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サバイバル  作者: 清 涼
61/150

第九章(三の2)

******


 不穏な空気が解け、濃い植物臭に包まれ、時々動物の鳴き声が遠くの方から聴こえていた。

司は残されたアマゾネスの剣を拾い上げると、それを黙って見つめていた。

剣の根元に一見傷に見えるが、よく見ると何かの印のようなものが彫ってある。

「晃一、これ何に見える?」

ほぼ確信したように司は立ち上がると、晃一に剣を見せた。

既にいつもの司に戻っている。

「どれ?」

晃一はホッと安心したように息を吐いて司の隣に立つと、剣の根元を覗き込んだ。

「う〜む、こりゃ 俺にでもけそうなクモだな」

半分バカにしたように言うと、真剣な顔付で「間違いない」と付け加えた。

が、二人共笑い出しそうだ。

余りにも簡単な絵だった。

小さな丸から8本の足が伸びているだけだった。

「アイツ等の守り神か?」

「何でそう思う?」

「だって、さっきのが多分ハチだろ? だから何となく」

「ま、単純に考えればそうだろうな。 で、晃一、お前がここに来た時の状況を教えて欲しいんだけど」

「えっ?」

一瞬二人はマジマジ見つめ合った。

「お、そうだ。それが一番肝心な問題だった。 すっげェ ヤバイ状況だったんだよっ」

突然思い出したようにポンと手の平を打った晃一は、皆が連れ去られたと思われた方に視線を向けた。

それに連られるように司もその方向に向いた。

「それがさ、俺が来た時には既に誰もいなくなってたんだ」

「は?」

真顔で話す晃一に一瞬呆気に取られた。

「そんな目で見るなよ。 っていうかさ、マジで誰もいなかったんだよ。ま、付け加えるんなら、俺が来るのが遅かったっつうか」

「何だ、ソレ?」

「いやさ、近くまで来た時、さすがに俺もへばっちゃって、少し休憩してたワケよ。そしたら何か、すげェ人数の変な人の声がしてさ、それでヤバイかなって、じっとしてたんだ。 で、静かになったから行ってみたら誰もいなくなってて、紀伊也って呼んだら、あのヘンな女がすっげェ顔してあそこから出て来たってワケだ」

そう言ってもう一つの石の後方の茂みを指した。

「てことは、本当に連れ去られたかどうかも分からない。で、しかもどんなヤツ等だったかも分からねぇって事かよ」

「ま、そうだな」

「あのなぁ・・・ それじゃぁ」

「ムリムリっ 今の俺には ンな余裕ねぇからっ。 ま、お前が居てくれるっていうんなら出来るかもしれねぇけど」

司の言いたい事はよく分かる。しかし、今の晃一にはその言葉通り、一人で詮索する事など出来る余裕は一寸たりともなかった。

「まぁ しょうがねぇな。 でも、とにかくあいつ等を助けないとヤバイ事になる」

「助けるって、やっぱ、捕まったのか!?」

「まぁ、単純に考えればそうだろうな」

司は表情を変えずに晃一に視線を送った。



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