第27話 カケルの告白、謝罪、呼びかけ
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「どうもカケルです。
この動画をご覧いただきありがとうございます。この先に進む前に、皆様にお伝えしておきたいことがあります。もしこの動画が、カケルチャンネルで初めて観る動画だった場合、できれば一度閉じていただいて、他の動画を観ることをオススメします。一度、カケルについて知っていただきたいなと思います。
また、今回家族のことを話すにあたって、正直楽しい内容だけではありません。むしろ、観る人やそのときの体調によっては気分を害する可能性もあります。もしそうなりそうなときは、すぐに再生停止してください。
なお、この動画は広告をつけておりません。ネットニュースさんに取り上げていただいても構いませんが、発言内容を変えることなく、正確に伝えていただきたいです。普段、どれだけテキトーな記事を書かれても僕は怒らないのですが、今回は真面目なのですみません。
2年前の4月24日、僕は妹を失くしました。彼女は僕よりちょうど一回り年下なので、当時12歳、小学校6年生でした。亡くなった原因は交通事故です。
そもそもなぜこういうことを話すことにしたかと言うと、理由は主に2つあります。
1つめの理由は、インタビューやイベントなどで嘘をつき続けるのが苦しくなったことです。僕は弟のリョータがずっとスタッフとして関わっていたため、きょうだいや家族について聞かれることが多く、妹のプライバシーを侵害しない範囲で話していました。妹が亡くなったあと、すぐに皆さんに伝えられたら良かったのですが、当時の僕は実はとても精神的にキテいて、正直本当のことを話す心の強さがありませんでした。嘘をついてしまい、ファンの皆さんには申し訳なく思っています。
2つめの理由は、弟・リョータに関係することです。これは後ほど詳しく説明したいと思います。
さて、妹の事故に話を戻しますが、2年前の4月24日と聞いて、熱心なファンの方だとピントきたかもしれません。カケルチャンネルのイベント『カケルFES』があった日です。このイベントはカケルチャンネルのひとつの節目的なイベントで、バズマジの仲間たちにもたくさん出演してもらっていました。
当然、自分も出ることになったんですが、普通に出るだけだとつまらない……ということで、弟・リョータを引っ張り出して、兄弟共演的な打ち出し方をしたんです。ファンの方は知ってると思うんですが、リョータは裏方志向の強い人間で、自分から進んで前に出るタイプではありません。目立ちたがりの自分とは正反対なんですが、だからこそリョータを引っ張り出したら絶対ファンのみんなが喜んでくれると思いました。最初は難色を示していたリョータも、何度も頼むと出てくれることになりました。
そして、イベント当日。本番直前に、母親から電話がきました。こんなタイミングでかけてきてどうしたんだろうと思って出たら、妹が事故にあったから、今すぐ病院に来られないかと言われました。母親はかなり狼狽しており、すすり泣いているのがわかりました。後から聞いた話では、そのとき、妹の心臓はまだ動いていたそうです。
突然の出来事に僕は頭が真っ白になり、血の気がどんどん引いていくのを感じました。反射的にリョータにも伝えようと思ったそのとき、自分は「もしこのままふたりが病院に行けば、イベントはどうなるんだろう」と思いました。
僕は常々、ファンのみんなのことを「家族」と呼んでいます。生きていればみんなそれぞれ辛いことがあるけど、カケルチャンネルを観て笑い飛ばせば次の日も頑張ろうと思える、そんな、みんなにとっての帰る場所になりたい……そういう願いが込められています。だからこそ、思ったんです。ファンのみんなを裏切ることはできないと。
結果、僕は自分がどうすべきなのかわからなくなりました。そして、そうやって決断できないうちに、スタッフに出番を告げられ、イベント本番が始まりました。幸いにも盛り上がったようですが、正直イベント中のことは覚えていません。イベントが終わったあと、リョータにも事故のことが伝わり、僕たちは別々のタクシーに飛び乗って病院に急ぎました。
僕たちが病院に着いたときには亡くなって5時間近くが経過していました。3きょうだいの中でも一番年下の妹が、もうこの世の人ではない……その事実が現実と受け止められず、ただただ信じられなかったことを覚えています。
さて、話が長くなりましたが、僕がこの動画を出すことになった2つ目の理由は、弟・リョータです。母さんから電話をもらったとき、妹の心臓はたしかにまだ動いていました。だから、リョータはもしそのときすぐに病院に向かっていれば、死に目に会えると思ったようです。実際、リョータは僕に掴みかかって、「お前のせいで姫花の死に目に会えなかったじゃないか!!」と怒鳴られ、殴られました。
でも、この話には続きがあります。たしかに、電話のとき、妹の心臓はまだ動いていました。ですが、イベントが始まった頃には、完全に動かなくなっていたんです。つまり、イベント出演をキャンセルして病院に向かっても、間に合うことはなかったんです。リョータはそれを知らないようでした。
だから、殴られているとき、そのことを伝えようとしました。でも、言えませんでした。リョータがものすごい剣幕で怒っていたんです。そりゃそうです。僕が伝えなかったせいで、大切な妹の死に目に会えなかったと思っているのですから。
でも一方で、すぐに決断をくだせなかった自分自身にショックを受ける気持ちもありました。たしかにイベントは大事です。楽しみにしてくれていたファンの皆さんの気持ちを思うと、テキトーに扱っていいはずがありません。
ですが、それでも僕が妹に一秒でもはやく会いに行くことを優先すべきでした。もしファンの人を一時的に悲しませることになっても、理由を話せばわかってくれるに決まってるのですから。僕のファンは、本当に素敵な人たちばかりです。僕自身の幸せを自分のことように願ってくれています。僕の判断は結果的に、両親やリョータだけでなく、ファンの皆さんも裏切るモノだったと思います。
そう思うと、リョータには余計に言い出せませんでした。そして、家族より仕事を優先してしまった自分が葬式に行く資格はないと思いました。リョータに顔を合わせていいワケがないと思ったんです。ですので、先日行なわれた三回忌にも、実は僕は行っていません。
この一件を機に、リョータはカケルチャンネルを抜けました。もともと動画に頻繁に出ていたワケじゃないので、皆さんが気づいたのはもう少し後だと思いますが、イベント翌日にはリョータはカケルチャンネルから外れています。
ネットでは僕とリョータの不仲説がよく話題にあがっています。ファンの人からDMで聞かれることも多いです。正直に言って事実です。ですが、ずっと不仲でいいと思っていたワケではありません。残された兄弟で仲良くしたいという気持ちはとても強かったです。でも、リョータが僕のLINEをブロックしている状況ではそれも難しい。だから、まずは時間を置こうと思いました。
しかし、リョータは先日、僕に知らせずに事務所を辞めていました。もう、ちゃんと真実を全部伝えるしかないと思いました。それで、YouTuberらしく、YouTubeで話すことにしたんです。
……ここからは、僕からリョータへの、兄から弟へのメッセージです。
リョータ。お兄ちゃんが悪かった。ぜんぶ謝るから、帰って来てほしい。また一緒にカケルチャンネルで頑張らないか? 面白い動画を作らないか?
ご視聴いただき、ありがとうございました。今後とも、カケルチャンネルの応援をよろしくお願いします」
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