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サバイバル  作者: 清 涼
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第九章(ニの2)

「何かある」


そう確信すると、目の前の大木に手を掛け、枝の間をすり抜け下へ降りて行った。

ここが一番下の地面だろうと上を見上げると、10M程の高さがある。

足元の柔らかい土砂に注意しながら歩き、横倒しになった大木の上に乗った時、目の前に広がった光景に愕然とした。

「村があったのか!?」

この辺り一体毎陥没してしまったのだろう。木の枝を積み重ねて作られた家は原型をとどめずぺしゃんこになっている。その上からは流れ出た土砂がかぶっていた。

何ら臆する事なく探るようにそれらを見て廻った。

時々、家畜らしき獣の骨を見つけたが人骨らしきものは一つもなかった。

「ここが村長の家か・・・?」

一番奥にあった中でも大きな家の崩れた跡の前に立った。

その後には高さにして20〜30Mはあるか、大きな切り立った岩がそびえている。

思わずその垂直に立った岩壁に沿って見上げた。


 ん?


途中、何かが光ったように見えた。

目をこらして見るが、太陽の光が眩しくて裸眼では見えそうもない。

余計な能力は使いたくなかったが仕方ない。その一点に集中させた。

「石? エメラルド? ・・・ グリーンの石だ」

岩壁の頂上からおよそ10M程下に小さな窪みがあり、その中に安置されるように涙型をした丸い石があった。

視線を元に戻した時、ハッとなって自分の首に下げられていた赤い石を取り出した。

「まさか、これと同じものがあるんじゃねぇだろうな・・・」

少しヒヤリとしたが、石をしまうと思い切ったように右手を振った。

金色のチェーンが右手首のブレスレットから伸びると、その窪みに向かって放たれた。

チェーンの先が緑色の石に触れると、それが窪みから飛び出し落ちて来る。

崩れた家の瓦礫がれきを踏み台にジャンプし、それをキャッチすると、岩を蹴って下に飛び降りた。


 グシャっ ガシャ ガシャーーンっっ


 うわっ ちっ 


着地場所が悪かったのか、更に瓦礫を破壊すると、その中に落ちてしまった。


 アテテテっっ・・・


服から出ていた両手にすり傷を負い、顔をしかめたが、立ち上がって自分の服を見下ろすと感心したように苦笑してしまった。

「さすが、特殊部隊お手製の服だな」

汚れはしたものの、破ける事なく、それどころか糸のほつれさえもない。

何とか崩れきった瓦礫から出ると、地面に飛び降りた。


 ん?


手にした緑色の石を見るなり、その地面に転がっているものの方に気を取られた。

「骨だ」

一つを手に取って調べるように見ると、そっとそこに置いた。そして、視線を動かしてギョッとしてしまった。

明らかに人間の頭蓋骨があり、その周りに骨が散らばっている。

恐らく最初は人の形の原型をしていたであろうが、さっきの司の衝撃で崩れてしまったのだろう。

「Sorry」

司は呟くと、人骨に近づいた。

そして、かがんでそれを調べるように見ていた。

「複雑骨折してる・・・、落ちたのか?」

上を見上げたが、そこにはそびえたった岩しか見えない。

あの頂上から転落したのであれば説明がつく。が、理由が分からない。

首を傾げて立ち上がると、右手に握り締めていた緑色の石を見つめた。

磨かれたその丸い石は見事な涙型をしており、エメラルドとも翡翠ともつかない不思議な緑色をしている。

太陽に透かすと、南の島にひっそりと漂う深い海のようなエメラルドグリーンをしているし、手の平に収めると、神事にでも使いそうな落ち着いた翡翠のような神秘的な色をかもし出していた。

「こんな綺麗なグリーンは見た事がねぇな」

思わず感嘆の溜息が漏れる。

しばらく赤い石と緑色の石の二つを見比べるように見ていた。


 !?


『司っ、アマゾネスだっ』


突然紀伊也がテレパシーを送って来た。

『紀伊也!?』

しかし、それ以上の応答が得られない。

司は慌てて立ち上がると、二つの石をしまい走り出した。

急いで下りて来た大木の枝を掴みながらよじ登る。

しかし、思った以上に昇る事は容易ではなかった。

 クソっ

チェーンを使おうと放ったが、重なる枝が邪魔で思うように使えない。

下りた時の倍以上の時間は費やしただろう、ようやくの事で地上に出ると、肩で息をしていた。

が、休んでいる間はない。

走り出すと、元来た道を駆けて行く。


 はぁっ はぁっ・・・


長い道のりを必死で駆け、ようやく元の広場に出た時には完全に息が上がってしまっていた。

おまけに喉も渇く。

入口の木に手を掛けて息を整えようとして顔を上げた時、不意に殺気を感じた。



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