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第六話

 それからさらに一週間がたった。

 CDショップで意気投合した次の日の朝、何と向こうからこちらにやってきて、クラス内が騒然としたのだが、一週間もあれば見慣れて来たのか、私が白沢さんと話をしていても好奇の視線を向けてくる輩はいなくなった。……主に私の威圧のせいかもしれないが。

 彼女はそれまでの距離が嘘の様に私に寄ってくるようになった。休み時間の度に話をしに来るし、昼食も一緒に食べるようになった。

 自宅の場所の話をして、「家が反対だから一緒に帰れないの、ちょっと寂しいな」って言われて、ちょっとうるっときたりもした。

 私は学院中に『百合園の鬼神』だの『悪魔』だのという不名誉な称号で知られているため、そんな事をしてくれる人などいなかったのだ。だから仕方ない事と言える。

 ……そして同時に、白沢さんと「おねえちゃん」が同一人物に見えるようになってきていた。

 白沢さんは決して運動が得意ではない。むしろ苦手な方と言える。彼女はかなりのインドア派で、体育でも成績は結構低いのだ。

 あの時助けてくれた「おねえちゃん」は、まるでスポーツ選手みたいに激しく動いていた。白沢さんとはまるで違う。

 なのに、だ。

 見れば見る程、聞けば聞くほど、彼女と「おねえちゃん」がダブって見える。違うと言い聞かせても、それは決して変わらない。

 学院生活が楽しいと思えるようになってきた半面、そんなもやもやした感情も膨れていった。


     *


 その日の放課後。

 今日は母親に買い物を頼まれているので、先週同様に駅ビルへと向かった。地下一階の食品売り場で惣菜とパンを買い、一階のカフェでコーヒー豆を買った。

 その帰り、バス停まで重い荷物を引き摺って歩いていると、不意に路地裏から声が聞こえた。荒っぽい男性の声と、聞き覚えのある女性の悲鳴。

 私は妙に胸騒ぎがして、荷物を放り投げて其方に駆けていった。路地を覗き込むと、そこにはいかにも暴力団ですといった風貌の男性二人と、百合園学院の制服を着た女子――白沢さんがいた。

 白沢さんは座り込んで壁に背をつけ、泣きじゃくりながら「やめてください」と懇願していた。そんな彼女を見下ろす体勢の男共は、下卑た笑みを浮かべながら彼女を怒鳴りつけている。

 ――考えるよりも先に手が出ていた。


「げぶうっ!?」


 私は思い切り助走をつけて、手前側の男の頬を思い切り殴りつけた。男は一瞬宙に浮き、背中をアスファルトにつよく打ち付けて気絶した。

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