43話。外れスキル【植物王】で闘神を圧倒する
「まずは小手調べだ。喰らうがいい!」
音さえ置き去りして、一気に距離を詰めた親父が【雷槌】を叩きつけてきた。
天より落ちる稲妻のような一撃だ。
「【世界樹の盾】!」
俺はスキル【植物王】Lv4の能力『植物の防具化』で、【世界樹の剣】を盾に変形させた。
凄まじい衝撃が全身を貫く。足で地面を削りながら、俺は数十メートルも弾き飛ばされた。
「ほう、見事だ。俺の一撃を受けて立っていられるか!」
親父の驚嘆の声が響く。
インパクトの瞬間、骨の何本かがイカれたが、【世界樹の盾】の自動治癒効果によってあっという間に回復していた。
【世界樹の剣】を防具形態にすると、自動治癒効果が高まることは検証済みだ。
「マヒクサよ!」
俺は親父の足元に麻痺毒を持ったイバラを出現させて、両足を絡めとる。
さらに【世界樹の剣】を連射式ボウガンに変形させた。
コレットを守るためだ、俺はいささかも容赦する気は無かった。
「往生しやがれ──ッ!」
連射式ボウガンは、ハンドルを回すことで、矢が連続で発射される複雑な機構の武器だ。
【植物王】で作り出すためには、その武器を明確にイメージしなくてはならない。そのため、俺は連射式ボウガンの形状とメカニズムを頭に叩き込んでいた。
ボウガンの矢は【世界樹の剣】が分離、変形したものであるためスキル【植物王】Lv1『植物召喚』の能力で、いくらでも補充できる。
無限に超攻撃力の矢を放つことができた。
今の俺は遠距離攻撃においても、死角はない。
「ふん、小賢しいっ!」
親父が【雷槌】を振るうと、マヒクサのイバラが雷撃に弾け飛ぶ。
さらに親父は【雷槌】を盾のように構えて突っ込んできた。麻痺毒は効果が薄かったようだ。
ボウガンの矢がことごとく弾かれる。
「潰れろぉおおおッ!」
親父の意識が前方に集中したのを見計らって、俺は総重量10トンの巨木を親父の頭上に召喚した。
「なにぃいい!?」
親父が驚きの声を上げる。巨木はひとつではない。【植物王】の植物召喚能力を使い、総重量10トンの巨木を、何本も何本も、その頭上に降らせた。質量攻撃だ。
「この程度で、この俺を止められると思ったか!?」
親父は拳を振り上げて、降り注ぐ巨木を粉砕する。
「かかたっな! そいつは、タダの大木じゃない。猛毒の樹液を持つアコカンテラだ」
「なんだとッ!?」
木っ端微塵になった巨木から、猛毒の樹液が親父に降りかかった。
アコカンテラの毒を浴びれば、皮膚が焼けただれ、人間は数時間で死に至る。親父なら死にはしないだろうが、激痛でしばらくまともに動けなくハズだ。
この毒攻撃をするために、あえて武器化させずに樹液をたっぷり含んだ生木のまま落とした。
「ぐぉおおおおっ!? まさか筋力が80%も低下するゴミスキルにこんな使い道が……!」
猛毒を浴び、超重量の大木に埋もれながら、親父は驚愕の叫びを上げた。
「コレットはサーシャの妹や、ハゾス様の病を治すためにエリクサーを調合してくれているんだ。親父みたいに、自分のことしか考えていないクソ野郎とは違うんだ。
そのコレットを金だのメンツだののために殺そうとするなら、俺は絶対に許さねぇ!」
俺は【世界樹の剣】をオリジナル形態【神剣ユグドラシル】に変形させた。最強無比の一撃を放つべく、剣を振りかざす。
「トドメだ【天羽々斬】(あめのはばきり)!」
天地を割る衝撃波を、俺は闘神ガインに叩きつけた。
アコカンテラというのは、実在の猛毒植物です。アフリカで毒矢に使われてきた歴史があります。
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