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最強ギルドを追放された《植物王》、実は世界樹に選ばれていたので植物の力で無双します  作者: こはるんるん
3章。【神喰らう蛇】と対立

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11話。戦勝の宴

「お兄様の歓迎と、戦勝を兼ねた宴です。どうか遠慮なく楽しんでくださいね!」


 ユースティルアの領主ミリアが、溢れんばかりの笑顔で告げる。

 目の前のテーブルには、竈から出されたばかりのこんがり焼けたパンが、編みカゴにいくつも盛られていた。

 肉汁の滴る分厚いステーキに、色とりどり野菜サラダ、みずみずしい果物が食卓を彩っている。


「ぉおおおおっ! やったぁ!」


 大興奮のリルがテーブルマナーもへったくれもなく、料理に片っ端から喰らいつく。

 給仕役のメイドたちが、呆気に取られていた。


 リルは浮浪者のような格好をしていたので、ミリアがエプロンドレスのメイド服を着せていた。

 この格好で『あるじ様』とか言われると、グッと来るモノがあるな……って、そんな場合じゃない。


「リルぅ! せめて椅子に座ったまま、ナイフとフォークを使って食え! 手づかみで、俺のステーキまで食べるじゃない!」


 リルが俺の分の肉料理まで、ヒョイっと口に入れてしまったので、慌てて注意する。


「ふぇ?」


 リルは意味がわからず、目を瞬かせた。

 

「……ちょ、ちょっと驚いたけど、まあ、良いわ。今夜は無礼講よ。リルさんのおかげで、隠れていたエルフたちを捕らえることができた訳だものね。あなたには、感謝しているわ!」


 ミリアが鷹揚に笑う。

 よかった。ふつうなら、この場から叩き出されてもおかしくない。

 リルには事前に、食事は手づかみで食べないように言い含めていたが、即席でマナーを身に着けさせるのは、やはり無理だった。


「ありがとうミリア。この娘はちょっと、特殊な生い立ちで……根は悪い奴じゃないんで、仲良くしてやってくれ」


「はいっ、お兄様のパーティメンバーなら当然です。それよりお兄様、今夜は久しぶりに……お、お、同じベッドで休みませんか? お兄様とお話したいことが、いっぱいあるんです!」


「ブッ!? いや、もう子供じゃないんだから、無理!」


 思わず料理を喉に詰まらせそうになった。

 ミリアは顔を赤く染めている。そんな目で見られたら、意識してしまうでしょうが。


「ミリアさん、『妹』としてアッシュ様に甘えたい気持ちはわかります。でも、ご主人様には、エルフ王として、わたくしとの間に世継ぎを作るという大事な使命があるのです。どうか、ご遠慮くださいませ」


 コレットが優雅に料理を口に運びながら冷たく告げる。凛とした絵になる姿だった。さすがはエルフの王女といったところか。

 言っていることは、相変わらずおかしいが……


「コレット王女、お兄様はエルフ王になるつもりはないと、何度もおっしゃっているわよ? 人の話を聞いていないのかしら? それにお兄様は、ずっと昔から、私の私だけのお兄様なんだからぁ!」


 ミリアは感情的になって立ち上がる。


「ユースティルアにご滞在中は、お兄様は私と同室。同衾! これは領主権限による決定だわ!」


「おい、待て! 同室はまだわかるが、同衾ってなんだ!?」


 俺は慌ててツッコミを入れた。


「……そ、それはもちろん、お兄様と愛を確かめたいということです」


「それなら、わたくしもご主人様と同室とさせていただきたいと思います!」


 コレットが怒気をみなぎらせた。


「ちょ、ちょっと! 何の権利があってそんなことを言うのよ、あなたは?」


「権利ではなく、義務です! ご主人様はエルフ王となられるお方、わたくしはご主人様にお仕えする者として、その身をお守りする使命があります! 就寝中は、もっとも無防備となる時。ならわたくしも同じベッドで休んで、ご主人様をお守りするのが、道理です!」


「そんな道理があるか!? 逆に身の危険を感じるから、やめろ!」


「うん? みんなで一緒に寝る。リルもあるじ様と一緒に寝る! 楽しい!」


 リルが無邪気に俺に抱き着いてきた。そのまま、俺の膝の上にちょこんと座る。


「ああっ! 私の特等席が!」


 ミリアが頭を掻きむしった。


「くっ……リルさんも侮れません」


「リル、あるじ様の匂い好き。あるじ様は、あるじ様の匂いがする!」


「匂い?」


 そう言えば初めて会った時も、そんなことを言っていたな。

 神獣フェンリルの元々の主人と言えば悪神ロキだ。ロキは世界樹の根元に湧く泉の水を飲んで、強大な力を手に入れたという。

 そのロキと、俺が同じ匂いをしているのか。


「リル、ずっと暗いところに一人ぼっちだった。あるじ様に会えて、うれしい」


 リルは両足をパタパタと振る。行儀が悪いが怒る気にはなれなかった。

 考えてみたら、この娘は2000年近くも神々に封印されてきたんだな。


「……リル」


 頭を撫でてやると、リルはうれしそう目を細めた。


「リル、お腹が膨れてきて、苦しい。服、脱いじゃって良い?」


「だぁああああ!? それは絶対にやめろ!」


 リルがメイド服を脱ごうとしだしたので、慌てて阻止する。メイド服が複雑な構造になっていて、簡単に脱げなくて助かった。

 給仕役のメイドたちも含めて、全員が絶句している。


「ちょっと、あなた本気!?」


「うん。お腹いっぱいになったから。リル、あるじ様と一緒に眠る」


「と、とりあえず! リルもこう言っているし、今夜は4人で一緒に寝るということで……どうだ?」


 火に油というか、新たな火種がぶち込まれそうになったので、俺は妥協案を出した。

 美少女と3人と一緒に寝るなんて、想像しただけで、鼻血が出てきてしまいそうだが……

 おそらくこう言うしか、この場を収めることはできないだろう。


 それに俺は秘策を考えていた。この手を使えば、彼女らと同じベッドで寝なくて済むハズだ。

 悪いが、お前たちの思い通りにはならないぞ。


「「ご主人様(お兄様)がそうおっしゃるのであれば……!」」


「わ~い! みんなで一緒に寝る!」


 コレットとミリアが、お互いを睨みながら、同意した。

 リルは無邪気に喜んでいた。

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