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サバイバル  作者: 清 涼
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第一章(三)

第一章(三)


まずガイドが渡る。

何ら危なげなく渡り終えると橋のたもとに立ち、カメラを持ったスタッフを補助する。


「思ったより丈夫ですよーっ」


手を上げて合図するとカメラを廻し始めた。

確かに思ったより頑丈そうだ。揺れも少ないし、橋げたも意外と強固に出来ている。

半分程まで渡った所で司は軽く膝を上下に振って、その揺れを確かめた。


「おわっ、やめろよっ。 こっえーなー 」


後ろから慌てたような声が聴こえ、振り向くと晃一が両手でロープをしっかり握って立ち止まっている。

思わずニヤっと笑ったが、そのまま前を向くとスタスタと橋を渡った。

比較的乾いた地面が橋を囲むように5M程の円を描いている。

が、その先を見れば、大きなシダのような葉がまるでアーチのように垂れ下がり、自分達を待ち構えている。そこから覗く地面は湿っぽく暗い。

「何だか気味悪いな」

ようやくのことで渡り終えた晃一は司の隣に立つと、下から覗き込むようにシダのアーチを見上げた。

司が後ろを振り返ると、余程怖かったのだろうか、スタッフが数人息を整えていた。

橋にはちょうど紀伊也が半分まで渡っているところだった。

それを確認すると、司はシダの葉を思い切ってめくり上げ、中へ入った。


「何だここ?」


足を踏み入れ、辺りを見渡して茫然としてしまった。

もっと同じような葉がうっそうと茂っているのかと思ったが、背の高い木々に囲まれ、その間は中間層の木で埋まり、更にその下には濃い緑の植物がまるで広場のように取り囲んでいた。

しかし橋の向方と違って、その木々からは陽の漏れる事はなく、昼間だというのに薄暗い。

しかも鳥の鳴き声さえも聴こえない。


「ああ、いたいた」


不意に安心したような晃一の声が聞こえ、振り向くと少し青ざめた紀伊也が一緒にシダの影から現れた。


「どうした?」

「いや、一瞬消えちまったかと思ってさ」

「誰が?」

「司だよ。入って行ったら急に見えなくなっちまってさ。呼んでも返事がないからちょっとビビった」

「呼んだ?何も聞こえなかったぞ」


何事もなかったように答えた司に晃一と紀伊也は不思議そうに顔を見合わせた。

「何か出そうだなぁ」

晃一が辺りを見渡すと、背後からぞくぞくとスタッフが入って来る。

そして、全員が不思議そうに辺りを見渡した。

広場の中央辺りに立って注意深く伺う。

カメラマンの一人が少し奥へ行き、そこから皆を撮影していた。

司が紀伊也の傍に立った。


「囲まれたな」


耳元で囁くと同時に二人は鋭く神経を募らせた。

何か判らないが、何かが居るのだ。

司は右手をそっと自分の腰に差してあった柄のないタガーナイフを握り締めた。


「司、あともう少しで全員渡るぞ」

シダの影から秀也が顔を覗かせた。

「秀也っ 来るなっ 」

司の鋭い声に全員が一瞬硬直し、静まり返った。

奥で撮影していたカメラマンが、濃い緑色の先の尖った大きな葉の間をカメラで捉えた時、二つの黄色い光る目のようなものを見つけた。


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