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サバイバル  作者: 清 涼
79/150

第十二章(ニの2)

・・・ ん ・・・ っく ・・・


ふと意識が戻った。

気が付くと全身を滝のような雨に打たれている。

「スコールだ」

体全身が水を欲していた司は思わずホッと息を吐いた。

が、次の瞬間、物凄い殺気を間近に感じて顔を上げると両目を見開いた。

グワっと大きな口を開けたアナコンダが襲い掛かって来たのだ。


 うわぁぁぁっっっ!!


絶叫と共に、頭を柱に打ち付けた。だが、それ以上の身動きが取れない。

アナコンダは再び口を閉じて体を縮ませた。

そして、シューっ シューっ と赤い舌を出してじっと司を見据えた。

どこからどう責めようか、その三角の頭を突き出しては引っ込ませている。

背筋には雨とは別のじっとりした液体がいくつも流れ落ちる。

一瞬、自分が冷酷な能力者狩りのタランチュラである事を忘れていた。

目の前のアナコンダにただ恐怖を覚えていた。それは、太古の森でヴァンパイア・ウルフに遭った時と同じだった。

しかし、今は逃げようにも身動き一つ出来ないように縛られている。頼りの右手首に巻かれたブレスレットも役に立たなかった。

辛うじて動くのは首だけで、少しでも遠ざかる為に、頭を柱に食い込ませるように付ける事しか出来なかった。


 グワァっっっ


再び真っ赤な口を開けて襲い掛かって来る。

思わず目を閉じた。

赤い舌先が鼻をかすめる。

ゾクッとした瞬間に心臓が大きな音を一つ打った。と、同時に全身に悪寒が走り、電流でも流れたかのようにビクンと震えた。

ドクン ドクン と自分の心臓の音が大きな音を立てているのが分かる。

はぁ はぁ と吐く息も荒くなって行く。だが、そんな事に構っている余裕はない。

シューっ  シューっ その音が激しさを増し、アナコンダが苛立っているのが分かる。 

一口に呑み込もうにも自分の口より長い柱がそれを阻んでいるのだ。しかし、諦める事なく目の前の獲物に向かって シューっ シューっ と大きな音を出して舌を出し続けている。

アナコンダが少し後ずさりした。

勢いをつけて一気に呑み込むつもりなのだろうか。さらに凄まじい殺気を辺りにき散らす。

それと共に、雨粒の勢いも増して来る。


 ザザザーーーっっっ・・・・


激しい雨音と雷鳴に晃一達の悲痛な叫び声がき消されていた。

 

 はぁっ はぁっ ・・・


締め付けられていく左胸と目の前に迫るアナコンダの赤い舌に、司は自分がしなければならない使命を全て忘れていた。

アナコンダが構えた時、自分の心臓がこのまま止まってしまうのではないかという位に息を呑んだ。


 グワワァァァっっっーーー

 司ぁぁぁっっっーーー!!


「秀也ぁぁっっ!!」


悲鳴が錯誤した次の瞬間、体に物凄い衝撃を感じると、目の前が陰に覆われた。

ググっと更に強く全身を縛り付けられる。

苦しくてあえぐように見上げると、アナコンダの体が柱ごと巻き付き、その尖った頭が柱の先から真っ直ぐに司を見下ろしている。

今度は上から呑み込もうというのか。

あの時アナコンダに巻かれたアマゾネスの骨が砕けたように、自分の体も砕けてしまうのか、締め付けられる全身がきしんで行くようだった。

それ以上の悲鳴を上げる事さえ出来ない程息苦しく、ただ奥歯を噛み締め、耐えるしかなかった。

さらに大粒の豪雨が叩き付けるように降って来る。


晃一は目の前で起こった事に生きた心地がしなかった。

アナコンダが物凄い勢いで司に襲い掛かり、柱に登りながらその巨体を巻き付けたのだ。あっという間に司の体が見えなくなり、その顔もうねる黒い体から時々覗かせているだけだった。


 司ぁぁぁっっっ!!


晃一は狂ったように格子をガシガシ揺らしながら叫んでいた。

それをスタッフは両脇から晃一を抱き抱え、格子が壊れないよう引き離そうと躍起やっきになっていた。

誰もが必死だった。


 ピカっ ドドーーンっっ・・・


稲妻が走り、雷鳴が響いた。

柱のてっぺんにいたアナコンダがまるで空に向かうように高く伸びた時、晃一はさらに絶叫した。

瞬間、スタッフは全員息を呑んで、柱に釘付けになると大きく目を見開いた。

最後の攻撃なのだろうか、アナコンダが急反転し、物凄いスピードと勢いで司目掛けて襲い掛かったのだ。


 うわぁぁぁぁっっっーーー


牢の中にいた全員が血を吐くような絶叫を上げた。


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