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サバイバル  作者: 清 涼
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第八章(四)

第八章(四)


巨大な蜂に先導され、頭上に響く大群の羽音を聞きながら、一行は導かれるままに密林を進んで行く。

濃い緑をかき分けながら歩いていたが、足元を見れば何となく道らしき道を歩いているようにも思えた。

ただ、その幅が大人一人がようやく通れる程度なのだが、先の方をよく見れば、まるで一本道のように続いている。

少し不思議に思いながら蜂の後をついて行った。

そしてもう一つ、司には気になる事があった。

それは、巨大な蜂が現れた時、ズボンのポケットに入れた石から温かな熱を感じた事だった。

それが今も尚続いている。

思わずポケットに手を入れ、石を手の平で確認するように掴んでみるが、やはり温かい。

この赤い石と巨大な蜂が関係しているものだと半ば確信すると、それが何なのか確かめたくなった。

悪いクセだと思いながらも、それが何かの使命のような気もする。

ふと、サーベル・タイガーの顔が頭の中をぎった。

どれ程歩いただろうか。さすがに司も疲れ、吐く息が途切れる。歩く速度も落ちていた。後ろを振り返れば、晃一との距離もかなり開き、息を切らせながら額の汗を拭っている。

その後方では、時々両膝に手をついて息を整えているスタッフが見え、紀伊也の姿まで見る事は出来なかった。


「まだ着かないのかよ? ・・・、おいっ どこまで行くんだ?」


司は思わず巨大な蜂に話しかけるように訊ねて首をかしげてしまった。

“まだ着かない”とは、何処か目的の地がある筈なのだ。

一体この蜂は自分達を何処へ連れて行こうとしているのだろうか。

すると蜂は静止して司に向きを変えると、上下に体を動かした。


「もう少し・・か」


何となくそう言っているような気がしたのだ。

この暑さの中、休みなしで歩き相当疲労困憊(こんばい)している。

「もう少しだ、頑張れっ!」

司はそう皆に声を掛けると、再び蜂を追って歩き出した。


ふと気付くと、頭上の羽音がしなくなっていた。

見上げると、あれ程いた大群が一匹残らずいなくなっている。

そして視線を戻すと、巨大な蜂の姿も消え、目の前に信じられない光景を見つけ、息を呑んだ。

村があるのだ。

木の幹や枝を駆使くしして何かのツルでそれらを固定し、家が建っている。

そして、紛れもなく人間がそこに居たのだ。


「な・・・ んだよ、あれ・・・ 」


ようやく司に辿り着いた晃一は、司同様驚いて目の前に広がる光景に息を呑んだ。

全員が息を切らせながら目の前の村を驚いたように見つめた。

紀伊也でさえも驚きを隠せず目を見張り、それでも辺りを警戒しながら司に近づいた。


「司」

「あ、ああ・・・」


どう返事を返していいか分からない。

それに、このまま進んで村に入っていいのかどうかも分からない。

引き返すべきなのか迷っていた。

「誰か来るぞ」

村人全員の注目を浴びていた晃一は、その中でも一際背の高い男が数人の男を従えてこちらに向かって歩いて来るのを見つけた。

司は皆に下がるよう手で制すると、自分は一歩前に出た。

男と司が対面した。

身の丈は2M程あるだろうか、全身の肌はアマゾンの原住民独特の黒褐色をしている。それが、夕陽に反射して光っていた。

ただ、その額に刻まれたシワが年齢を語っている。

大きな丸い目の下には何本もの深いシワがあり、顎に生えた短いひげは少し白い。

驚いたような大きな丸い目は少し窪んでおり、その中心の額には瞳と同じ大きさの赤い石が飾られていた。

手に持った太くて長い杖の最上部に飾りのように添えつけられている物を見た時、司は驚きを隠せずに息を呑んでしまった。

先程まで自分達はそれに率いられるようにここまで辿り着いたのだ。

それは紛れもなく自分達の拳ほどの大きさはある蜂の木彫りだった。

「我レハ、ファヴォス ノ 族長 シーメ」

しばし、無言で向かい合っていたが、突然彼が口を開いた。

「オレ達ハ 道ニ迷ッタ者。 オレノ名ハ 司 」

それに対して司が応えた。

驚いたのは晃一はじめ、スタッフだ。互いに顔を見合わせると、思わず全員が紀伊也を見る。

「ラテン語だよ。彼はファヴォス族の族長だ」

当然のように言い放った紀伊也にも驚いたが、同時に全員が安堵感が広がった。



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