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サバイバル  作者: 清 涼
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第七章(ニ)

第七章(二)


アマゾン川へと続く小川で、体についた泥を洗い流している司と紀伊也は終始無言だった。

そんな彼等に晃一もスタッフも声を掛けられずにいた。

が、やがて司は立ち上がるといつものようにタバコに火をつけて髪をかき上げると、遠くに流れるアマゾン川を見つめながら何か考えるように腕を組んだ。

時折、下を向いては片足で地面を蹴っている。

そんな司に紀伊也は同調するかのように辺りを見渡し、アマゾン川と平行するように歩いて行ってしまった。

紀伊也もまた時折地面を調べるようにつま先で押したり、屈んでは生えている植物を抜いて確かめるように見ていた。

晃一とスタッフは何も出来ずに、ただ二人の行動を黙って見ているしかなかった。

晃一は目の前に広がる沼地と草原の向方に流れるアマゾン川を見つめながら、何か考えようとしたが、余りに莫大なこの空間に呑み込まれてしまったかのように、自分の頭の中が空っぽな事に気付いて溜息をついてしまった。

自分の置かれている状況を把握出来ていないと言った方がいいかもしれない。

じりじりと照りつけて来る太陽に、現実に自分は今アマゾン川の流域に居る事を思い出させる。


「あれは何だったんだろうな」


不思議な世界にいた数日間がまるで幻想のようだ。

映像でしか見た事のないような動物に植物、きっと現代の技術におけるCGが作り出したものだったのだろう。

そう思えてならない。

「それにしても、アチィな」

Tシャツの裾を少しあおって辺りを見渡し木陰を探したが、少し先の大木の下の木陰で、先ほどのワニが数匹休んでいるのを見つけて溜息をついた。

「そういや、アマゾンは爬虫類の宝庫だったな」

そのセリフに下で座っていたスタッフは苦笑いを浮かべた。


 短くなったタバコを足元に投げ捨てると、司は思い立ったように自分達が出て来たと思われるシダの葉の群れの前まで歩いて行った。

そして、思い切ってめくってみる。

「やはり・・・」

半分納得したように息を吐いて葉を戻した。足元に視線をやった時、ふと何かがある事に気付いた。

屈んでよく見てみると、黒い石が三つ、まるで目印のように積み重ねられている。

それは偶然にあるというよりは、誰かが故意に置いたようにも見える。

一番上の石をそっと摘んでみる。

「黒曜石? こんな所に? ・・・、しかも磨かれてる。 ・・・ 何だ? 」

首を傾げて元に戻すと、ちょうど紀伊也が戻って来たところだった。

「どうだった?」

「やはりダメだな。両方とも沼地になっている。あのまま進めば格好の餌食だ」

「そっか、なら仕方ないな。 ここを行くしかないだろ」

「えっ!? ここって・・・、 戻るのか!?」

司の指す方に驚いた紀伊也は、信じられないと司を見るが、司が冗談で言っているのではない事に気付くと息を呑んだ。

「戻るワケじゃないけど。 なんていうか・・・、やっぱり消えちゃったんだよ」

「え? 消えた? 何が?」

「オレ達が来た道」

「え?」

「上手く説明出来ないから・・・、 とりあえず皆を呼んで来て」

少し困惑したような司に戸惑いを隠せなかったが、紀伊也は晃一達を呼びに行った。

さすがに全員の足取りは重たい。

額には汗を滲ませていた。

「で、どうするって?」

司の隣に立った晃一は、司の肩にもたれるように片手を置いた。

「とりあえず、行こうぜ」

司はそれをよじって払うとシダの葉をめくり上げた。


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