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サバイバル  作者: 清 涼
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第九章(三)

第九章(三)


 突然、十数人の女原住民アマゾネス達に囲まれ、抵抗する事さえ出来ず、剣を喉元に突き付けられた紀伊也とスタッフはそのまま彼女等に連いて行くしかなかった。

 濃い緑を掻き消すような彼女等の臭気に紀伊也は気分が悪くなってしまった。

司同様、嗅覚には敏感だ。

一人一人の香水の匂いまで嗅ぎ分けられる。が、こういう時は普通の人でいたかったと、常々思っていた。

込み上げて来る吐き気を何とか抑え、小一時間程歩かされた所で洞窟に入った。が、それも10M程で抜けると村に出た。

ファヴォス村によく似ている。

が、しかしそこに居るのは全て女だった。

男もいたが、全て子供だ。

話には聞いた事のある原住民アマゾネスは、アマゾンの名の由来と聞くが、その民族が今尚存在している事は聞いていない。


 滅んだと思ったが・・・、でも、実在だったかも定かではない・・・


紀伊也の知識の中では確信が持てなかった。

が、しかし、仮にこれが現実に自分達が彼女等に捕らえられたのだとしたら、とてつもなく危険な状況にあるという事だ。

一刻も早くここから逃げ出さなければならない。

しかし、5人が全員この村から逃げ出せるのだろうか。広場の中央に連れて行かれ、5人を囲むアマゾネス達は少なくとも40〜50人はいる。

機会を伺うしかない。

そう判断した紀伊也は黙って従うしかなかった。

5人をめ回すように見ていた彼女等が突然一歩退いた。

一つの囲いが解けた。どうやら族長らしき人物が現れたようだ。

どこで手に入れたのか、透き通った白い布を全裸に羽織った女を先頭に、その周りは上半身裸ではあったが、無駄のない筋肉にピンと張った乳房が鍛えられた護衛の戦士である事を伺わせる数人のアマゾネスを引き連れて現れた。

さすがの紀伊也もこんなジャングルの中で見せられた女性の肉体美には、内心感心させられてしまった。

スタッフに至っては、興味を注られながらも恐怖の方が上乗せられ、落ち着きのない複雑な心境だった。


「我レハ、“アルナン”ノ “ティプラ”。 オ前達ハ 何者ダ?」


凛とした声に只者でない事が分かる。


「紀伊也さん、何て言ってるんですか?」


木村が紀伊也の耳元で囁くように言ったが、紀伊也は応える事なく黙ったまま表情一つ変えずにティプラを見ていた。

彼女もまた能力者だった。

今は悟られてはならない。司にテレパシーを送る事も出来ず、ティプラの能力を見極めなければならない。


「分カラヌカ、ナラバ ヨイ。 ツレテイケ」


顎を上げてそう命ずると、護衛の者ではなく、紀伊也達を連れて来たアマゾネス達が再び剣を付き付け、「行け」と目で合図する。

こちらのアマゾネスは、同じように筋肉で覆われてはいるものの、恰幅がよく、腹も大きく、垂れた乳房をした者ばかりだった。

木の枝で作られた牢のような小屋に押し込まれ、入口を縄でくくりつけられた。

地面は乾いていたので、紀伊也が腰を下ろすと、皆も幾分ホッとしたように腰を下ろした。

「大丈夫か?」

足を痛そうにかばう岩井に紀伊也が気遣うと、少し顔をしかめながら頷いた。

「心配するな。とにかく全員で逃げるぞ」

「でも・・・」

「大丈夫。 あの太古の森から抜け出せたんだ。それに、早くここから出ないと危険だ」

紀伊也は格子の向方から遠目にこちらを見ているアマゾネス達に冷ややかな視線を送った。

「紀伊也さん、俺達もうとっくに覚悟は決めてますからあいつ等が何をするのか教えて下さい。一体何が危険なんですか?」

皆を代表するように木村が言う。

それに応えるように皆の真剣な眼差しが紀伊也に集まった。

紀伊也は全員を一周すると、フッと緩んだように息を吐いた。

「見て分かったと思うが、この村は女ばかりのアマゾネスの村だ。ヤツ等の好物は男、すなわち俺達だ。 精気を吸い取るだけ吸い取ったら後は捨てるか、食われるかだ」

「 ・・・、食われるって・・・」

「この辺りには居るんだよ、人食い族が。それが、ヤツ等なのかは知らないが、俺達男にとってアマゾネスはとにかく危険なんだ。だから何としてでも逃げる」

そう自分にも言い聞かせるように言うと、片膝を立てて村の様子を伺うように格子の外を見つめた。


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