彼女は懐妊する

「うう……なんか気持ち悪い……」

ユゲットが一人で寝るようになってから数ヶ月。ついにその日が来た。

「テレーズ、大丈夫か！？」

「吐きそう……吐く……」

テレーズは物の見事に吐いた。マルカは急いで片付け、ボーモンは医者を呼ぶよう使用人達に指示して、ユゲットはテレーズの背中をさする。

「おめでとうございます、奥様」

「え」

「赤ちゃんがいらっしゃいますよ」

「……ぼ、ボーモン様！」

「落ち着けテレーズ、よくやった！」

「パパもママも落ち着くんじゃよ」

テレーズがボーモンに抱きつく。ボーモンはそんなテレーズを力強く抱きしめようとして、直前で止まって優しく背中に手を回した。

「ありがとう、テレーズ」

「はい、ボーモン様」

そんな二人の様子を見てユゲットもむふむふと笑う。

その後医者から食べていい物、食べない方がいい物、転ばないように気をつけること、何か気になることがあったらすぐに自分を呼ぶことなど諸注意を受けたテレーズ。医者を見送ると、再びボーモンと喜びを分かち合う。

「ボーモン様、ここにボーモン様と私の子供がいるのですね！」

「すごく嬉しいものだな、テレーズ」

「はい！」

「パパ、ママ、改めておめでとうなのじゃ」

「ユゲット、ありがとうございます！」

思えば、無自覚両片思いの二人が進展したのもユゲットのおかげ。子供を儲けたのもユゲットの弟妹が欲しいという願いがあってこそ。ユゲットはテレーズとボーモンにとって福の神のようである。

「ユゲットが来てくれたから、毎日が幸せだな」

「魔獣のスタンピードとか危なかったこともありましたけど、それを乗り越えられたのもユゲットのおかげですしね」

「ユゲット。愛してるぞ、私達の愛娘」

「ユゲット、愛してますよ」

「ふふん。妾はパパとママの長女だからのぅ！妾もパパとママが大好きなのじゃ！」

ユゲットがボーモンに抱きつく。ボーモンはユゲットを抱き上げてその頬にキスをした。ユゲットはくすぐったくて笑った。幸せな家族の形が、ここにあった。