サソリ+カエル+トカゲ=?
「ああ、参った参った。強そうだとは思ったが、ここまでとは」
まだ笑い続けるウルスラが兜を脱いだ。現れたのはクルサとそっくりの顔。耳にかかるか、かからないか位まで髪を短くして、くりくりした目には涙を浮かべている。笑い声も高かったからもしやとは思ったが、想像通りの少女だった。
「とんでもない馬鹿力だな。それに速い。力が強いだけなら、私の手から剣が飛ばされるだけだった。速いだけなら折れることは無かった。両方兼ね備えているからこその結果だな」
折れた半剣を鞘にしまい、クルサに顔を向けた。
「この人達なら問題ないよ。今までやって来た口だけの連中とは違う」
ウルスラの言葉に、クルサが頷く。
「あんたが言うなら、間違いないね。よし、二人ともこっちに来てくれ」
手招きされ、僕達は再度クルサの前に立った。彼女は、さらさらと掌サイズの木板に墨で文字を書き入れていき、僕達にそれぞれ差し出した。
「疑って悪かったね。タケルに、クシナダ。おたくらの登録証だ」
礼を言って受け取る。別にいらないとは言ったが、もらえるのならありがたく頂いておく。
「この登録証を使えば、街にある施設が全店割引になる。好きに使ってくれ。ただ、一つ条件がある。街に化け物が攻めてきた時、この塔に備え付けられた鐘が鳴る。鐘の音を聞いたら、どんな時でもすぐさま集まってくれ。飯食ってる途中でも、寝ていても、女抱いてる途中でも、何が何でも絶対だ。拒否は許されない。もし約束を破った場合、登録証を剥奪し、身包み剥いで街から追い出す。ま、おたくらは心配なさそうだけどな」
「安心していい。約束は守るよ」
戦うのが目的なのだから、敵が出たと知らせてもらえるのはむしろありがたい。
「いくつか教えて欲しいんだけど」
「何だい?」
「化け物が出るたびに鐘を鳴らすって事は、このあたりは頻繁に襲撃に遭うの?」
「そうだね。十日に四、五回ほどはあるか。規模の大小はあるけどね。少ない時で十数匹、多いときで百匹以上」
「種類は?」
「多いのがサソリかねえ。人間の倍はあるサソリ。そいつが何匹もワラワラと現れる」
うへえ、とクシナダが嫌そうに顔をゆがめた。節足系の苦手な彼女は、その場を想像して辟易している。
「後はカエルとトカゲだね。サソリだけなら毒が面倒なことを除けば数が多いだけでそんなに脅威でもないんだけど、その二種類が出てくると途端に厄介になる。カエルは戦闘力もさることながら、どうもサソリたちの隊長格みたいで、周りのサソリを操り始めるんだ」
「指揮を取り始めるって事?」
「ああ。統制の取れた動きをする。そうなると厄介だ。一匹ずつなら囲い込んで潰せるんだが、仲間と連携を取り陣形を形成すると背後を取ることも困難になる。サソリ一匹に三人がかりで確実に倒せるが、連携を取り出したサソリ二匹には十人必要になってくる」
人間より強い生物に人間が勝てるのは、徒党を組んで取り囲み、一対多数で戦えるからだ。それが出来ないとなると、一対一で戦うのとほぼ変わらない。そして、人間より強い生物に一対一で勝てる人間は少ないだろう。当たり前だが、人間より強いのだから。
「トカゲは、指揮は取らないが強い。一匹でサソリ十匹分くらいの強さだ。鱗は硬く、矢くらいなら簡単に弾く。生半可な攻撃じゃ傷一つつけられない。反対にヤツの牙はこっちの鎧をたやすく貫通する。また、ヤツは火を噴く。ただの火じゃない、一旦燃えると水をぶっ掛けても消えないんだ。何人もの狩猟者が生きたまま燃やされた」
水を掛けても消えない火、か。なかなか楽しそうなヤツじゃないか。それにしても、サソリにカエル、トカゲ。どこかで聞いたような組み合わせだけど、何だっけか。一種類ずつだと気にならないんだけど、三種揃って何かあった気がする。しばらく頑張ったが、どうしても思い出せない。まあいい。そのうち思い出すだろう。今すぐ思い出せないって事は、そんなに大したことじゃないだろうし。
「何でそんな厄介な連中が住んでる場所に街を作ったの?」
「そいつについてはご先祖様に聞くしかないねえ。あたしが生まれて物心付いた時には既にこの状態だったから。ただ、もちろんうまみもある。やつらの固い鱗や甲羅は武具に加工できるし、カエルやトカゲの肉はまあまあ上手い。サソリの毒は薬として重宝される。後は宝石だね。たまにやつらの体の中に宝石が詰まってることがある。やつらが体ん中で作るのか内臓の一つなのかどこかで食ったのが残っているのかわからないが、好事家に非常に高値で取引される。他の街に持っていけば、一個でも数年は暮らせるだけの金になる」
住むだけの価値があるということか。一攫千金を夢見て化け物を倒していくなんてまんまアクションゲームだ。
「それだけじゃないんだぞ」
横からウルスラが口を挟む。
「その宝石で作られた武具の性能が滅茶苦茶良いんだ。剣や槍にすれば切れ味鋭く、防具にすれば軽いのに鉄より丈夫。私の防具も、その宝石を加工して作ったんだよ」
持ってみて、と兜を渡された。
「・・・おお」
想像以上で感嘆の声を漏らしてしまう。驚くほど軽い。これで鉄より硬いんだから強化プラスチックも驚きだ。クシナダも両手で兜を掴み、上げ下げしながら驚いている。
「他に、聞きたい事はあるかい?」
クルサが切り出す。聞きたい事は大体聞いたかな。
「あ、後二つ。化け物はどこから出てくるの?」
「北東からだね。化け物どもは、北東に聳えるダマバン山で生まれるんだと言われてるよ。だれも確かめたことは無いけどね」
「山に入った人間はいないってこと?」
「ああ。化け物の巣窟に好きこのんでいくやつはそうはいないよ。行った馬鹿もこれまで数えるほどはいたが、誰も帰っちゃ来なかった」
クシナダに目配せする。彼女も気付いたようで頷きを返してきた。
地図が指し示しているのもここから北東方向だ。化け物たちの生まれる場所に、今回の敵はいる。山に登る必要があるかもしれないから、準備だけは進めておこう。
「もう一つは?」
「この街に換金所はあるかな。ここで使えるような金を持ってないんだ。道すがら集めた物を換金したいんだけど」
「それなら、ここを出て右にまっすぐ行くといい。レイネってばあさんの店がある。店先にトカゲの頭蓋骨を飾ってて、見てくれは非常に怪しい店だがばあさんの目利きは確かだし、ぼったりもしないから信頼できる。二階は宿にもなってるから、よかったら使ってやってくれ。換金利用者はさらに割り引いてくれるはずだし」
「助かる。それじゃあ、僕らはこれで失礼するよ。敵が出たら遠慮せず呼んでくれ」
「わかった。一切遠慮せずに呼ばせてもらおう。おたくらの働き、大いに期待しているよ」
続きを書かせていただきました。
この物語の終着点をどうしようかとずっと考えてます。
最初の想定では第一章のオロチ編で終わりのつもりでした。
けどどうしても自分自身が続きを見たくなって始めたんです。
さて、何章までいけるかなあ。十章くらいがちょうどいいかなあ。
さておき、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
またよろしければ、次回も遊びに来てください。
お待ちしております。
感想・レビュー・評価、お気軽にお寄せください。
よろしくお願い致します。




