【番外編】
肉が焼ける。
骨が爆ぜる。
内臓が、魂が、炭化していく。
ミサエの全てが、紅蓮の炎に包まれていく。
あまりの激痛に、悲鳴すら上げられない。喉が焼け、声帯が灰になっていくからだ。
ミサエは溶解炉の中、生きたまま焼却処分されていた。
だが、彼女は己の運命をただ受け入れていた。
それゆえに、彼女の口から怨嗟の言葉が紡がれることはない。
痛みと苦しみで発狂してもおかしくない状況で、それでも辛うじて自我を保てているのは――。
「ごめん……な、さい……」
夫である岡谷への、深すぎる後悔があったからだ。
夫を裏切り、苦しめてしまった。
そのことを、本気で悔いていた。
でなければ、こんな死の淵で、「ごめんなさい」なんて言葉は出てこない。
他人は言うだろう。「そんなの上っ面の反省だ」と。
確かにそう捉えられても仕方ない。
夫を裏切り続け、のうのうと生きてきた女の言葉なのだから。
だが、今は違う。
彼女は死に瀕している。
もう間もなく命の灯が消える。
そんな極限状態で吐き出された言葉に、嘘も偽りもなかった。
それは紛れもない、心からの懺悔だった。
「ごめん……ね……あな……たぁ……」
しかし残酷なことに、その言葉も、想いも、彼には届かない。
この場に岡谷はいないのだ。
そして、岡谷はそんな元妻のことなどとっくに忘れ、美しい女達と幸せな暮らしをしているだろう。
ミサエの贖罪は、心からの反省は、虚空に消えた。
届けたい人には、永遠に届かない。
それが、ミサエに与えられた最大の罰だった。
こうして、ミサエはその生涯を終えた。
ゴミのような心根を持った女は、焼却処分という、ゴミと同じ末路を辿って灰となったのである。
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