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サバイバル  作者: 清 涼
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第十章(四)

第十章(四)


 しばらく、今までの疲れを癒すようにのんびりと過ごした。

陽だまりの岩場で、洗った服を乾かし、平たい岩の上に横になると、皆寝入ってしまった。

「司は、寝ないの?」

「紀伊也こそ寝ろよ」

互いに起きて見張っていなければならないという使命感から解放される事は出来ない。

思わず二人はクスっと吹き出してしまった。

「ま、今のオレ達にはムリってもんだ。ところで、ここは一体どの辺りなんだろうな・・・」

再び辺りを見渡すと、流れ落ちる滝の上の方を見つめた。

「何かの上流だろう。行ってみないと分からないけど、手懸りがあるかもしれない」

司と同じように滝の上を見つめて紀伊也は言った。

「そうだな、確かにここに居ても仕方がない。それに、ここから向方はおかしな森だったしな、上に行くしかないだろう」

今度は自分達が出て来た密林に目を向けた。

一体あの森は何であったのだろうか。現実に存在する筈の森だったのだろうが、現実には起こり得ない出来事があった。

 ファヴォス村のシーメ、アルナンのティプラ。

ここに文献があるならば今すぐにでもその存在を確かめたい。何故なら、この地に伝わるおとぎ話に登場する名ばかりだったからだ。

そう言えば日本にも同じように、その地方に伝わるおとぎ話はいくつかある。

 天女の羽衣、夜鳴き石・・・。

話は逸話いつわかもしれないが、事実その松や石は存在するのだ。

この未知なる森で、そう言ったものがあってもおかしくはないだろう。

司と紀伊也は、流れ落ちる滝の音を聴きながら疲れた体を休ませていた。


 昼も過ぎた頃、ようやく皆が目を覚ました。

司と紀伊也は自分達がうつらうつらしかけていた事に気付いて、慌てて冷たい水で顔と頭を洗った。

「ふわぁっ な〜んか、ひっさしぶりにまったりしちまったぜ」

大きなあくびをすると、晃一は両手を大きく伸ばした。

「なぁ 司、もう行くのか?」

「あ? あ、ああ。 今日はここで休むか」

やる気のなさそうな晃一の声に一瞬迷ったが、一日くらいここで過ごしても良さそうだ。

紀伊也に視線を移すと、ホッとしたように息をついている。

それに、自分自身疲れていた。

 

 池の周りを少し見て回り、皆各々(それぞれ)疲れた体を休ませていた。

司と紀伊也もナイフの手入れをしたり、薪を集めたりと余り遠くへ行く事なく過ごした。

つかの間の休日、と言ったところだろうか、文明の音一つ聴こえないこの密林での休息は何とも言えない静かで心安らぐものだった。

しかし、この静けさを嵐の前の静けさと言う者もいる。

温かな火を囲みながら、皆今までにない安心した表情で語らっていた。

「久しぶりだろ、こんな魚食べるの」

木の枝に刺した魚が焼け、各々に渡す。

「いやぁ 久しぶりっつうか、初めてだろ。アマゾンの魚食うのって」

感心したように晃一は魚をながめ回した。

「大丈夫だろうな? これ」

「今更。 まぁ、一応内臓だけは紀伊也に取ってもらったから」

そう言って司は感心したように紀伊也に視線を送った。

さすがに料理が一切出来ない司に魚はさばけない。それに比べ紀伊也の包丁さばきは見事だった。

「これかけて食べると美味うまいよ」

紀伊也は半分に切った果実の一つを取ると、それをぎゅっと絞って汁を魚にかけた。

すっと司が自分の魚を紀伊也の前に出すと、紀伊也は黙って果実を絞った。

「サンキュ。 じゃ、いっただきまぁす」

半分覚悟したように魚にかぶりついた。それを全員が固唾かたずを呑んで見守っている。

「ん・・・。 んーーっ 美味いなっ 食ってみろよ」

緩んだ頬の司に、皆安心したように手に持っていた魚に果汁をかけて頬張った。

甘酸っぱい果汁が白身の魚肉と上手く合わさり、臭みが消えていた。

しかも、獲れたての魚だった。

腹もすいていたせいもあるが、何とも言えない美味おいしさに笑みがこぼれた。


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