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サバイバル  作者: 清 涼
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第十一章(三)

第十一章(三)


 急に辺りが静かになり、晃一は司の傍に寄ったが、その瞬間ハッと顔を上げると、何も動く事が出来なくなってしまった。

十数人の原住民が剣とやりを構えてこちらに迫っていたのだ。

「つ、司っ」

迫って来る原住民に気を遣いながらも、倒れている司の肩を揺すったが、完全に意識を失くしてしまっている。ただ、その吐く息だけが苦しそうだ。

 突然、目の前に剣を突きつけられ、晃一は息を呑むと、恐る恐る顔を上げた。

かなり引き締まった筋肉質の両足の上には、皮で出来た腰布を巻き、ベルトのようなものには、何かの獣なのだろうか、いくつかの白い骨がぶら下がっている。

更に視線を上に移すと、何の獣だろうか、その毛皮を頭にかぶり、額を革紐でしばってある。そして、その下についた今にも飛び出して来そうな大きな二つのギョロっとした目の周りは血のような赤で塗られていた。

その鼻筋は他の者と違って黄色で塗られている事から、彼がリーダーなのだろう。他の者は後方で控えていた。

ギョロっとした目が動いた。

そして次に、視線だけ晃一に残り、顔は横に向いた。

「あっちに行け」という事なのだろう。再び剣を突きつけられそうになって、晃一は慌てて立ち上がると皆の所へ後ず去るように戻った。

スタッフ4人は晃一を囲むように集まった。

リーダー格の男はじっと司を見下ろしていたが、うつ伏せになった司の腹を片足でそっと持ち上げ、体を反転させた。

ぐらりと司の体が動いたが、何の抵抗もしない。呻き声一つ上げなかった。

それを見て男が、後ろに控えていた部下の原住民達に何やら指示を出すと、数人が晃一達を囲む。全員が剣で囲まれてしまった。

男は自分の剣を部下の一人に預けると、司の体を抱えて肩に軽々担ぐと再び剣を片手に持ち、何やら叫び声を上げた。

一斉に彼らの雄叫びが辺りに響く。

 だらりと肩に担がれた司に晃一は自分達の置かれた状況をすぐに把握する事が出来なかったが、その男の後をついて行きながら徐々に冷静さを取り戻して行った。

時間にして30分程は歩いただろうか、密林から抜けるとその先に村が見えた。

以前訪れたファヴォス村にも似ている。だが、何かとても不可解な雰囲気を感じた。

渇ききった地面からは異臭が漂っている気がしてならない。何故かその村の空気を吸いたくはないという衝動に駆られる。

スタッフの一人がむせた。

思わず晃一が振り向くと、顔をしかめた木村と目が合った。

5人はそのまま高さにして晃一の肩くらいまでしかない天井の小屋に押し込まれた。立っている事が出来なく、全員が崩れるように座り込んでしまった。

はぁっと息を吐こうとした時、奥にいた人間がのそっと動いてこちらに振り返った。

始めは誰もいないと思っていた皆は驚いて目を見張った。


「あっ!!」


瞬間、スタッフ全員が更に驚いて目を見開くと同時に、その人間も同じように目を見張った。

「恩田さんっっ!!」

岩井が彼の名を叫ぶように呼ぶと、恩田と呼ばれた男は声にならない呻き声を上げてこちらに飛ぶように這って来た。

「あーっ あーっ 」

髪は土埃で白く汚れ、顔も日焼けなのか泥で汚れているのかどす黒く、伸びっ放しのひげがあれから何もしていない事を語っていた。

“あれから” 数頭のジャガーに襲われ、皆がバラバラになったあの時だ。

誰かが通訳の後をついて行ったのを見たと言っていた。それが、今ここにいる恩田だった。

司がクマさんと言っていたあの体格の持ち主の恩田は、頬はこけ、突き出た腹もない程にげっそりと痩せ細ってしまっていた。

捕らわれの身でありながらも5人は涙を流して再会を喜んでいた。



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