第102話 はい、チェックメイト
「そしてこの子が――」
ハッとした。教皇ステイ・クラリティーの言葉はまだ続いていた。
そして彼女の言葉を継いで娘さんが口を開く。
「サアリス・クラリティー、十二歳です。
わたくしのランクはA級になります。
よろしくお願いします」
「因みにわたくしの夫、サアのお父さまは秘密です。
誰にも襲われないように、ね。
あなたたちを信用していないと言う話ではないわ。どこに聞き耳を立てている人がいるか分からないから。
ごめんなさいね」
謝罪され、オレたちは慌てて首を横に振るう。
「ありがとう。
それでこの人はザイ。ザイ=アガリタ。S級よ」
一人立ったままの男性を指して。
「自分の事は呼び捨てで構いませんよ、是非ザイと気軽にお呼びください」
「この人、仲間は要るけど執事は要らないって言ったのだけれどね、聞いてくれないの」
困った人なのよ、と教皇ステイ・クラリティー。
「教皇、あなたは教皇でなくともあの方の夫人です。
しかるべき人にはしかるべきものがつくべきです」
「――って言う感じで」
「はぁ」
あの方の夫人、と言われて旦那さんも地位のある人なのかと思う。
夫婦揃って有力者、凄いなとも。
「あ、じゃあオレたちも。
天嬢 涙覇です」
「ウェディン・グリン――いえ、リア=ベルです」
「燦覇だよ」
三人の自己紹介に、特に偽らず本名を出したウェディンにあちらの三人は満足そうに頷いて。
そして教皇ステイ・クラリティーは、
「これを見て」
チェス盤に手を添える。
「今、わたくしの方が――金が敗けているわ。
もう少しでチェックメイト。
どうかしら? 誰でも良い。このままわたくしを押し切れる?」
「チェス、ですか」
言われ改めてオレは盤面を見やる。
将棋なら経験はあるがチェスはない。ウェディンに目を向けてみると首を横に振ってきた。彼女も得意ではないらしい。燦覇は見るのも今日が初めてだろう。チェス盤と演劇を交互に観て、どっちに重きを置こうかと困っている姿が可愛い。
それはそれとして、一応はルールくらいなら理解しているオレ。そんな初心者のオレから見ても確かにもう数手でチェックメイトだ。
これなら簡単に勝負がつくだろう。
なので。
「できます」
と強気で応えた。
「そう。なら続けてみましょうか」
教皇ステイ・クラリティーの手が、クイーンを掴んだ。
一手、二手と打ち続け――
「あれ?」
あっさりと逆転され――
「……」
あっさりと――
「はい、チェックメイト」
敗けてしまった。マジか。
いくらなんでもと手が固まる。勝敗が見えた状態からの再開だったのに。
敗ける要素なんてなかったのに。
「オレの……敗けです」
なのに敗けてしまった。どうして?
「ごめんなさいね、今ちょっとズルをしたわ」
「え?」
「見えなかったかしら。
コンマ数秒だけアイドルを使ったのだけれど」
「「「!」」」




