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040_監禁

 


 ミスリルゴーレムを15体倒した3日後。

 嫁たちと楽しい夜を過ごした朝早く、何か玄関が騒々しいので着替えて下りていく。

 そこには武装した男たちが2人。家の外にも何人か見えた。兵士ぽい。


「何事ですか?」

「お前がグローセ・ヘンドラーか?」

「はい、私がグローセ・ヘンドラーですが、貴方は?」

「私はこの街の警備隊所属のヘンドレイ・ブレトンと言う」


 俺の身元を確認してきた兵士は警備隊員だと言う。


「警備隊の方が私にどのようなご用件でしょうか?」

「うむ、お前には強盗の容疑がかかっている。大人しく縛につけ」

「は?」

「何を言っている! マスターは強盗などではない!」

「そうです、グローセさんが強盗などという卑劣な行いをするわけがありません!」

「そうだワン!」


 嫁たちが兵士を押し出そうとした。


「止めなさい! これは何かの間違いだ。調べてもらえばわかるから」


 ここで争っても俺に有利にはならないだろう。

 連行されるのは気分が悪いが、兵士たちに怪我でもさせたらそれこそ俺たちが悪者になってしまう。


「ちゃんと帰ってくるから」

「「「……」」」


 兵士たちは俺を縄で縛り上げ連行する。

 それを従業員たちが心配そうな顔で見ていた。だから皆には心配するなと俺は告げる。

 ドナドナされ警備隊の詰所に連れていかれた俺は取り調べを受ける。

 何でもエ・ゲツネー商会の商隊が4ヶ月ほど前に上白糖を満載してこの赤の塔の街を目指していたが、その商隊が盗賊に襲われ上白糖が強奪されたと言うのだ。

 4ヶ月前と言うと俺がこの赤の塔の街に来た頃の話だ。

 しかし面白い。この話を信じるならば俺以外に上白糖を購入しこの世界で販売できる商人が居るということだ。

 上白糖を強奪されたから上白糖を商業ギルドに卸している俺が犯人だ。というのが警備兵の主張なのだが、この話を聞いた時にこれは嫌がらせか何らかの思惑があっても冤罪だと思ったわけだ。


「私は上白糖を盗んだこともなければ、商隊を襲ったこともありません」


 俺の主張は終始一貫してこれである。

 認めるわけがないだろ、認めたらその時点で俺は有罪だ。

 インスに聞いたがこの国では取り調べに拷問を用いることはない。仮に兵士たちが俺に暴力を振るって自白を強要したとなれば俺は無罪放免となるのがこの国の法なのだという。

 だが、取り調べには期間がなく、俺が自白するまで拘留できるらしい。

 そうなると俺をハメた奴の目的が何かが気になる。


「ならば上白糖はどこから仕入れているのだ?」

「それは企業秘密です」


 単に上白糖などの仕入れ先が知りたいのか?

 それともそれ以外の思惑があるのか?

 取り敢えず当面は静観するしかない。


 拘留が7日目を迎えた。

 毎日朝一から夕方まで取り調べが行われる。毎回同じ問答の繰り返しだ。

 朝晩の2回は硬いパンと水が貰える。……そんな物で俺が我慢するとでも思っているのか!

 俺が入れられている檻の周囲には何故か他の囚人は居らず、兵士も2時間おきに見回りに来るだけなので夜こっそりと【通信販売】で食事を購入し食べている。

 それとインスに調べてもらったら、糸を引いている存在を突き止めた。インス、マジ優秀だわ!


『( ^ω^ )』


 インスは俺の代わりにスキルを使うことができるので、俺の持っているスキルをフル活用して俺に冤罪をなすりつけた犯人を捜してもらったら突き止めた。

 その犯人はネットーリ子爵と言う。こいつが糸を引いていることをインスは突き止めたのだ。

 このネットーリ子爵と俺との接点、それはブラハムだ。こいつがブラハムの妻を犯し、そして殺した張本人なのだ。

 そしてこいつは俺がブラハムを匿っていると突き止め、俺をハメたわけだ。

 俺が有罪になれば俺の奴隷であるブラハムは赤の塔の街を治める代官預かりになり、その後奴隷として売られるのでブラハムを買うのがこのネットーリ子爵って筋書だ。


『まさかこんな手を打ってくるとは思っていなかったが、ある意味これは天が俺に味方したのかもしれないな』

『はい、このままマスターを拘束すればこの街はマスターが卸していた商品が不足して混乱することは間違いありません。そうなれば困るのはこの街を治めている代官です』

『ネットーリのバックには伯父の伯爵がおり代官もネットーリの扱いに困っているのは間違いないか?』

『間違いありません。ネットーリは伯父の権力を笠に着てやりたい放題です。代官は伯爵の手前ネットーリを叱責もできずにいます』


 こういう話は時代や場所は関係なくどこの世界にもあるらしい。

 こうなると俺が撒いてきた種が芽を出すことになる。【通信販売】で購入した商品を大規模にばら撒いたことでこの街だけではなく、王都を始めとした幾つかの大都市でも商品が流通している。

 俺がこの檻の中に居る限り商品は消費されるだけで供給されることはない。そうなると後は簡単な話で多くの貴族や市民が俺の商品を出せと騒ぎ出す。

 俺はこの檻の中で1ヶ月か2ヶ月過ごすだけで代官には圧力がかかり俺を解放するしかなくなるってわけだ。

 まぁ、それなりに長い時間をこの檻で過ごさないといけないので嫁たちにも会えず寂しい思いを、しないのだ。

 俺には【時空魔法】があるので夜中に密かに抜け出し嫁たちに会うことができるのだ。目の前で監視がいるのならともかく、2時間おきに見回るだけなので嫁たちに会いに行く時間はある。

 まぁ、いつでも会えないのは寂しいけどね。


 更に10日後、俺の裁判が行われると兵士に引き連れられて外に出て馬車に押し込められた。

 暫く馬車に揺られると俺が閉じ込められていた建物とはまったく違う立派な建物がいくつも建っている。

 その中で小さめの建物に横付けされ馬車から降ろされる。

 恐らくここは代官の屋敷で俺が降ろされたのは兵士の詰所なんだろう。


 この10日間、俺を尋問した数名の兵士は俺に無理矢理吐かせようとはしなかった。

 どうも彼らは俺が上白糖を盗んでないと知っているようだ。まぁ、相手が相手だけに何も言えないというところだろう。


 しかし裁判とは尋常ではないな。証拠も何も無視して有罪を言い渡すってことかな?

 そうなったら俺も腹を決めないといけないな。この赤の塔の街どころかこの国を出るか、俺に濡れ衣を着せた奴や俺に敵対する奴を徹底的に排除して住みやすい街にするかだ。

 取り敢えずは裁判を楽しむとしよう。あれ、俺ってこんなキャラだったっけ?


 建物の中の一角に通された俺は出入口に近いところに置いてあった椅子に座らされる。

 部屋は日本の法廷のような感じで一番前に裁判官席、それの左右に被告人と原告の席、そして被告人や原告が発言すると思われる中央の机、最後に傍聴席となっている。


 既に傍聴席は半分以上埋まっており俺の嫁たちやキャサリンさん、冒険者ギルドの……名前忘れたけどマスターも居る。

 俺は心配そうな顔をしている3人の嫁にウィンクをすると、3人は顔を赤らめてカワユイのだ。


 原告側に座る背が低くぽっちゃり系のオッサンが恐らく俺を訴えたエ・ゲツネー商会の代表者なのだろう。

 如何にも腹黒と言う感じの代表者なのでちょっと笑えてしまう。

 しかし俺には弁護人は付かないのかな? そこまで親切ではないようだ。


「鎮まれ!」


 その声と共に裁判官の席の後ろの扉が開き真黒なローブを着た初老の男性と数人の男性が入ってきた。

 初老の男性は裁判官席の中央に座り、その左右に1人づつ着席する。その後ろには2人の護衛が立ったまま視線鋭く部屋の中に気を配っている。


「これより上白糖強奪事件に関して裁判を行う」


 初老の男がそう宣言すると右側の男性が立ち上がり羊皮紙を読み上げ始めた。

 その男性の言葉を簡単に要約すると、俺が捕まる4ヶ月ほど前にエ・ゲツネー商会が購入し運送していた上白糖を俺が強奪してこの赤の塔の街で販売をしたというものだ。

 聞けば聞くほど無理がある訴えだと思うのだが、裁判官たちはそれを分かっているのだろうか?


「グローセ・ヘンドラー、前に」


 初老の裁判官に呼ばれ俺は中央の机の前に立つ。


「姓名を名乗りなさい」


 いや、今あんたが俺の名前を呼んだじゃん。とは言わない。素直に従っておく。


「グローセ・ヘンドラーです」

「では、ヘンドラーよ、そのほうは先の訴えの内容を認めるか?」


 まさかこんなに早く本題に入るとは思っていなかったけど、認めるわけないよね。


 

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