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サバイバル  作者: 清 涼
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第二十四章(二)

第二十四章


 パチパチと燃える炎の音に目を覚ますと、体にふわっとした毛のようなものをまとっているような感覚を覚えた。

「大丈夫か?」

頭の上から紀伊也の声が聞こえるのと同時に、ふわっとしたものがのそっと動くと、それが黒いジャガーである事が分かった。

どうやらジャガーの体をベッド代わりにしていたらしい。

肘をついて重たい体を起こすと、紀伊也からカップを受け取った。

「だいぶ疲れているみたいだな。一昨日おとといから一度も目を覚まさなかったよ」

一昨日おととい?」

あれから今夜が二日目の夜だという事を聞かされ驚いてしまった。

カップに入った水を口に含むと一瞬顔をしかめてしまったが、すぐにホッとしたようにごくごく飲み干した。

「毒は入ってないよ。これを見つけたから少し搾って入れただけだよ」

そう言って黄色い果実を見せた。

以前にも同じものを二人で採って来て皆に分け与えたのを思い出す。

「近くまでしか行ってないけど、ほとんど同じ道だったよ、あの時と」

紀伊也はまず道を進んでみた。

 同じような熱帯の木々が立ち並ぶその風景は、以前とほとんど同じだったように思えた。

時々大きなシダの葉があった時はドキっとしたが、思い切ってめくり上げて見ると、ただの熱帯の植物が生えているだけであった事に安堵の息が漏れた。

余り遠くへは行かない方がいいと思い、すぐ引き返してしまった。そして、広場の周りを調べるように散策しながら薪を集めていた。

夕方になっても目を覚まさない司に心配したが、その寝顔から疲労の色が伺えるとそのままにしておいたのだ。

それに、疲れているのは何も司だけではない。紀伊也も相当疲れていた。

夜中に火が消え、突然現れたジャガーに驚いたものの、二人を守るように横になった事に安心すると、紀伊也も気を失うように眠ってしまったのだ。

次に目を覚ました時には、太陽は真上にあり、岩壁はまた焼けるように熱くなっていた。

岩壁から湧き出る水を飲みながら、ニ方向に流れた先に目をやって少し躊躇ためらってしまった。

その先を見るのが少し怖かった。

しかし、意識を失くしたように眠っている司に目をやった時、やはり決心したように垂れ下がる緑色の大きな葉をめくり上げた。

「崖だ」

聖なる森に通じていた方を覗き込んだ時、その先に道はなく、そのまま植物が生えたまま崖になっていた。

そして今度は、アマゾン川に通じていた方の枯れ木をかき分けた時、こちらの方も枯れ木の立ち並ぶ崖になっていた。

それぞれの水が崖を伝うようにちょろちょろと流れ落ちていた。

この広場は崖の上にあった。そして、この岩壁はその崖の上に立っていた。

この岩壁の向こう側はどうなっているのだろう。

ふと考えた時、自分達はこの岩壁の中から出て来たのではないか、と思ってしまい、戸惑ってしまった。

よく分からないが、そんな気がしたのだ。

「本当に不思議なところだな」

紀伊也の話を黙って聞いていた司はそう言うと、再び体を倒した。

そして、満点の星空を見つめ、

「変わらないのは空だけか」

と言って、再び目を閉じた。

二人とも、静寂に包まれた夜空の下で、ちょろちょろと流れる湧き水の音を聴きながら深い眠りに落ちていた。




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