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サバイバル  作者: 清 涼
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第十五章(五の2)


「これで全てそろった。あとはこれらを聖なる場所へ納めるのみ」

「聖なる場所?」

「そなたも見たのであろう? 聖なる地へ赴いたのではなかったのか?」

「えっ!?」


思わず絶句してしまった司はシンラの何もかも見通したようなその目をじっと見つめていたが、突然何かに吸い込まれそうになって目をそらせた。

が、とたんに息苦しくなる。


 何なんだ・・・ これ・・・


何かに押し潰されそうになるような、しかし、何かを背負ってしまったような責任と重圧が自分を取り巻いているような感覚だ。

目の前にいるシンラが自分に何かを架せようとしているのだろうか。それは何の使命なのだろうか。聖なる地でサーベル・タイガーが自分に言った言葉が甦る。

司は何かをおそれるようにシンラを見つめていた。

突然、シンラが何かを感じたようだ。

「誰か来るぞ、その石をしまえっ」

気配を感じて目付きが鋭くなる。司は慌てて3つの石をポケットにしまった。

ガタガタっと扉が開かれ、ヤニ族の男が中の様子を伺い、座っている司と目が合うと、すぐに首を引っ込め扉を閉じた。

しばらくして扉が開き、、鋭いやりを持った男が二人入って来た。そして、司とシンラの喉元にその槍の先を突き付けた。

だが二人はその槍先より、その後に入って来た大男に冷めた視線を送った。

入って来たのは鼻筋の黄色い族長だった。

まずちらっとシンラに視線を送ると、そのまま司の前で腰を落とした。そして、大きな目でギョロっと見定めるように見た。

思わずゾクっとして息を呑んだ。

自分を見つめながらクンクンと動物のように鼻を動かしている。そのとたん司は蛇に睨まれた蛙のように動く事が出来なくなってしまった。

怪我をした右手を取られ、手の平を広げられた。

あれから4日経っていたが、司自身の治癒力がほとんどなかったのだろう。大きなかさぶたが出来ていた。それを剥がせば再び血が流れそうだ。

その傷跡を見ながら族長がにんまりと笑った。

その時、まるで牙のような白い歯が二本見えた。

思わず顔を背けると、瞬間手の平に激痛が走った。

「あっ ・・ っつうっ・・・」

見れば自分の手が大男の歯に噛み付かれていた。しかし、それ以上に噛み砕かれる事はなかったが、その口の中でざらついた舌が流れ出た血をめ回しているのが分かる。


 あっ・・・ ああっ ・・・


余りの恐怖に悲鳴さえ上げる事が出来ず、全身が小刻みに震える。

向方でシンラが何か言っているが、何を言っているか聴こえない。ただ、バクバクという心臓の音が耳の奥で響き、両目を見開いたまま焦点が合わなくなっていく。

その内に手を離され何かを飲まされたが、拒む事さえ出来ず、喉の奥から体内へと注がれると、次第に頭の中がぼんやりと霞んで行くような感覚におちいってしまった。





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