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サバイバル  作者: 清 涼
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第一章(一の2)

***(1ヶ月前)***


「 は? 」


突然に襲われた激しい眠気に勝てず、眠ってしまった自分も悪かったが、晃一の言っている事に何の理解も出来ない。


「という訳で、俺達アマゾン探検ツアーに行く事になったからよろしくな」

肩を叩かれ、そうはっきり言われたが、何処でどういうふうにそうなったのか訳が解らずに、司はただただ目が点になってしまった。

その様子に周りでは笑いが起こっている。

目の前を見れば、ソファでお笑いタレントの司会者が腹を抱えて笑い転げているし、隣ではバンドのメンバーが同じように声を上げて大笑いしている。

今は某番組の収録中だ。


前もって言われていた通り、司がいつも取り寄せているというワインを皆で試飲しようとした時だった。

『やっぱりやめとく』

注がれたワインを口につけかけ司は呟くとグラスを下ろした。

『何で?』

『これ飲んだら絶対寝ちゃうから』

しかし、そんな事で誰も許す筈がない。

司会者やメンバーに、毒でも入っているのではないか、実はとてつもなくまずいワインなのではないかと突っ込まれ、とうとう観念すると一口飲んでしまった。

口当たりも良く、何の違和感もなく喉が潤され、体の中に溶け込むように入って行く。

一般人の入手は大変難しい某国大公の経営するワイナリーの物で、欧州では最高級のワインと言われている。


 この香りとこの味に癒される・・・


ふぅーっと、息を付きかけた時、ガクンっと物凄い勢いで睡魔が司を襲った。


 やべェ・・・

 

慌ててグラスをテーブルに置いたが、頭を持ち上げる事すら出来ない。そのまま隣に居た秀也の肩に頭を置くと目を閉じてしまった。

『ちょっ、司!?』

驚いた秀也が司を支え直そうとしたが、次の司の呟きに諦めると、そのまま肩を貸す事にした。

『ごめん・・・、5日目・・・』

すぅーっと軽い寝息を立ててしまった司を横目に、今日で徹夜5日目だという事を告げると、皆も納得したようにそのまま寝かせておく事にしたのだ。


とにかく忙しかった。

デビューしてから足掛け2年、ロックバンド・ジュリエットの人気は今や絶大なものになっていた。

昼間に撮影・収録・取材等入れば、自分の事をするのは当然夜になる。眠る間もないほどの多忙を極めていた。


ほんの僅かな深い眠りから覚めた時、目の前にバンドのメンバーで、ドラムの晃一がひょいと顔を覗かせた。

寝起き一番に見たくない顔だったが仕方がない。

起きた時のライトと周囲の気配で、咄嗟にとんでもない事を自分はしてしまったのだと気付いて息を呑んだ。


「ごめん・・・、マジで寝ちゃった・・・」

「アマゾン行く事になったから、俺達」


二人の声が重なった。


「 は? 」


その瞬間、周囲は必死に笑いを堪えている。


「という訳で、俺達アマゾン探検ツアーに行く事になったからよろしくな」


晃一に肩を叩かれた瞬間、唾も飲み込む事さえ出来ず茫然となってしまった司に、ドッと笑いが起こった。


「アマゾン?」

「そ、悪いな。ポーカー負けちゃってさ。で、俺達が行く事になったのよ」


頭をかきながら悪びれる晃一にメンバーも笑いながらなじっている。

事の経緯いきさつをVTRで見せられた司は、ア然として返す言葉もない。

持って来た5本の内3本が空いている。酒の廻った晃一がとんでもない提案をしていた。

ゲームに負けた方がアマゾンの奥地に行って、珍しいものを取って来るというのだ。

そして、ものの見事に晃一が負けてしまったのだった。


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