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サバイバル  作者: 清 涼
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第十章(ニ)

第十章(二)


 どれ程歩いただろうか、晃一の息が切れて来た頃、司は止まると休憩するよう言った。

皆、少しホッとした様子で息をつくと、座れそうな場所を探して腰を下ろして一息ついた。

「どれ位経った?」

司の隣に立った紀伊也に訊くと、腕をまくり時計に目をやる。

「一時間しか経ってないよ」

「一時間でこれか・・・、キツイな」

「仕方ない。彼等の体力もだいぶ落ちてるんだ。それに、あれからもう1ヶ月近くになる」

「そうだな。 早く何とかしないと病人が出る」

司と紀伊也は現実の状況に少し険しい表情を浮かべた。

そして、探るように行く先を見つめ、神経を集中させる。

「司!?」

しばらくして何かを感じたのだろうか、紀伊也は驚いたように司に視線を送った。

当然司にも感じたのだろう。頷くと二人は歩き出した。

「司ぁ」

疲れたような晃一に呼び止められて振り向くと、もう少し休んでいろと、手で合図を送った。そして、笑みを浮かべ、そのまま何も言わずに紀伊也と先を進んだ。

100M程歩いた所で立ち止まった。

アナコンダの道はここで曲がっていたが、二人は真っ直ぐ先を見つめた。

「間違いないな。 紀伊也、急いで皆を呼んで来てくれ」

「分かった。 ・・・、あ、司 無茶するなよ」

「分かってるって」

紀伊也に釘を刺され、苦笑すると手で紀伊也を払った。

駆けて行く紀伊也の後姿を見送ると、前に向き直った。

明らかに水の打たれる音がする。

滝つぼでもあるのだろうか。水の匂いもした。それに混じって果実の甘い香りも漂う。

アナコンダに警戒しながらも、はやる気持ちで皆を待っていた。

しばらくしてぞろぞろと、重たい足取りで皆が歩いて来た。

「はぁ・・・ 司ぁ、今度は何だ?」

膝に手をついて息を切らせると晃一は気だるそうに顔を上げた。

「今夜はここで休もうぜ。 明日の朝、天気が良かったら水浴びだ」

「へ?」

嬉しそうに言う司に晃一の目が輝く。紀伊也を見れば、司と同じように嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「晃一、あと少しだ。頑張れ」

司は疲れ切った晃一を励ますように肩を叩くと、目の前に立ち塞がる垂れ下がった大きな葉の群れを両手で掻き分けた。

皆、頭上に垂れ下がる植物を掻き分けながら司について行く。

50M程歩いた所で、突然目の前が明るくなると、水が勢いよく打たれる音が響き、大きな滝つぼに出た。


「うわぁっ すげェっ 」


全員の目が輝いたように見開くと、目の前に広がる光景に口を開けて見入ってしまった。

見上げると、高さにして20M程だろうか。そこから15M程の幅で滝になっている流れ落ちる水は勢いよく池に跳ね返り、水しぶきを上げていた。

所々に岩が顔を出し、池の底が見えるような無色透明な色をしている。

池の大きさも然程さほど大きくはなく、直径にして50M程だろうか。円をえがいたような形をしていた。

地下水にでも流れ込んでいるのだろうか、池から続く川はどこにも見えなかった。

司が池のほとりの岩から顔を覗かせると、皆は興味深気に首を伸ばした。

司は池の水を片手ですくってそれを口に当てた。

「うん、飲めるぞ」

そう言って顔を上げると、皆は、わぁっと池のほとりの岩から顔を覗かせ、両手を池に入れた。

「ふィー、生き返るぜ」

疲れが吹っ切れたように晃一は大きな息を吐くと、じゃぶじゃぶ顔を洗った。

「司っ、 あれ? 司は?」

辺りを見渡すと、少し離れた木から何かを切り落としている。

その隣の木からは、紀伊也が何かを取っていた。

二人が笑いながら戻って来る。その腕には果実が抱えられていた。

「おおっ、でかしたっ!」

思わず駆け寄ると、司の腕から果実を一つもぎ取った。

「皮むけよっ」

かぶりつきそうになったところで司に言われ、ハッとすると首をすくめた。

 ったく

呆れたような司の視線とぶつかったが、笑みがこぼれる。

「日が暮れる前に食っちまおうぜ」

司が言うと、皆歓喜の声を上げた。

自然の恵みを感じた。

普段はどれだけ恵まれた生活をしていたのだろう。

水も食糧も寝床も、当り前のように用意されていた。彼等が求めなくても常にそこにあったのだ。

そんな事を口にしながら、甘酸っぱい果実を頬張り、冷たい水を飲んだ。

火を起こす事は出来なかったが、上を見上げれば満天の星空が広がっていた。

星明りが彼らを照らしていた。

「こんな事にでもならなけりゃ、こんな景色は見られないな」

岩に寄り掛かりながら空を見上げ、司は呟いた。



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