【番外編】
185
ミサエは、鉄の箱という暗闇の中で、何度も悔いた。
何度も何度も、己の浅はかな馬鹿さ加減を嘆いた。
だが、幾ら嘆いても、後悔しても、奇跡は起きない。
自分を閉じ込めた鉄の箱は、重機のようなもので持ち上げられ、そして運ばれていく。
一体、どこへ?
わからない。
箱の中からでは、外の様子は窺えない。
だが、確実に言えることがある。
この先に待っているのは、死だ。
どのような手段かは想像に難くない。とにかく、自分を待っているのは、死の結末。
それ以外になかった。
「なんで……アタシ、こんなばかなこと……しちゃったんだろ……」
枯れていたと思っていた涙が、頬を伝う。
少なくとも、大学時代は幸せだった。
岡谷という最高のカレシがそばにいて、自分もまた、彼に甘えてわがまま放題できていたからだ。
「ああ……あなた……あなたがそばにいたときに……もどりたいよぉ……」
だが、いくら願っても、望みが叶うことはない。
ここは、都合の良い異世界ファンタジーの世界ではないのだ。
冷酷な現実の話なのだ。
いかに幸運が訪れようと、時を巻き戻すことはできない。
やがて、ガタンッ! という激しい衝撃を全身に感じる。
ガタガタと揺れ動く振動。
鉄板の隙間から、鼻をつくような臭いが入り込んでくる。錆びた鉄の臭い、廃油の臭い、そして……何かが焼け焦げたような、鼻腔を灼く刺激臭。
外からは、ウィーンというモーターの駆動音や、何かを押し潰すようなプレス音が、重低音となって響いてきていた。
ここは、ゴミ処理場だ。
「Cブロックの廃棄物、搬入完了」
「了解。高熱溶解炉へ回せ。ボーンすら残すなよ」
「へいへい」
……溶解炉。
ああ、そうか。
自分は、溶かされて……死ぬのか。
もう、彼女は逆にすっきりしていた。
自分の運命を呪う気力もなかった。
しょうがないのだ。
岡谷を苦しめた事実は、消えないし、消せないのだから。
こうなって、当然だった。
当然の結末に、たどり着いただけなのだ。
覆水が盆に返らないように。
投げた石が地面に落ちるように。
そうあるべきゴールに、たどり着いた。
ただ、それだけ。
だから、ミサエはもう、泣き叫ばなかった。
ただ静かに、その灼熱の運命を受け入れることにした。
【おしらせ】
※1/9(金)
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