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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
3章。【神喰らう蛇】と対立

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16話。4番隊隊長ギルバートに謝罪される

「ブハッ! 兄者。俺たちに喧嘩を売るとは、コイツ頭がイカれてやがるぜ!」


「Fランク冒険者とは、あなた正気ですか? 世間知らずもここまで来ると、哀れですね」


「ゴタクはいいから、かかってこい」


 【神喰らう蛇】のふたりが、俺の挑発に目の色を変えた。


「おもしれぇ。もう取り返しがつかねぇぞFランク野郎。頭をかち割ってやるぜ!」


「ぷっ! 最強Sランクギルドのメンバーと言っても、相手の実力も見抜けないようじゃ、三流もいいところね。大方、下っ端でしょ?」


 ミリアが噴き出している。


「なんだと、このメスガキ!?」


「おい、ミリア。余計なことを言うな。下がっていろ。リル、ミリアを守ってくれ」


 こいつらの矛先攻がミリアに向かってはマズいので、後ろに下がらせる。


「うん。任せて、あるじ様」


「はい、お兄様! 軽く捻っちゃって」


 リルがミリアの前に出て、庇う姿勢になる。これなら例え魔法が飛んでいっても大丈夫だろう。

 神獣であるリルは、魔法防御も化け物じみている。


「はっ! ソイツは、お前の妹か? ガキだが、いい女じゃねぇか。お前をボコったあと、たっぷりお前の妹で……」


 大男のふざけた口上を、俺は最後まで言わせなかった。

 【世界樹の剣】を一閃させ、男の武器を真っ二つにする。両断されたスレッジハンマーが、ゴトンと大きな音を立てて床に転がった。


「ミリアをどうするって? 最後まで言ってみろ」


 俺が【世界樹の剣】の切っ先を、男の喉元に突きつけると相手は押し黙った。


「なっ……!?」


「きゃあ! さすがはお兄様! 5年前より、ずっと剣の腕を上げているわ!」


「うん。リルも苦戦した。さすがは、あるじ様」


 ミリアとリルが褒めてくれるが、両断は【世界樹の剣】の攻撃力があったればこそだ。


 この剣は攻撃力が高すぎるので、スキル【植物王ドルイドキング】で、ワザと攻撃力の低い剣に変形させて使っていた。

 そうでなければ、衝撃波で相手まで真っ二つにしてしまいかねない。


「こ、この俺がまったく反応できなかっただと? まさか、こんなド田舎にこれ程の剣士が……?」


 大男はゴクリと喉を鳴らした。


「ふっふん! お兄様はね、あなたたちのボス、かの闘神ガインからも剣の腕を認められているのよ! 【神喰らう蛇】の隊長クラスでもない限り、相手になるものですか!」


「不愉快な小娘ですね。いささかハッタリが過ぎるというものですよ!」


 魔法使いの小男が、俺に向かって魔法を放つ。一発一発が致命的な威力を持つ火炎弾が、10発同時に発射された。

 避けたりしたら、ギルドの建物が壊れかねない。


「はぁあああ──ッ!」


 俺は【世界樹の剣】を連続で振って、火炎弾をすべて叩き斬った。火炎弾は消滅、霧散する。


「なっ!? すべて防いだ……?」


 魔法使いの小男は、目を見張った。


「す、すごい! まさに神域の剣技! さすがはアッシュ・ヴォルンド様!」


 受付嬢が歓声を上げた。

 神域の剣技なんて言われると、こそばゆいのだが。俺は剣聖の弟ゼノスに負けた訳だし……


 それに本来なら魔法を発動させる前に、魔法使いを完封できなくてはダメだ。相手の魔法詠唱速度が早くて、つい後手に回ってしまった。

 俺もまだまだだな。


「アッシュ!? アッシュ・ヴォルンド!? まさか、元【神喰らう蛇】一番隊隊長の!?」


「外れスキルを得て追放されたと聞いたが、め、めちゃくちゃ強えじゃねえか!?」


 【神喰らう蛇】のふたりは、顔面蒼白となった。

 だが、小男がさらなる魔法を使おうと小声で詠唱を開始したのを、俺は見逃さなかった。


「マヒクサよ!」


 俺はスキル【植物王ドルイドキング】で、魔法使いの男の背後に、麻痺効果を持つ毒草を出現させた。

 その草をさらにナイフ状に変形させて、男の肩を浅く斬る。


「ぐっ……!?」


 男は糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。


「兄者!? なんだ? 今のは……何をしやがった?」


 大男は訳がわからず、うろたえている。


「【植物召喚】と、【植物の武器化】の合わせ技だな。麻痺毒をその男に食らわせて、無力化させた」

 

 初めての試みだったが、うまくいった。

 剣士の俺にとって、遠距離攻撃の手段が持てるのはありがたいな。スキルは魔法と違って詠唱を必要としないので、機先を制すことができる。


「ま、まさかスキル攻撃だと? 戦闘向きじゃない外れスキルだと聞いていたが……」


「どうする。まだ、やるか?」


「わ、わかった! 俺たちの負けだ! だ、だから、その物騒なのをしまってくれよ」


 大男に泣きそうな目で懇願されて、俺は【世界樹の剣】を鞘に収めた。


「だから言ったじゃない。お兄様に勝とうなんて、身の程知らずも良いところだわ。

 それと地上げ屋みたいなマネをして、暴力を振るって。【銀翼の鷲】は、ずっとこの街の守り手だったのよ? こんなんじゃ【神喰らう蛇】のユースティルアでの活動許可は出せないわね」


 ミリアが腰に手を当てて、男を睨みつける。


「はぁ? なんだとこのガキ。一体、何の権利があって……」


「そのお方は、ユースティルアの領主ミリア様ですよ! 失礼なことをしたら、いくらあなたたちでも、タダではすみませんよ!」


 受付嬢が叫んだ。


「何っ!? 領主!? お兄様だと?」


「アッシュお兄様は、ユースティルア子爵家の養子となったの。お兄様に喧嘩を売るということは、ユースティルア子爵家に喧嘩を売るということ。ひいてはルシタニア王国に対する反逆だわ!」


 腕組みをするミリアに、大男は顎が外れそうなほど驚いていた。


「……い、いや、さすがにそれは。すみません。ミ、ミリア様にアッシュ様、お、俺たち……頭に血が上っていたみたいです」


 大男は慌てて平伏する。


「それじゃ、このギルドの修理代と、怪我をさせた冒険者たちの治療費、慰謝料を払ってもらうわよ?

 あなたたちの乱暴狼藉は、私がしっかりこの目で見させてもらったわ。罪を償わずに、この街で活動できるなんて、思わないことね」


「くぅっ……」


 ミリアに追求されて、男は二の句が継げなくなっている。必死に頭を回転させて、なんとか反論しようとしているようだった。


「し、しかし……俺たちはエリクサーを台無しにされた被害者……」


「イヤイヤ、これは申し訳ございませんでした。ミリア・ユースティルア様。それに、アッシュ様。大変な行き違いがあったようで……なにとぞ、お許しください」


 その時、ギルドの入口から、にこやかな口調で入ってくる男がいた。

 三十代半ばほどの細見のその男は、【神喰らう蛇】の4番隊隊長ギルバート。俺の剣の師匠でもあった男だった。

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