえば……あ! おかりんあれ見て!」


「タピオカ……?」


 結構タピオカの列に人が並んでいた。


「あれ! のもっ!」


 俺たちは列に並んでしばし。


 タピオカミルクティーを購入した。


「ん~♡ あまくておいし~♡」


 店の前で、あかりがズゾゾ……とドリンクをすする。


 女性客が多いイメージだ。

 みんな甘い物を求めているのだろうか。


「おっかりん♡」


 ずいっ、とストローを向けてくる。


「まさか飲めと?」

「それ以外に何が♡」


 タピオカの列に並ぶ人たちに、バッチリ見られてるんだが……。


「おかりーん♡ はいどうぞー!」

「むぐっ!」


 あかりが俺にストローを無理矢理食わさせてくる。


 じゅぞ……と吸うと、あまいミルクティーが口の中にいっぱいに広がってくる。


「ぷは……」


「どう? あかりちゃん味のミルクティーは♡」


「……甘いな。どうにも」


 胸やけするレベルの甘さだ。


「じゃあおかりんミルクティーいただきまーす」


「いやちょっとそれは……」


「おそいでーす♡」


 ちゅうちゅう、とあかりが俺の飲みかけのミルクティーを吸う。


 平然と、何の躊躇もなく。


 まったく……。


「なんですかにゃ?」

「まあいいけどさ」


「にひ~♡ おかりんも段々と、あかりちゃんといちゃつくのに耐性がついてきましたな~」


 まあさすがにあかりと再会してしばらく立つし、なれてはしたな。



「うん、ミルクティーの味、覚えた! 今度お家で作ってあげるからね~」


「すごいな。タピオカミルクティーすらも再現できるのか」


「もちっ! 旦那が喜んでくれるために、色んなもの作っちゃうんだからね~♡」


「できた嫁さんだこと」


 俺たちはまた歩き出す。


 にまー♡ とあかりがいたずらっ子のように笑う。


「ところでおかりんさんや」


「どうした?」


「さっき、嫁さんーって、言ったよね♡」


 ……。

 …………しまった。


「ついな」

「そっかー、つい口を滑らせる程度には、あかりんのこと奥さんって思っててくれてるんだ~♡ えへへっ♡」


 あかりが後ろを振り向いて、前屈みになって笑う。


「うれし♡」

「おまえは何でもうれしそうだな」


「もちろん! おかりんと一緒なら何してたって楽しいし、うれしいもん!」


「そういえば贄川にえかわ夫婦も同じこと言ってたな」


「夫婦のたどり着くとこはそこなんじゃない? 何もしてなくても最強」


 確かにそうかもしれない……。


 映画館を出た後、ぶらついてるだけだが、別に苦痛に感じることはない。


「おかりん! 赤ちゃん用具店だって! 二人の未来のために買っておこう!」


「はいはい、あっちで一緒にゲーセンでもいこうな」


「それもありですなぁ~♡」


 俺たちはモール内のゲーセンへと移動。


 クレーンゲームが目にとまる。


「あ、デジマスのクレーンゲームだ! ほんと、どこ行ってもデジマス商品あるね~」


「人気作だからな、当然と言えば当然だ」


 俺も作品に携われている、出版社の一員として、とても誇らしい限りだ。


「あたしこれやる~! ちょびのマスコット取るんだー!」


 あかりが100円玉を入れて、クレーンを操作する。


 中央らへんに転がっている、デフォルメされたチョビのぬいぐるみを取ろうとして……。


「あー! しっぱーい……ちぇー……もっかい!」


 あかりが500円くらいかけてクレーンを操作したが、一回もとれなかった。


「うう……むずすぎるよ~。おかりんやって!」


「俺か? まあいいけど」


 しかしゲーセンなんてとんときたことがないし、クレーンゲームなんてやったことないぞ……。


 まあでも、物は試しだ。


「もしかしてゲームの才能とかあるかも!」


 だが……。


 すかっ……。


「「ですよねー……」」


 まあそうそう取れるものじゃない。


「ま、それはそれで」

「だな」


 俺たちはゲーセンを後にする。


「ちょっとクレーンゆるゆるすぎない?」


「それは俺も思った。取らせる気ないな」


「あーゆーのって絶対店側が商品取りにくくしてる気がする~。むかつくぅ~」


「まあ相手も商売だからな、仕方ない」


 俺が苦笑すると、あかりもまた笑う。


「今度はべんきょーして、取れるようにしてくるからっ!」


「おまえはほんとに勉強熱心だな」


「もちっ! 頭使う勉強は苦手だけど、遊びとか、料理とか! そういうのは得意だからっ!」


 クレーンゲームをした後……。


 またウィンドウショッピング。

 

 あかりは興味がある物が多いらしく、服屋や、アクセサリー屋など、おしゃれな店を見て回る。


 だがどれも見て満足して、店を後にする。


「おまえほんと、倹約家だな」


 あかりはバイトしている。

 だがそれに一切手をつけず、将来のための資金にしているという。


「うん。結婚式はお金かかるみたいだし~」


「今から資金貯めてるのかよ」


「もちっ! 素敵なウェディングドレスきたいし! お色直しも、5回はしたいなぁ!」


 あかりはいつも夢いっぱいだな。


 本当に楽しそうに、将来のことを話す。


 ……裏を返すと。


 この子はあまり過去語りをしない。


 小学校の頃から、再会するまでの空白の数年間。


 彼女に何かがあったのは、確かだ。

 けれど、絶対に話そうとしない。


 仲が良くなった今でさえも。


「おかりん? どったん?」


「ああ、いや……」


 知りたい、と思う気持ちと、触れないであげておきたい、という気持ちがせめぎ合う。


 彼女と深く関われば関わるほど、知らない部分を、知りたいと思う気持ちが強くなっていく。


 でも触れて良いのか、わからない。


「難しいな、人と付き合うって」


「んー……そっかな?」


 あかりは明るく笑って、俺の頬にキスをする。


 人前だというのに、相手はおっさんだって言うのに、本当にこの子は気にしないな。


「私はあなたが好き、あなたも私が好き。だから付き合いましょう。それだけでいいんじゃない?」


 あかりが笑顔を俺に向ける。


「ほら、贄川にえかわさんたちだって、言ってたじゃん? 一緒に居るだけでいいって。たぶん……そんなに難しくないことなんだよ、男女がつきあうのって。好きって気持ちが、あればさ」


 ……確かに。

 贄川にえかわ氏は、日本人で奥さんはロシア人だった。


 きっと、色んな障害が合ったに違いない。


 それでも今は、さっきみたいに、幸せそうに笑っていられた。


 それはあかりが言うように、好きという気持ちがあったからだろう。


 言語が通じずとも、年齢が離れてようとも、好きという気持ちがあれば……。


「気軽に好きになっちゃえよ♡ あたしのことをさ♡」


 またも、あかりが俺の唇に、ついばむようなキスをする。


 ……好きという感情。

 俺は、ミサエと付き合ってきて今日まで、いびつな恋愛をして、好きって気持ちがよくわからないでいた。


 だが……。


 そばにいたいと、そばに居て楽しいと、そう思う気持ちが……。


 その子をもっと知りたいと、身近に感じていたいと、思う気持ちが……。


 好きというのならば、俺は、あかりのことを、好きになっているのかもしれないなって、そう思ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] タピオカ…事件…木下…うっ頭が。 [一言] 悪い事は言わない、カップルや夫婦にタピオカはあまりにも不吉すぎる。あの事件が有名になったせいで縁切りの呪物染みた食べ物にしか見えんよ…。タピ…
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