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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
最終章。エルフ絶滅計画

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53話。8000の兵を相手に無双

 俺は城壁の上に立って、敵軍を待ち構えていた。

 やがて、森よりわらわらと進み出てくる敵の軍勢が見える。前衛に魔獣、後衛に弓で武装したエルフ兵という布陣だ。さらに飛行戦力として飛竜たちまでいる。

 いずれも狂戦化(バーサーク)で強化されており、血に飢えたような赤い目をしていた。


「さすがに8000近くの兵力は壮観だな……」


 強化された上に死を恐れないような連中だ。まともにやり合えば、ユースティルアの城門が突破されるのは、時間の問題だろう。


「このでかい丸太はアッシュ隊長が事前に用意してたのかい? さすがだね、コイツがあれば、だいぶしのげるよ」


 【狩女神アルテミス】のリズが口笛を鳴らした。

 彼女が手で叩いているのは、俺が【植物王ドルイドキング】で生み出して配置した丸太だ。敵が城壁の下まで攻めて来たら、これを落として迎撃する。


「アッシュ隊長、守りは任せてください。何人たりともユースティルアには入れません!」


 臨時の守備隊長に任命したサーシャが、胸を叩いた。


「サーシャ、リズ、街の守りは任せたぞ。なるべく早く決着をつけてくる」


「闘神に勝ったアンタなら大丈夫だとは思うけど、気をつけなよ。あのディアドラって女は、あたしとサーシャでも仕留められなかった。正直、底が知れないよ」


「大丈夫! あるじ様はリルが守る!」


「及ばずながら、わたくしも尽力します!」


 リルが胸を張り、コレットも気合いのこもった声をあげた。


 俺の立てた作戦は単純だ。

 なるべく多くの敵をアルフヘイムの中心から引き離し、俺とリルとコレットの3人で王宮に乗り込む。そして、王宮で即位の儀を行い、エルフたちに戦いをやめさせるのだ。

 そのため、敵軍がユースティルアを攻撃するまで、あえて引き付けておいた。

 離脱と同時に、敵軍に強烈な一撃を加えて、敵の出端を挫くと同時に、味方の士気を上げる。


 コレットとキスしなくてはならないと思うと、うれしいような困ったような複雑な気持ちになる……

 コレットと目が合うと、嫌でも意識してしまうな。


「神獣にエルフの王女か。まあ、あんたたちがいるなら、大丈夫だろうけどね」


 リズが笑みを見せた。


「正直、まだ納得できませんが……英雄色を好むと言います。一度の、う、浮気くらいはなんとか許します。アッシュ隊長の正妻として、私はアッシュ隊長の帰ってくる場所を守り抜きます!」


 正妻?

 サーシャが何を言っているのか正直、よくわからなかったが……彼女なりに俺を元気付けようとしてくれているのだろう。


「俺ももう腹を括った。必ず戦いを終わらせて、ここに戻ってくる」


「はいっ!」


 その時、兵たちがざわめき出した。


「アッシュ隊長! あれを見てください。煙が上がっています!」


 サーシャが素っ頓狂な声を出して、アルフヘイムの森を指差す。

 なんと、森のあちこちから赤い火の手が上がっていた。


「森が燃えている!?」


 コレットが悲痛な声を上げた。


「……まさか、森に放火しているヤツがいるのか!?」


 複数ヶ所から煙が上がっているため、そうとしか考えられない。

 だが、何のために?

 ルシタニア王国軍による火攻め? いや、それはないな。


 アルフヘイムの森が燃えたら、ユースティルアにも飛び火する恐れがある。

 森が焼失したら、住処を追われた魔物たちが街や村を襲うようになる。川も灰で汚染されて魚が取れなくなるし、森林火災を起こすなど愚の骨頂だ。


「ご主人様、わ、わたくしの故郷が……アルフヘイムの森が!?」


 コレットが取り乱す。

 国が大火に包まれようとしているのに、エルフ軍は何事もなかったように、進軍を続けている。


 もしかすると、ディアドラの目的を見誤っていたのかも知れない。


 ヤツが戦争を起こしたのは、アルフヘイムを滅亡に導くためじゃないか? ハーフエルフであるディアドラは、エルフを憎んでいた可能性がある。

 レイナも自分を受け入れてくれなかったエルフに怒りを燃やしていたしな。


「ちっ! ……ヤツら狂ってるね。故郷が燃えているってのに、仕掛けてくる見たいだよ!」


 リズが警告を発する。

 敵の魔獣部隊が、城門に押し寄せて来ていた。呆けてる場合じゃなさそうだ。


「リル、ヤツらを強行突破して、アルフヘイムの王宮まで突っ切るぞ!」


「うん! あるじ様、リルに乗って!」


 リルの身体が光に包まれて膨張し、神獣フェンリルの巨体に変化する。


「コレット、嘆くのはあとだ。ディアドラを倒して、アルフヘイムを救うぞ!」


「は、はい! ご主人様っ!」


 コレットを抱きかかえて、俺はリルの背に飛び乗る。


 オオォオオオオン!


 リルが咆哮と共に、魔獣部隊を蹴散らして驀進した。

 すごい。並の魔獣など、いくら束になってもリルのパワーにはかなわないな。


 次の瞬間、空を埋め尽くすほどの矢が、俺たちに浴びせられた。

 どうやらエルフたちは、味方である魔獣に矢が当たることなど、お構いなしのようだ。


「阻め【矢避けの加護】!」


 コレットが弓矢に対する防御魔法をすぐさま展開する。俺たちに届くハズだった矢は、グニャリと軌道を変えて、ことごとく地面に落ちた。

 エルフの王女は、他のエルフたちとは隔絶した魔力を持っている。

 

「はぁあああ──ッ!」


 飛竜が急降下突撃をしかけてくるが、俺は【世界樹の剣】で、斬り捨てた。


「イバラよ、突き出ろ!」


 さらにスキル【植物王ドルイドキング】で、俺たちの左右にイバラを連続召喚。防壁にした。

 地上の魔獣軍団は、イバラに邪魔されて俺たちに向かって来られない。


「リルがみんなを守る!」


 さらにリルが魔獣たちに、火炎と雷撃の雨を降らせた。魔獣たちは断末魔の叫びを上げ、味方からは大喝采が飛ぶ。


「さ、さすがです、ご主人様! このまま、アルフヘイムの王宮まで突っ切りましょう!」


「おう!」


 リルが猛スピードで駆ける。

 何者も俺たちの行手を阻むことはできなかった。

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