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021_赤の塔の街

 


 赤の塔の街に到着して先ず行ったことはサンルーヴが職業に就き、セーラも転職した。そしてその後は不足している装備の新調だ。

 リーシアはレベルが上がったことで筋力も向上しているので今までの斧では物足りないらしく、もっと重くそして頑丈な斧に買い替えた。

 そして獣人となったサンルーヴ用の装備も新調する。短刀を二振りと忍者の黒装束を購入した。短刀は赤の塔の街で入手したが、黒装束は【通信販売】で日本製を購入して与えてやった。黒装束の防御力は普通の服と変わりないのでハッキリ言ってネタアイテムだ。

 セーラは賢者に転職したことで武装を全て見直した。魔法使い系の防具は防御力よりも魔法発動における補助効果が付与されているものが多く、そういった物は総じて高額だ。しかし財力はそれなりにある俺なのでできる限り上等な物を購入し装備させた。


「こんな良い物を……ありがとうございます!」

「俺は非戦闘員だから3人にしっかりと護衛をしてもらうためにも武器や防具はできるだけ良い物をと思っている」


 そう、俺は非戦闘員。だから戦闘は3人の仕事であり、俺は商人だ。商人なのだ!


「主、次は赤の塔に入るのだろ?」

「だんじょん、はいるワン!」

「ダンジョンに入らなくても魔物の死体を集めることはできるから!」

「でもダンジョンに入った方が早くそして安く死体を回収できますよ」


 この3人はダンジョンに入る気満々で俺を見てくる。俺、商人なのよ! 何で危険を冒して魔物の死体を集めなきゃならないわけよ!

 俺がダンジョンである赤の塔に来た目的は魔物の死体を効率的に入手するためであり、そのためにはダンジョンに入って魔物を倒すのではなく、冒険者が倒した魔物の死体を購入すれば良いのだ。

 取り敢えず3人の主張は無視する。

 先ずは魔物の情報を集め、そして魔物の死体を回収するための拠点が必要だ。というわけでセーラとサンルーヴには魔物についての情報を集めてもらい俺とリーシアは商人ギルドに向かう。


「お待たせしました当ギルドのバイヤーをしております、ザン・キリングと申します」

「グローセ・ヘンドラーと申します。本日はお時間を頂きありがとうございます」


 ザン・キリングさんは50代後半の白髪交じりのサラリーマンって感じのオジサンだ。見た目は冴えない感じだが、実際はどうなのか?

 先ずはジャブを打つとしよう。白砂糖を机の上に置き説明をする。どうやらハジメの町の白砂糖のことが伝わっていたようで白砂糖を見てキリングさんの雰囲気が変わった。


「これは白砂糖でよろしいでしょうか?」

「はい、白砂糖です。これをギルドで購入していただきたいと思いましてお時間を頂きました」

「では、貴方がハジメの町に?」

「……」

「いや、これは失礼しました。詮索は止しましょう」


 別に「はい、そうです」と言ってもいいけど秘密主義でミステリアスなグローセ・ヘンドラーを演じています。特に理由はありません!

 白砂糖についてキリングさんと量と納品時期について協議する。今回は大量1トンを売るつもりだ。ギルド相手に専売するという契約で1トンを1千4百万円で売ることにした。これで掴みはOKだろう。


「白砂糖とは別の話になりますが、暫くこの街に腰を据えようと思うのですが拠点となる物件をギルドで探せますか?」

「それは勿論でございます。ヘンドラー様さえよろしければ不動産部の者をお呼びしますが?」

「ありがとうございます。お願いします」


 そして暫くして現れたのはエルフの女性だった。エルフなので見た目と年齢は違うのだろうが、ここで【鑑定】を使うほど俺は落ちていない。

 しかしエルフっていう種族はどうしてこうも美形ばかりなのだろう。その尖った耳をプニプニしたい。


「お待たせしました。エリーザ・クレンドレイクと申します。以後お見知りおきください」

「グローセ・ヘンドラーと申します。よろしくお願いします」


 美形のクレンドレイクさんをズーっと見ていたいが、そうもいかない。俺の後ろに立っているリーシアから物凄いプレッシャーが……


「大きな倉庫と4人が住める程度の居住区があれば良いのですが」

「それでしたらこの物件はいかがでしょうか?」


 見せてもらったのは7LDKの母屋、大きめの倉庫、厩舎、店舗、そして広い庭がある物件だった。母屋と倉庫は良いが、厩と店舗は不要だ。特に店舗は四種販売登録者の俺には不要だ。

 他に無いかと聞くと大きめの倉庫がある物件はこれだけだと言う。

 結局、クレンドレイクさんの勧めを受けその物件を借りることにした。家賃は月70万円だ。高いのか安いのか分からん。

 入居は2日後なのでスイートを2泊分延長する。


「主、倉庫など何に使うのだ?」

「自分のスキルに【魔道具作成】があるのだけど、これまで全く使ってないから魔道具でも作ってみようかと思ってね」

「なるほど、ならば魔道具作成に必要な魔物の素材をダンジョンで入手する必要があるな!」


 え? 何でそうなるかな! 魔物の素材なんて購入すればいいんだから!


 何だかんだ言って俺はリーシア、サンルーヴ、セーラに引きずられ赤の塔に入ることになった。勘弁してくれ。


「宿をとっているから夕方には戻るんだからな!」

「分かっているぞ、主!」

「わかってるワン!」

「了解しています!」


 俺、非戦闘員だからね!


 赤の塔の1層はとても広い空間と言うか草原だ。

 空もあれば太陽もある。だから塔の中でも天井がないように見える。

 そして昼もあれば夜もあり、時間の経過はダンジョンの外と同じなので時間が分かりやすい。

 現れた魔物はリーシア、サンルーヴ、セーラの3人が自分たちの装備を確かめるように撃退し、俺は魔物の死体を回収して【通信販売】で売り払う。


 夕方近くになると一旦宿に戻るためにダンジョンを出る。赤の塔の外にある城のような冒険者ギルドの支部が冒険者で溢れかえっている。

 俺たちはその冒険者ギルドを横目に赤の塔の街までの駅馬車に乗り込む。1人片道3000円も取られるがその程度の金なら幾らでも出せるので問題ない。


 宿屋に戻って先に3人を風呂に入らせる。俺が先に入ると昨日みたいに乱入されそうだったから先手を打った。

 リーシアたちは不満そうだったが何とか言いくるめ風呂に入ってもらい、その間に俺はインスとお話をする。


『インス、今の俺だと【魔道具作成】で何が作れるかな?』

『はい、材料が簡単に入手できランクEの【魔道具作成】でも作ることができる魔道具ですと『スピードブーツ』がよろしいかと思います』

『スピードブーツ?』

『スピードブーツはランク2以上の魔物の革から作られたブーツにヘイストを付与することで作成できます』

『そのスピードブーツを作るとしてブーツ自体も俺が作れるの?』

『はい。【魔道具作成】では材料を魔力で加工できます。イメージとしては先ず魔物の皮を鞣して革にします。次に革を加工してブーツを制作します。そして出来上がったブーツにヘイストを付与します』

『なるほど、そうするとランク2以上の魔物の皮を購入すればいいかな?』

『ただ、ランク2以上の魔物だけではいけません』

『つまり?』

『基本的に魔物のステータスで俊敏が高い魔物でなければ効果が減衰してしまいます。ですからウルフ系や兎系、それに鳥系の魔物の皮が良いのですが、兎系や鳥系の魔物はランク2程度では大した効果はないのでウルフ系が良いと思います』

『そうするとブラックウルフやレッドウルフあたりかな?』

『はい、ブラックウルフとレッドウルフであれば問題ないでしょう。冒険者ギルドに依頼を出してもよろしいでしょうが、せっかく店舗付きの物件を借りるのですから買取店を開いてはいかがでしょうか?』

『買取店?』

『マスターの四種販売登録は一般販売ができませんが、買い取りであれば誰からもできます。ブラックウルフだけではなくマスターの当面の目標である【通信販売】で魔物を販売するにも有効だと思います』

『なるほど、俺は冒険者ギルドで魔物の購入依頼を出すつもりだったけど、直接買い取りもできるわけだ……だけど、そんなに簡単に買い取りなんかできるのか?』

『大丈夫だと考えます』

『その心は?』

『冒険者ギルドでは魔物の死体を丸ごと買い取っておらず価値が高い部位のみを買い取りしております。それに低ランクの魔物は部位の買い取りさえ行っておりませんので、低ランクの魔物を含む魔物をターゲットにすれば良いのです。そして低ランクの魔物を買い取れば新人の冒険者などはお金に困っておりますので必ず持ち込んできます!』

『お、おう。じゃぁ、魔物の死体の全購入をするとしようか』

『はい、それと提案があります』

『提案?』

『はい、今回の買い取りに関してはあくまでも魔物の死体限定ですが高ランクの魔物はできるだけ冒険者ギルドを通して買取するようにすれば冒険者ギルドとの軋轢が生まれることはないでしょう』

『ふむ、なるほど。既存の特権を立てつつ介入するって感じだね』

『はい、バランスを取って買い取りをすれば冒険者ギルドともある程度良い関係を構築できるかと思います。それと買い取りが難しい魔物は自力で入手することをお勧めします』

『むぅ~。それは……』

『戦闘はリーシアたち戦闘ができる者に任せればよろしいでしょう。それに多くの魔物の死体を持ち帰るにはマスターのストレージがどうしても必要になります』

『アイテムポーチじゃダメ?』

『許容量が多くないのでマスターが同行されるのが良いかと考えます』

『うむむむ……』

『あと、マスターはテイマーなのでもっと多くのものと契約をすることをお勧めします。契約者が多ければ多いほどテイマーはステータスが上がりやすくなりますので』

『なるほど、テイムに関してはインスの言う通りだね』

『ありがとうございます。頑張ってダンジョンの上層に行き多くのものと契約してくださいね』


 インスと話していたらリーシアたち3人が風呂から上がってきた。丁度切りが良いのでインスとのお話を切り上げ俺も風呂に入ってユックリ考えることにする。


 翌日も赤の塔に拉致られる。

 1層は馬鹿広い草原エリアで多種多様の魔物が現れる。そんな魔物たちを倒していると偶にアイテムがドロップする。これはダンジョン特有のシステムらしくダンジョンの外ではこのようにアイテムがドロップすることはない。

 しかしこういうところはSWGとそっくりだし、草原エリアの出てくる魔物も似ている。

 一番遭遇率の高いのはグラスウルフだ。本来、狼系の魔物は単体では現れないのだが、そこはダンジョン仕様なのかこの草原では複数で現れることがないので初心者の相手としては適当なのだろう。

 俺がスピードブーツを作るためにはランク2のブラックウルフかレッドウルフの皮が必要なのだがブラックウルフやレッドウルフは3層と4層に多く現れるので3層まで行くか冒険者から買い取る必要がある。


 1層の探索を終えて宿に戻る。明日は家の受け取りがある。

 そしてインスからの提案である買取店については店を開くことにしたが、買取店を俺がズーっと店番をするわけにはいかないので人を雇うことにした。

 だから暫くはダンジョンには潜れないと言うとリーシアたちはかなり不満気だったが、納得してもらうしかない。

 それに商人ギルドへ白砂糖を卸さないといけないからどの道ダンジョンには入れないのだよ。ついでに買取店の店員についても相談をしよう。最悪は奴隷の購入を考えよう。


 

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