【番外編】
箱の中のミサエ。
視界は闇。
外から漏れ聞こえてくるのは、無機質な作業員達の声。
「……撤去作業……」
断片的に聞こえてくる情報が、脳内でパズルのように組み合わさる。
どうやら、近隣住民から「不審な箱がある」と通報が入ったらしい。
そして、市が「ゴミ」として撤去をするために、こうして業者を呼んだのだ。
ゴミとして、撤去。
それは、つまり……焼却処分。
「いや……やぁ、あぁあああああああああああああああ!」
最後の、それこそ、死力を振り絞って、ミサエは叫んだ。
爪が剥がれるほど、箱の内側を掻きむしる。
「だすけて……! だぁづげぇでええ……!」
頭がもう回らない。ただ、死ぬ。死にたくない。生きたい。
恐怖で思考が白く塗りつぶされていく。
「だぇげで……だぁげでえええええええええええええええ!」
ろれつが回らない。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして、必死に必死に訴え続けた。
助けて。ここにいるの。中に人がいるの。
だが、しかし。
「あーだるー」
「なんでこんなゴミかたづけねーといけねんだよー」
「ほんとだるいわー」
届かない。
誰一人として、こちらに耳を傾けてくれない。
ガコン、と箱が浮き上がる感覚。パッカー車のプレス機へ投げ込まれる浮遊感。
こんなに必死に、命乞いをしているのに。
どうして……。
「…………あ、なだぁ……」
最後の、最後。
本当に……最後になって……ミサエが呼んだ人物の名は、岡谷だった。
かつて自分を愛し、守ってくれていた、夫の名前。
「あなたぁ……ごめんなさいぃ……だずげでぇ……たすけてぇ……あなたぁ~……ごめんなさぁい……」
死の淵に立たされて、ようやくミサエは心から理解したのだろう。
自分が何を捨て、何を裏切ったのかを。
何度も、何度も、彼女は懺悔の言葉を口にした。
そこにはもう、打算も邪念もなかった。
ただ生きたい。助けて欲しい。本当に……。
だが。
残念ながら、この物語の主人公は岡谷であり、貴女ではない。
多くの小説がそうであるように、主人公を裏切り、虐げた者には……相応の罰が下される。
信賞必罰。因果応報。
主人公を捨て、ひどい目に遭わせた時点で……この女に救いの手というものは、永遠に伸ばされない。
悪役に、都合の良い救済展開など――訪れはしないのだ。
【お知らせ】
※1/2(金)
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