第十三章(三の2)
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っ!?
はぁっ はぁっ はぁっ ・・・
ガバっと起き上がると、額から滲み出た汗を拭った。
首筋にもじわっとまとわりつくように汗が滲み出ている。
「嫌な夢だ」
秀也は呟くとベッドを下りてタバコを探した。
暗がりの中、何とか落ち着かせようと火をつけて吸ったが、思うように手が動かない。
自分の指先が震えている事に気がついた。そして、次の瞬間何かに急き立てられるように息苦しくなってしまった。
司っ!?
思わず目を閉じたが、先ほど見た夢が甦りそうになってすぐに目を開けた。
あのアマゾンで生き別れになった場所
メンバー全員が橋を渡り終えた時、橋が崩れてしまった。
茫然と立ち尽くす中、左右に首を動かしたが、司の姿だけない。
『司っっ!!』
隣にいた晃一が絶叫した。
見れば、崩れ落ちた橋の向こう側のジャングルの中から司が何かに追われるように飛び出して来たが、次の瞬間その背後から飛び出して来た植物に、その体を絡み取られると、引き込まれるように再びジャングルの中に吸い込まれて行ったのだ。
『司っっ!!』
秀也も大声で司を呼んだが、必死になってもがいている司には届かない。
『秀也ぁぁっっ!!』
司の叫び声だけが聞こえ、巨大な植物と共に司の姿は完全に見えなくなってしまった。
泣き叫ぶ秀也に追い討ちをかけるように、紀伊也の無情の声が聞こえた。
『諦めろ秀也、司はもう帰って来ない』
はぁ はぁ はぁ
再び呼吸を整えるとタバコをくわえた。
震える唇で吸うと、無理矢理落ち着かせようとゆっくり煙を吐いた。
「司、頼むから帰って来てくれよ」
どうしようもない不安に駆られたが、秀也はそう呟くと暗い窓の外を見つめた。




