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【完結】親によってヤクザに売られた俺は、いつしか若頭になっていた。  作者: 松竹梅竹松
第4章

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第4章 第2話 カチコミ

「……今回に関してはお前に任せるつもりだけどさ。さすがに無鉄砲すぎないか?」



 龍華が俺を刺した事件。その始末を自分で付けると言った結愛が起こした最初の行動は、論馬組にカチコミをかけることだった。



「安心して、ただお話するだけよ。それに何が起きてもあなたたちが助けてくれるもの。何の心配もいらないわ」



 結愛はあくまで組長の娘。ヤクザとして自分の部下を持っているわけではない。だが正式な勢力ではないが、結愛派と呼ばれる人間が三人いる。若い頃暴れ回り手が付けられないということで結愛の世話係になった皆川さん。結愛に買われた俺。そして俺の子分の舞。たったの三人だが、内二人だけで余裕で一つの組くらいは余裕で壊滅させられるだけの戦力はあるし、俺は一応若頭だ。そんな三人を引き連れて事務所に行くなんて、宣戦布告としか思われなさそうだが。なんだか不安だな……。



「ごめんくださーい。鎧波でーす」



 だがその不安は一気に現実へと変わる。不用心にも結愛は事務所のシャッターを叩き自己紹介を始めたのだ。



「なんじゃカチコミかゴラァァァァ!」



 やはりというか当然というか。中から三人の男がバールのようなものを手に飛び出してきた。



「おい不用心すぎだぞ結愛……!」

「大丈夫よ。あの、鎧波組組長の娘の鎧波結愛と言います。組長さんか若頭さんはいらっしゃいますか? お話し合いに来たんですけれども」

「あぁ!? いきなり来て親父に会わせろだぁ!? 舐めてんじゃねぇぞゴラァ!」



 まぁ舐められてるとしか思えないよなぁ……それか本気で喧嘩売ってるか。いきなり敵対組織の奴が乗り込んでくるなんてありえない展開だろう。



「結愛、さすがに考えなしすぎだ。一度帰って……」

「ただで帰すと思ってんのか? 会わせてやるよカシラに。ボコボコにした上でぐおぉ!?」

「おいお嬢に汚い手で触れようとしてんじゃねぇよ」



 男の一人が結愛に掴みかかろうとした瞬間、そいつの腹に皆川さんの拳がめり込んだ。



「皆川さんこっちから手を出すのは……」

「だったか男のガキの方からぶふぉ!?」

「若様に近寄らないでいただけますか?」



 別の男が俺に殴りかかろうとすると、そいつの顔に舞のローファーが突き刺さった。まったく……これじゃ先にうちが喧嘩売ったように見えるじゃないか。俺がフォローしないと……。



「なぁあんた。これは正当防衛だ。わかってるよな?」

「ふ、ふざけんな! 俺たちは手は出しちゃいねぇ! 先に殴って蹴ってきたのはそっちだろ!? 監視カメラにも映ってる!」



 最後に残った一人に確認してみると、そんな答えが返ってきた。まぁ事実としてそうなんだが、そんな不都合な事実はなかったことにしてしまえばいい。



「あぁ確かに監視カメラを見ればそうだな。でもいいのか? 仲間に……若頭に映像を見られて。結愛は言ってたよな、話し合いに来たって。何の話か聞いたのか? 白旗を上げに来たのかもしれない。だがお前らが話も聞かずに殴りかかってきたせいでその予定もパーになった……かもしれない。せっかく? そっちに都合がいい条件で? 和解しに来たっていうのに? お前らの独断でその可能性が潰えたんだ。俺がそっちの若頭だったとしたら、そんな勝手なことをしでかした連中を生かすような真似はしない。で、監視カメラ見に行くんだっけ? それともここでは何も起きなかったことにして、俺たちを案内するか?」



 答えは確認するまでもない。その怯えた表情を見れば結果は明らかだ。



「ね、言ったでしょ? 大丈夫だって。私には頼りになるみんながついているもの。何も怖いことはないわ」



 そうドヤ顔で誇ってみせる結愛。舞と皆川さんという武闘派で敵を蹴散らし、脅迫が得意な俺に後始末をさせる。俺たちの特技を見事に使いこなし、交渉の場を用意させた。



 今まで結愛をこういう現場から遠ざけてきたが……どうやら本当に才能があるらしい。誰よりも、ヤクザの才能が。

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