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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
3章。【神喰らう蛇】と対立

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12話。究極の霊薬エリクサーの調合

 ふう、なんとか休戦に持ち込めたぞ。これで、ようやく食事が楽しめるな。


 コレットとミリアの怒りのボルテージが下るのを確認して、俺はパンに手を伸ばす。チーズを挟んで食べると、絶品だった。


「あるじ様、い、一緒に寝る……」


 リルが俺の膝の上で、ウトウトしだした。

 食べて眠くなったら、すぐに夢に直行とは、まるで子供みたいだな。問題児だけど、寝顔はかわいい。


「ミリア様、折り入ってお願いがあるのですが……」 


 コレットが襟を正して、ミリアに語りかけた。


「何かしら?」


「この街に使われていない創薬室は、ございませんか? わたくしはエリクサーを作りたいと思います」


 その一言に、俺とミリアは驚愕した。

 エリクサーは怪我だけでなく、いかなる病気や状態異常バットステータスも治すと言われている究極の霊薬だ。


 その調合方法は大昔に失われており、入手難易度Sランクに指定されている。ごく稀にダンジョンや遺跡で発見されると、金持ちや王侯貴族がオークションで大金を叩いて買い求めた。

 俺も実物を拝んだことは数える程しかない。


「エルフ王家にはエリクサーの調合方法が伝わっているのです。せめてもの罪滅ぼしに、エリクサーを提供させてください」


「エリクサーを売れば、すさまじい大金になるぞ……」


 コレットが提案したいこととは、このことだったのか。

 街はグリフォンの襲撃で、火災が起きてひどい有り様になっていた。その復興に大いに役立つだろう。

  

「はい。エリクサーの材料は、ご主人様が召喚できるエリクサー草をはじめとする各種薬草です。経費ゼロで、作ることができます」


「そ、そんなことができれば、この街は一気に潤うわ!」


 ミリアは身体を震わせた。


「ミリア様のお父様は、ご病気だとお聞きしました。わたくしのエリクサーで癒やして差し上げることができます」


「ホント!?」


 万能薬であるエリクサーなら、どんな病気でも治すことができる。

 俺の副隊長だったサーシャの妹も救えるかも知れないな。降って湧いた幸運に、俺も興奮気味になった。


「わたくしは薬師のスキル【創薬S】を持っています。本来ならエリクサーの調合には長い工程がかかる上に、失敗することもあるのですが。一週間でひとつ、確実に完成させることができます」


 それはすごい。


「コレット。良かったら、俺にもエリクサーをひとつくれないか?」


「もちろんです、ご主人様! いくらでもご主人様のためにお作りいたします。わたくしのすべては、ご主人様のモノですから!」


 コレットはパッと笑顔になる。


「ご主人様の【植物王ドルイドキング】とわたくしの【創薬S】は、相性抜群です! まさに、わたくしたちは夫婦となるために生まれてきたのだと思います!」


「いや、それは多分、偶然だと思うが……」


「でも、エリクサーの調合方法は秘中の秘です。できれば、作業中の創薬室には誰も近づけないでいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


 コレットがミリアに尋ねた。

 なるほどな。このために人々が大勢集まっていた場では、罪滅ぼしの具体的な方法について言葉を濁していたのか。


 エリクサーの調合方法は、エリクサーそのものより価値が高い。

 コレットを捕えて拷問してでも聞き出したい人間がいるだろう。


「わかったわ。そんな技術を盗んだりしたら、それこそエルフを完全に敵に回すかも知れないものね。あなたがエリクサーを作れることは秘密にします。

 作業中は信頼できる騎士たちに護衛させるわね」


「ありがとうございます!」


「エルフの捕虜たちの身柄についても危険が及ばないように、努めさせていただくわ。安心してちょうだい」


 ミリアが胸を叩いた。


 

 その夜──俺は寝室のベッドで、ふたりの美少女に身体を密着されて、目がギンギンに冴えてしまっていた。


「ミリアさん、少し遠慮してください。ご主人様が困っているじゃないですか!?」


「あなたこそ、慎みってものがないの!?」


 コレットとミリアが、俺を挟んで口論している。

 両手に花の状態だが、胃に穴が空きそうで、ちっともうれしくなかった。

 宴の時は、仲良くなれそうな感じだったのにな……


「あるじ様!」


 リルが俺の上に飛び込んできて、ボディプレスを食らわせてきた。


「ごはっ! ゲホッ!?」


 すさまじい衝撃を胸に食らって、息が詰まった。

 リルはさっき眠ったおかげか、元気いっぱいだ。


「ああっ! そんな抜け駆けを!?」


「リルさん、ご主人様の上から、離れてください!」


「嫌だ!」


 リルを俺から引き離そうと、コレットとミリアが奮闘する。しかし、パワーでは圧倒的にリルが上であり、リルは俺にしがみついて離れない。

 そして、パワーでかなわないのは俺も同じだった。


「リル、痛いって! マジで! ギブ、ギブッ!」


「ご主様が!? いけません、わたくしが回復魔法で癒します! 服を脱いでください!」


「コレット王女、どさくさに紛れて、何をしようとしているのよ!?」


「ちょっとぉおお! かんべんしてくれぇ! 俺は休みたいんだよ!」


 そんなこんなで、夜はふけていった。


「マジで疲れた……やっと眠ってくれたか」


 やがて3人娘たちは、クークー寝息を立て始めた。

 俺はスキル【植物王ドルイドキング】で、睡眠薬の材料となる植物ネムネム草をベッドの下に召喚していた。

 この花の香りを嗅ぐと、人は眠くなる。

 コレットたちには、これでダウンしてもらった。


 同時に俺は【植物王ドルイドキング】Lv3の能力『植物の効果無効化』を発動させていた。

 故にネムネム草の効果は、俺には及ばない。


 俺は3人娘たちを起こさないように、そっと立ち上がる。ソファに身を横たえると、毛布を被った。

 悪いが結婚もしてない女の子と一緒に寝るなんてことはできない。もし間違いがあったら困るからな。


 『植物の効果無効化』の能力をカットする。すぐに睡魔が襲ってきた。


 これから毎日こんなことが続くと、思うとたまらないな。俺は暗鬱な気分になりながら、夢の中に落ちていった。

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