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【完結】親によってヤクザに売られた俺は、いつしか若頭になっていた。  作者: 松竹梅竹松
第5章

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第5章 第5話 ご縁

「藍羽ちゃん退院おめでとう!」

「ありがとう結愛ちゃん。……ところでなんでこーくんはブスっとしてるの?」

「……別に。退院おめでとう」



 結愛の下に就くことをやめたその翌日の夜。タイミングがいいのか悪いのか藍羽の退院祝いのためにさっそく顔を合わしていた。昨日あんなことがあったばかりだ。正直居心地はよくない。説明するのも嫌でとりあえずお祝いの言葉だけ述べると、隣の舞が藍羽に事情を説明する。



「若様とお嬢は喧嘩中のようです」

「へー喧嘩。でもこーくんって結愛ちゃんに逆らえないんじゃないの? ヤクザの親分子分みたいな感じで」


「実態としてはそれに近いのですが若様とお嬢の間に盃は交わされていません。なのでヤクザ的には特に問題はありません。ですが今日も朝から学校に行く行かないですごい言い争っていまして……若様は学校に行かせたいのですがお嬢はそんな場合ではないと……」

「だって決戦の日は近いのよ。学校で遊んでいる場合ではないわ」



 なにが決戦だ。結愛はヤクザの事情なんか気にせずただ学生生活を謳歌していればいいんだ。なのに結局事務所に行って作戦会議……自分からヤクザの世界に入ってどうするんだ。



「まぁこんなわからずやのことは気にせず今日ははしゃぎましょう。病院の中は退屈だったでしょう?」

「勝手なこと言うな。ここははしゃぐような店じゃないんだよ」



 俺が会場に選んだのは、ヤクザ同士の密会にも使われる高級料亭。密談には最適だが、子どものようにはしゃがれては俺のメンツに関わる。



「だったら普通のファミレスにすればよかったじゃない。私一度行ってみたかったのだけれど」

「決戦の日は近いんだぞ。そんな公共性の高い場所にいられるか」


「あなた言ってることがさっきと違うじゃない!」

「それはこっちの台詞だ」


「あー……こりゃ重症だね。二人の喧嘩って珍しいの?」

「舞がこの世界に入ってからは初めて見ます。正直今でも信じられません。あの若様がお嬢のやることをこれほど否定するなんて」



 ……舞が来て初めてじゃない。5年間の中で、これが初めてだ。俺と結愛の関係にこんなに亀裂が入るのは。ていうか喧嘩って言わないでほしいんだが。



「それで、喧嘩の理由は?」

「なんというか……お二人とも行き着くところは同じです。若様はお嬢にカタギになってほしい、裏切ったとはいえ大切な存在だった龍華さんを二重スパイにするようなことはしてほしくないと思っています」



 そう言い終わった後、舞は正面に座る結愛の顔をちらりと見てから話しを続ける。



「対してお嬢は若様に負い目があります。これはお嬢が打ち明けてくれたのですが、今回戦争を仕掛けたのは龍華さんを御しきれなかったお嬢自身。でも実際に動いたのは若様……どころかお嬢は勝手にメンタルを削って若様に負担をかけていました。その結果若様は目の前で親友を傷つけられ、ご両親との決定的な仲違いのきっかけを作ってしまった。これ以上若様が傷つくくらいなら自分が傷つくと非情になる決断をしたのです。つまりお互いがお互いを大切に思っているからこその喧嘩というわけですね」



 舞に他人を気遣った作り話をする頭はない。つまりこの話は本当……何より、恥ずかしそうに目を背けている結愛の表情を見ればこの話が事実だということは明らかだった。



「……昨日俺に言ってた話とずいぶん違うな……。そんなこと思わなくていいのに……」

「……どうせ光輝はそういうこと言うでしょ。だから話せなかった……ていうか舞……内緒にしておいてって言ったじゃない……」

「舞は若様に嘘をつくわけにはいかないので。そういう愚痴を話したいのなら、龍華さんにしてください」



 どうしよう……結愛の顔が見れない。でも……だとしても答えは変わらない。



「結愛、俺のことは気にしなくていい。だから自分のやりたいことをやってくれよ」

「光輝だってやりたいことをやりなさいよ……いつまでも私のことばかり考えてないで……。あなただってヤクザなんてやりたくないでしょ……? 今まで助けてもらった分、今回だけは私ががんばるから……」



 やはり話は平行線。論理的に話そうが、感情的になろうが。お互いがお互いを譲ることはできない。その俺たちの様子に藍羽がため息をついた。



「はぁ……。高城さん、どうにかできないの? ずっと二人と一緒にいたんでしょ?」

「いえ舞には……。舞の一番は若様ですが、若様の一番はお嬢です。それは悔しいとも思えないくらいに絶対的な関係。お二人はお互いを支えにしながら、この裏社会を5年間生きてきました。人生の三分の一もの時間です。その関係性に舞が割り込むなんてとても……」

「ふぅん。こーくんとの未来に邪魔だと思ってたけど、見込み違いだったかな」



 一歩引いた舞の発言に軽く嘲笑すると、藍羽はスマホを取り出した。



「わたしはわたしを譲らない。こーくんの一番はわたしだよ。だからわたしが、こーくんを助けてあげる」

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