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サバイバル  作者: 清 涼
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第二十章(三)

第二十章(三)


「 ・・・、 大丈夫ですか? 晃一さん、しっかりして下さい、晃一さんっ 」


 う〜〜ん、 ・・・ んん・・・

 うわぁぁぁっっっ・・・


「うわっ」


 っテっ・・・


ガバッと起き上がった晃一の額と木村の額がぶつかった。

お互い自分の額をさすりながら顔をしかめる。

「晃一さん、大丈夫ですか?」

「あん? ああ、・・・テテテ・・・ 夢か・・・ っんだよ、いてェなっ」

晃一は自分が夢を見ていたのだと気付いて安心すると、ぶつかった木村を睨み付けた。

「え、あ、すみません。でも、また、かなりうなされてましたから」

「あ、ああ・・」

晃一はうつむいてしまった。

 また、だ。

何とか無事にコロンビアの大使館に辿たどり着き、病院へ運ばれてからずっとうなされっ放しだった。

集中治療室からスタッフと同じ部屋に移されてからは、眠る度に同じような悪夢にうなされ、ひどい時には絶叫さえ上げていた。

しかし、悪夢にうなされていたのは何も晃一だけではなかった。木村も西村も岩井も佐々木も、悲鳴こそは上げないが、うなされては嫌な汗をかいて目を覚ます事が多かった。

「晃一さん」

顔色がさえなく俯いたまま黙ってしまった晃一に、再び木村が心配そうに声を掛ける。

「俺達、本当に助かったんだな」

「ええ、・・・ 来週には日本に帰れるそうですよ」

本当なら皆、それを告げられた時、手放しで喜んでもいい筈だった。感涙かんるいに埋もれても良かっただろう。

しかし、「そうですか」と、応えただけで、誰の目にも笑みは見られなかった。それを告げに来た大使館の職員も首を傾げて部屋を出て行ったくらいだ。

もうすぐスタッフの家族も来るだろう。命がけでアマゾンの奥地から脱出し生還した事を手放しで喜び、家族との再会を待ち望んでも良かっただろう。しかし、何故かそれは誰にも出来なかった。

木村が晃一に告げた言葉に全員が黙ってしまった。

「 ・・・、 心配すんな。俺、約束したんだ、司と。 東京で会おうぜって」

晃一はそう言って無理に笑ってみせた。

「 ・・・、 絶対に東京で会う、から・・・」

再び言った時には嗚咽おえつに変わっていた。



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