第112話 涙覇の恋人はキミで良いのかな?
苦笑しあっていると窓が開いた。
防音だから声は聞こえてなかっただろうが口をパクパクさせるオレの様子が中から見えたのだろう。
「おはよ、ウェディン」
「おはよう」
「おはようさん、涙覇の恋人はキミで良いのかな?」
「ええ」
「ウェディン、彼はラズベル」
オレの話し相手の顔を見るラズベル。危ない顔の出し方にちょっとだけ驚いた。落ちそう落ちそう。
「あ、駅の」
「そ。駅の。
えっと、ウイナーはキミの事なんて呼べば良いかな?」
「ウェディンで。ウェディン・グリンです」
「了解。
ウイナーはラズベル=ラズベリー。ラズベルで良いよ。
そうだ確認。
二人はパペットウォーリアのエリアチャンプであってるかい?」
ああ、やっぱり知られてたか。結構雑誌とかに出ているからなエリアチャンプ。
「あってるよ。
そっちは『シュティーフェル財団』であってる?」
「あっているとも。
ん? どこで知ったんだ?」
オレとウェディンは顔を見合わせる。
教皇ステイ・クラリティーについては広めない方が良いだろう、と言う意味合いで頷きあって、
「『神赦譜術教会』の人に聞いたんだ。知られてるよラズベルの事」
とだけ応えておいた。
「マジか。まあ知られて困ったりはないんだけど」
「あるだろう。
お前の素性がバレれば家族友人を狙われるかもだぞ」
おや、また別の声が。男性の声だ。
「やあアラス。やっと起きたな。ゲドルドは?」
「顔を洗っている。
そちらは涙覇氏とウェディン氏でしょうか」
ラズベルの上から顔が出てきた。ラズベルより背が高い黒人男性。髪はピンク系ピンクアーモンドのアップバングに同色の眼。左目の『覇紋』も色はピンクアーモンド、形はどこかの金貨だ。駅でラズベルの背を押していた青年の一人だった。
「ええ。天嬢 涙覇です」
「ウェディン・グリンです」
「よろしく。
ピオニールはアラス=コルダです。
ゲドルド、こちらに」
「んー? ちょっと待って。まだ顔拭いてない」
タオルで拭いているからだろうか? 声がなにかに遮られているように聞こえた。
「よっと。
こんちわ。
バタルはゲドルド=ド=ナミルターだよ」
今度はラズベルの下から顔が。アラスと同じく黒人で、背はラズベルよりも低い。まだ少年の面影がある。黄系サンシャインイエローのオシャレ坊主でサンシャインイエローの眼、左目の『覇紋』は黄系シトラスの柑橘類だ。彼も駅でラズベルの背を押していた二人のうち一人だった。
「よろしく」
「よろしくね」
「うん」
「ゲドルド、彼は天嬢 涙覇氏。彼女はウェディン・グリン氏だ。覚えたな?」
「んー、多分。寝起きだから自信ないけど」
「大丈夫です二人共。こう見えてゲドルドは記憶力が良いからな。
それで困る事、だったなラズベル。
お前のせいで周りの者に被害が及んだらどうする」
「大丈夫さ」
アラスに笑顔を向ける、ラズベル。
「『シュティーフェル財団』は国議軍の協力を得ているんだから。軍の目はきちんと民衆の防衛に向いている。
ウイナーは彼らを心から信頼しているからね」
「確かに軍は優秀だが」
「そうだよ、アラスは考えすぎなんだって。バタルみたいに気楽に活きれば良いのに」
「お前は気楽すぎだ。先日戦闘後に群衆に手を振っていただろう。
ピオニールたちはヒーローやアイドルではないと言うのに」
「人気があるのは良い事だよ。
ねえ涙覇くん?」
「まあ……ある方が良いけどアイドルは違う気がする」
別にちやほやされたいのではないゆえに。
「え~? ファンがいた方が良くない、ウェディンちゃん?」
「プライベートを追っかけてくるファンでなければ」
「え~?」
「ははは。
まあ話は朝食を摂りながらでどうかな?
ウイナーは腹減ったよ」




