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サバイバル  作者: 清 涼
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第十章(三)

第十章(三)


 チチチ・・・


小鳥のさえずる声が辺りで聴こえ、紀伊也は少しハッとしたように目を覚ました。


 また寝てしまった・・・


少し反省したように俯いて息を吐くと辺りを見渡した。


 パシャ パシャ ・・・


誰かが水浴びでもしているのだろうか、池の方からそんな音が聴こえて司を探したが、ここには居なかった。

ハッとしたように池の方へ目をやると、誰かが池の真ん中辺りを泳いでいる。そして、そのまま流れ落ちる滝へ行き、立ち上がると、滝の中へ入り頭から水を浴びていた。

両手を頭に持っていき、髪を洗っているようだ。

柔らかい朝陽が差し込んで来ると、その姿が映し出された。

思わず紀伊也は、自分が全裸で水浴びをしている司の姿に見入っていた事に気づいて、慌てて視線をそらせてしまった。

司の裸は見慣れている筈だった。

ライブの後、汗だくになった体をシャワーで洗い流すたびに、平気でメンバーの前で脱いでいたからだ。

しかし、今は何故か見てはいけないものを見てしまったかのような罪悪感を覚えていた。

そして、気付いたように他の者が目を覚ましていないか確認すると、ホッとしたように胸を撫で下ろした。


『司、もうすぐ皆目を覚ますぞ』


目をそらせたままテレパシーを司に送った。

 冷たい水に打たれ、頭皮をるように洗っていた司は、紀伊也から送られた言葉に手を止め、振り向くと少し苦笑してしまった。

そして、再び手を動かすと、頭のてっぺんから顔にかけて洗い流すように滝に打たれた。

水から上がり、岩に干してあった服を着ると、髪を左右に振って水しぶきを飛ばしながら皆の所へ戻った。

「お前も浴びてくれば? すっげェ 気持ちいいぜ」

「え、ああ、そうする」

紀伊也は一瞬戸惑ったような目を見せたが、すぐに笑みを浮かべると自然に白い歯がこぼれた。

清々《すがすが》しい朝だった。

鳥のさえずる声が澄み渡った水音に響く。

大自然の真っ只中で迎えた気持ちの良い朝だった。

「おい、起きろっ、朝だぞっ 」

司が晃一を叩き起こすと、髪から冷たいしずくが晃一の顔に落ちた。

思わず顔をしかめた晃一だったが、さわやかな司の笑顔に笑みがこぼれると大きな伸びをして立ち上がり、滝つぼを見つめた。

既に紀伊也が全裸になって滝に打たれていた。

「ほっほーーっ、気っ持ち良さそうっ 俺も行こっと!!」

軽く口笛を鳴らすと池に飛び込んだ。

それにつられ、他のスタッフも次々に飛び込んで行く。

滝つぼでは皆が歓声を上げながら水浴びをしていた。

司はそんな彼らを横目に、珍しく鼻歌を歌いながら果実をもぎ取っていた。

水筒の水も全て入れ替え、それを飲みながら残り少ないタバコを吸った。

此処ここ何処どこだろうな?」

煙を吐きながら辺りを見渡し、子供のようにはしゃいでいる晃一達に目を細めた。


 キーっ キーっ


甲高い鳥の鳴き声と共にバサバサっという羽音が響く。

一瞬そちらに目をやった時、何かが動いたような気がしたが、遠くてよく分からない。

が、しかし、何かに見られているようなそんな気がした。


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