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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
6章。外れスキルで闘神を超えます

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48話。闘神に勝利。植物王の新しい力

「し、信じられないわ、世界最強の闘神ガインを!?」


「まさか、決め手は【世界樹の剣】じゃなくて、外れスキルで生み出した破城槌とはね……っ!」


 レイナとミュシャも、それぞれ驚愕に震えていた。

 俺も放心状態で実感が湧かなかった。まさか、本当に親父に勝ってしまうなんて……


 どっと疲労が押し寄せてきて、神獣フェンリルの背中より落っこちてしまいそうになる。


 でも、よかったな。これで、コレットは助かったんだ。

 俺を見上げるコレットが、輝くような笑顔を向けてくる。


「悪いコレット、最後は危険な目に合わせてしまって」


「いえ、きっとご主人様が勝つと信じていましたから! それに、わたくしは、ご主人様を支えて立つことのできる女の子になりたかったんです。だから、絶対に逃げないと決めていました」


「そうか。ありがとな。これは俺たち全員で掴んだ勝利だ……!」


 なんだか、コレットがいつもより美しく見えた。

 気高いエルフの王女、俺にはもったいないパートナーかも知れない。


「あるじ様……! 気をつけて!」


 リルが鋭い警告を発した。

 親父の隣の空間がぐにゃりと歪む。空間が裂けて、漆黒の大蛇が顔を出した。

 

「な、なんだコイツは……?」


 全身から溢れ出す、魂を押し潰すかのような威圧感。この感覚は、神獣フェンリルのそれに近い。


 シャアァアアアア!


 真っ赤な口から舌を出して漆黒の大蛇が、俺たちを威嚇した。


「あぁあああっ、こ、この大蛇は!?」


 コレットが怯えて後ずさる。


「【神喰らう蛇ヨルムンガンド】!」


 リルが四肢に力を込めて戦闘態勢になった。


「まさか……」


 真偽のほどは不明だったが。親父は神獣ヨルムンガンドを打ち倒して、支配下に入れているという噂を聞いたことがあった。


 だが、親父は神獣ヨルムンガンドを召喚したことなど今まで一度もなく、闘神の伝説に尾ヒレがついたモノだと思っていたのだが……


「うへっ……これはシャレになっていないかも。私も初めて見たけど、フェンリル以上の化け物だね」


 さすがのミュシャもヨルムンガンドから放たれる強烈な殺気に、顔を引きつらせている。


「マスターは気絶しちゃっているけど、コ、コレ制御できるんだよね?」


「親父はまだ切り札を隠し持っていたのか……!」


 俺は歯ぎしりした。

 正直、もう戦う力は残っていない。

 ミュシャの懸念通り、もしこの怪物が無差別に暴れ出したりしたら、打つ手が無いぞ。


「……いや、俺の負けだ。退けヨルムンガンド、戦いは終わりだ」


 目を開けた親父が、ヨルムンガンドに命じた。

 すると鎌首をもたげた大蛇は、不満にそうに目を細めた。


「契約を違える気かガイン。お前の命を脅かすほどの強者が現れた際は、共に戦いに興じると約束したハズだぞ?」

 

 ヨルムンガンドから、底冷えするような声が響く。


「フンッ、悪いがコイツは俺の息子、後継者だ。敵ではない」


「……そうか。どうやら共にすでに戦意なしか。興ざめだ。フェンリルが新しい主と定めた者との戦いなら、さぞかし楽しめると思ったのだがな」


 ヨルムンガンドは消沈したように呟く。そのまま虚空に溶けるように消え去った。


「ふぅうう……!」


 リルが大きく安堵の息を吐いた。

 【神喰らう蛇ヨルムンガンド】は、神々を喰らってその力を取り込み続けたという最凶最悪の神獣だ。リルでもその力は脅威のようだ。


「へぇ、マスター負けを認めるの? 世界一負けず嫌いだと思っていたのに」


 ミュシャが意外そうに尋ねた。


「俺は気絶していた。アッシュがその気になら、フェンリルをけしかけて俺を殺すこともできただろう。戦場で気を失うということは、死ぬことと同意義。その上、情けまでかけられたとあっては、負けを認めざるをえん」


 これには俺も驚いた。


「負けそうになった場合の保険としてのヨルムンガンドじゃないのか?」


「その通りだ。だが、あの怪物はこの俺を真の主と認めている訳ではない。条件付きの契約を結んでいるだけだ。ヤツの力を借りて勝ったとしても、俺の勝利とは言えん。俺はヤツの力を借りずに勝つと決めているのだ」


 親父なりのこだわりがあるようだった。

 親父はクソ野郎だが、闘争に関しては誰よりも真摯なんだよな。


「それじゃあ、コレットの命を狙うのは諦めてくれるんだな?」


「フンッ、男に二言はない! それにその娘は逃げ出すことも泣きわめくこともせず、この俺に立ち向かい、お前に協力し続けた。大した肝の太さだ。できた嫁だと言えよう」


 親父は朗らかに笑った。

 もう戦う必要は無さそうだ。俺はフェンリルの背中から飛び降りる。


「やりました! これでわたくしたちは、お父様、公認の仲ですね!」


 コレットが満面の笑みで抱き着いてきた。


「うん、まあ、そうだな……」


 いつもなら、やめろと突っぱねるところだが、今はお互いの無事を喜び合いたかった。

 コレットが生きて、これからも俺の側にいてくれる。その実感を彼女の温もり通して得ていた。

 愛しい気持ちが込み上げてきて、俺もコレットを抱きしめる。花のような甘い香りが鼻孔をくすぐった。


「ああっ、怪我をなさっているじゃありませんか!? すぐに服を脱いで下さい! わたくしが回復魔法で癒やします!」


「だぁあああっ! もう、親父の前でやめろ、恥ずかしいっ!」


 コレットが俺の上着のボタンを外そうとしたので、慌てて離れた。怪我は【世界樹の剣】の自動治癒効果で、ほぼ回復できているんで大丈夫というか、何をしようとしているんだぁあああ──ッ!?


「ふむ。死闘の後で、女を抱く余力があるとは、さすがは俺の息子」


 親父が変な感心のしかたをしていた。


「いや、抱く気とか無いから!」


「ううん、アッシュも隅に置けないねぇ。これはマスターに孫ができる日が近いかも」


「お前も勘違いするな!」


 ミュシャがおもしろがっていたので、怒鳴った。


「わ、わたくしをとうとう抱いていただけるのですね! ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」


「いや、しないって言っているでしょうがぁああ!?」


 頬擦りしてくるコレットを、なんとか離そうとする。


『スキル熟練度を獲得しました。

 スキル【植物王ドルイドキング】、Lv5の解放条件を満たしました!

 【植物の再生】能力が、使用可能になりました!』


 その時、システムボイスがスキルの進化を告げた。

 親父との戦いで猛烈は勢いでスキルを使ったため、スキル熟練度が一気に貯まったようだ。

 

―――――――


植物王ドルイドキング

植物を支配するスキル。

代償として筋力ステータス80%低下。


Lv1⇒植物召喚(触れたことのある植物を召喚する。最大出現量10トン)


Lv2⇒植物を武器化できる


Lv3⇒植物の効果無効化(任意)


Lv4⇒植物の防具化


Lv5⇒植物の再生(NEW!)


Lv6⇒????


―――――――


『【植物の再生】は、元気が無くなった植物を復活させ、より元気にする能力です』


 はぁ? な、何というか……これまた戦闘には、丸っきり役立たなさそうな能力だな。これは、もはや園芸向けの力だ。

 いや、待てよ……

 『より元気にする能力』というのが、ちょっと引っかかった。これは検証の必要があるかも知れない。

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『最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します』
ぜひお手に取っていただけるとありがたいです!
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