第一部 太古の森伝説 第一章(一)
第一部 「太古の森伝説」 第一章(一)
「何で、オレ達こんなとこに居んだよ?」
タバコを口に銜えたまま靴紐を締め直しながらちらっと上目遣いに晃一を睨み上げた。
「あん? ・・・ 何でだろうなぁ ・・・ ふう〜 」
その視線に気付かないフリをして、呟くように応えると上に向かって煙を吐いた。
見上げた空は雲ひとつなく、まるでペンキを塗ったような眩い青一色に覆われている。
ふとサングラスをずらしてみたが、眩しすぎて一瞬目を閉じてしまった。が、サングラスをすぐに戻してホッとしたように目を開けた。
「ナンデ、オレ達こんなとこに居んだよっ 」
もう片方の足を上げながら再び靴紐をぎゅっと締め上げて司ははっきり言うと、ドンっとその足を地面に下ろしてしっかり結んで、銜えていたタバコを口から外し、ふぅっと煙を吐き付け、再び晃一を睨んだ。
「オレ達はアドベンチャーか? 確か、ミュージシャンの筈だったんだがなっ」
そのセリフに晃一は半分苦笑すると、薄茶色が光に反射して少し金色にも見える司の髪を見下ろし、何も言わずにタバコを吸って再び空に向かって煙を吐いた。
「そうだったな」
「過去形にするなよ」
「はは・・、まぁまぁ、今更。 往生際の悪い」
「今ならまだ引き返せる」
「諦めろって」
「ヤダ、オレは降りたい」
「願望なら腹くくれ」
「 ったく」
チェっと舌打ちすると、火のついたタバコを晃一に向かって投げ付けた。
「おわっ、危ねェな。 ったく、 こらっ、環境汚染だぞっ。タバコを投げるなっ」
慌てて足でそれを踏み潰すと呆れたように拾い上げ、携帯吸殻袋に入れると、自分もそれに入れて火を消した。
「司ぁっ、そろそろ行くぞっ」
遠くの方から秀也が声を掛けた。
顔を上げて声の方を向くと、皆リュックサックを背負い始め、集まり出している。
更にその先に視線を向けると、うっそうとした密林が待ち構えている。
はぁ
一つ溜息をつくと司は仕方なく立ち上がり、ウエストのベルトをギュッと締め直した。




