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サバイバル  作者: 清 涼
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第十二章(ニ)

第十二章(二)


 ヒュー と風が吹き、うな垂れた司の髪が揺れた。

さらに風が吹くと、真っ青だった空の色が急に暗雲に包まれ、ゴロゴロと音を響かせた。時々稲妻が走り、その内ポツポツと大粒の雨が落ちて来る。

「雨だっ!」

一瞬にして皆の顔が輝いた。

ザーっとシャワーのような雨が広場に降る。たちまち司はびしょ濡れになった。

だが、雨に打たれてもピクリとも動かない。

「司ぁぁっっ!!」

「司さーーんっっ!!」

格子の中から大声で叫んだ。

吹き込む雨に皆もびしょ濡れだ。時折雷鳴がとどろき、さらに雨は激しさを増した。


 ザザーーっっ・・・


その時、豪雨の音とは別に、シューっ シューっ という、何かが巨大な空気の塊を吐くような音が聴こえて来る。

誰もが一斉にその音に目をやった。


 !?


それを見た時、全員が掴んでいた格子から手を離し、晃一以外は皆一歩後ろに引いてしまった。

それは、太古の森で遭遇したあれと同じだった。黒光りする巨大な蛇が林の奥から広場に入って来たのだ。

体をくねらせ、大きな三角の頭の先から、先が二つに分かれた赤い舌を絶えずシューっ シューっ と出しては引っ込めていた。

カァっと開いた大きな口は人間一人を軽く飲み込んでしまいそうだ。

咄嗟とっさに晃一は、目の前で飲まれたアマゾネスを思い出した。

アナコンダに一呑みにされたのだ。

あの時のアナコンダと同じだ。それは、あの時と同じように何かを見つけ、スピードを上げて真っ直ぐに柱に向かっていた。


「うわぁぁぁっっっ!! 司ぁぁぁっっっ!!!」


晃一はガッと格子を掴んでありったけの声を出した。

が、その声も虚しく、うな垂れている司には聞こえていないようだ。


「司ぁぁっっ 起きろーーっっ!!」

「司さーーんっっ!!」


発狂したように晃一は叫んでいた。他のスタッフも気が気でない。再び格子を掴むと、声の限りに司の名を呼び続けた。


 シューっ シューっ ・・・


アナコンダは司の前まで来ると、グワっ と大きな口を開けて襲い掛かった。


 ああーーっっ!?

 シューっ シューっ ・・・


だが、髪の毛をかすりかける前にすぐ体を縮ませ、元に戻った。


 シューっ シューっ


再び黄色の目を光らせ、赤い舌を出して司を威嚇いかくする。


「司ぁぁぁっっっ!!!」


辺りに晃一の唾が飛び散った。



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