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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
6章。外れスキルで闘神を超えます

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39話。露天風呂でパニック

「はぁ~~~~~~~~。生き返るなぁ」


 その夜、俺はゆっくり露天風呂に浸かっていた。

 ユースティルアは火山地帯で、地熱から温泉が湧き出している。領主の屋敷には、領主一族専用の露天風呂が併設されていた。

 身体にじんと染み渡る熱い湯が、なんとも心地よい。

 空には月と星々がきらめき、絶景だ。


「あるじ様ぁ! リル、あるじ様を守る!」


 その時、バンと脱衣場の扉が開き、獣人少女リルが飛び込んで来た。

 湯気がイイ感じにリルの裸体を隠してくれるが、どうやら身体にタオルも巻いていないようだ。


「おぃいいいいっ! お前、なにやって!? ここは男湯だぞ!?」


 ドボッーン!


 と、リルが湯船に飛び込んできて、盛大な湯柱が立つ。


「男湯って、何?」


「性別オスしか入っちゃいない、場所のことだ!」


 リルがキョトンとした仕草で、首を傾げる。

 神々によって千年以上封印されていた神獣フェンリルの化身であるリルは、常識が欠落していた。

 街のみんなに受け入れられて、だいぶマトモになったと思っていたが、まだまだ認識が甘かった。


「お風呂、身体を洗うところだよね? リル、あるじ様の身体を洗う!」


「いや、いぃ! とにかく帰れ!」


 こんなところを他の誰かに見られたらマズイ。俺は全力で後退りした。


「なんで? コレットやミリアとはいつも身体の洗いっこしているよ?」


 リルが吸い込まれそうな純真無垢な瞳を向けて、無邪気に尋ねてくる。

 ぶっ! 女湯では、毎日そんなイベントが発生していたのか!?


「女の子同士なら良いけど、男女ではダメなの!」


「うん?」


 リルはあまり良くわかっていないようだ。


「アッシュ隊長!? うわぉおおおお! このクソ神獣、アッシュ隊長になにうらやまけしからんことをしていやがるんですかぁああ!?」


 突如、女湯とを隔てる柵が爆散し、怒りの形相をしたサーシャが突っ込んできた。


「はぁああ!? お前まで何をっ!?」


 サーシャは無論、タオルを身体に巻いているが、俺は慌てて目を逸らす。心臓に悪ったらありはしない。


「リズ、【神喰らう蛇】一番隊の名にかけて、このクソ非常識、脳ミソすっからかん神獣を討滅しますよ!」


「いや、あんた【神喰らう蛇】は辞めたんだろ、っていうか、あんたが一番非常識だよ!」


 同じく女湯に浸かっていた少女リズが呆れ顔で告げた。

 サーシャは、俺の右腕としてずっと魔獣殲滅部隊の副隊長を務めていた少女だ。彼女が本気の殺気を放っていると、正直、背筋が凍る。


「うん? サーシャ、リルと遊ぶ!」


 だが、リルはまるで物怖じせず、逆にバンザイしてサーシャを迎え入れた。

 リルにとって、じゃれ合うには丁度良い相手らしい。


「ずっとアッシュ隊長の背中を追いかけてきた私が、未だに叶えることができなかったレアイベント。隊長と入浴! を天然で、いとも簡単に実現してしまうなんて……クソが、死んで償え!」


 サーシャは攻撃魔法の詠唱に入った。


「おぃいいい! ここを破壊したら、ミリアに怒られるだろうが!?」


 下手をすれば露天風呂どころか、領主の屋敷そのものを壊しかねない。

 俺はスキル【植物王ドルイドキング】で、大量のネムネム草をサーシャの周囲に召喚した。睡眠効果のある花に囲まれて、魔法を放とうとしたサーシャの動きが鈍る。


「はぐっ……隊長と同じ湯船に浸かる最大のチャンスがっ。私は倒れる訳にはっ……!」


 サーシャは自らの頬をつねって、睡魔に必死に抗う。

 大した精神力だ。もっと建設的なことに使って欲しい。


「リル、眠くなってきた……ネムネムする」

 

 欲望に忠実なリルは、湯船の中で眠り出す。人間形態の時の彼女は、状態異常に対する耐性がかなり落ちるようだ。


「アッシュ隊長、悪かったね。せっかく休んでいるところをさ」


 自分が悪いわけでもないのに、リズが謝ってくる。

 彼女はサーシャの首筋に手刀を当てて、気絶させた。


「最近はこんなことばっかりで、ホントにカンベンして欲しいんだが……」


「そうか。隊長も苦労の連続だね。同情するよ」


 リズがサーシャとリルを担いで、女湯に戻っていく。

 俺は【植物王ドルイドキング】で、いくつもの竹を女湯との境目に出現させて、即席の柵にした。

 何かどっぷり疲れたが、これでまた露天風呂が楽しめそうだ。


「お兄様! すみません! ちょっと上がって来ていただけますか!? 【神喰らう蛇】の冒険者が詰めかけてきています!」


 その時、義妹ミリアが俺を呼ぶ声が響いた。


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