第42話 死霊魔導師は英雄となったようです。
「はわわわ、ネクロウどうしよう、みんなこっち見てるよー」
「くくっ、セレス、もっと堂々としろ、手でも振ってやれ、ネクロウもだ、なに顔をひきつらせてるのだ」
「……」
パレードだ。
王都シュテルネの大通りでだ。
「どうしたネクロウ。王都を救った英雄たちのためのパレードだぞ、そんな辛気臭い顔でどうする」
「そうですわ~、それに~、ヘルヴィちゃんとぉ~、セレスちゃんと~、ネクロウくんのぉ~、婚約披露なのよ~」
それも陛下と王妃殿下と同じ、屋根も壁も無い馬車に乗ってる。
賑やかな歓声が反響する大通りを、俺たちを乗せた馬車は進む。
大通りには王都の住民が押し寄せ、俺たちに向かって満面の笑顔で手を振りお祭り騒ぎだ。
なんでこうなった……。
ミノタウロスをセレスとヘルヴィの協力もあって、倒すことができた。
それでもダンジョンから溢れ出る魔物たちは止まらなかったそうだ。
だが、防壁内から魔物の流出を抑えていた騎士たちや、デバンたちにダンジョンから救い出された冒険者たち。
さらには騒ぎを聞き付け集まった王都中の騎士や衛兵、冒険者たち。
そして俺の死霊騎士団のデバン、ジェイミー、ジム。
俺の死霊使役は気絶したあと解除されてしまったようだが、一匹すら王都に流出を許すこと無くスタンピードを乗り越えたそうだ。
ジェイミーのおかげで……おかげ?
実はジェイミーの持っていたダンジョンコアを壊せば、その時点で魔物の無限湧きも、ダンジョンの外へ出ようとする動きも止められたそうだ。
そう言うことは早く言え!
と、俺は気絶していたが、セレスにヘルヴィ、デバンやジムもハモってしまったそうだ。
まあ、その声で俺も意識を取り戻したんだけどな。
そして説明を受けていた時、聞き流していた言葉を思い出した。
ジェイミーたちに冒険者を助けに行ってもらう時――
『えっとっすねー、ま、いいっすか、行くっすよー』
――と行ってたことを。
それを思い出した俺も、みんなと同じように、『そう言うことは早く言えよ!』と叫んだのは言うまでもない。
あの時にダンジョンコアを壊してれば、セレスに怖い思いもさせず、俺も痛い思いをしなくて済んだのに。
だが、大騒ぎはそこで終わらなかった。
スタンピードが終息してよかったのだが、コアを壊したせいで、ダンジョンは崩壊し、地下へと続く階段が消えた。
王都の食肉を支えていたダンジョンを壊したのだから、逆に怒られそうなものだが、それで終わりじゃなかった。
ジェイミーが渡してきた真っ二つになったダンジョンコア。
なんだろうと受け取り、なんとなくダンジョンの切れ目を合わせると、コアに入っていた一直線の切断痕が消えてなくなった。
あとは予想通り、無くなった階段が再び現れ、ダンジョンが復活したのだ。
頭の中に『ダンジョンマスターに登録しました』という機械音声と共に。
そこからどうやって俺と、セレス、ヘルヴィとの婚約披露の意味を併せ持つパレードに発展するんだよ……。
「なんだ? ネクロウはパレードが嫌いなのか?」
「……いえ、陛下、好きとか嫌いとか無いんですけどね」
こんなお祭り騒ぎは見る方でいい派だ。
「よくわからんが、お前のお陰でヘルヴィが元の姿で表に出れるようになったようなものだ」
そうなんだよな。
ゴブリンの件で成人後に男爵へ叙爵予定だった。
まあ、反対する貴族も多くいたから成人後になったんだけど、今回のスタンピードから王都を無傷で救った功績で、反対派の貴族も手の平を返した。
さらに、俺は男爵から伯爵へ、セレスは準男爵から子爵にジャンプアップだ。
ヘルヴィは元々公爵なので、褒賞は俺との婚約の確約と、元の姿で表に出る許しを手にしたわけだ。
毒の進行を送らせる呪いは後付けと言ってたしな。
そこで疑問だったので聞いたのは、フェットヴェルデン殿下とブロムヒドローゼ殿下のことだ。
もしかして、あの二方も女性なのかと。
陛下いわく、二人とも元々男だということがわかった。
ブロムヒドローゼ殿下は女性を襲っていたし、そうだとは思っていたけど、予想通りでよかったと思う。
「そうよ~、お姉ちゃんたちはぁ~、成人まで男の子の格好だったってぇ~、今でもお母さんをいじめるのよ~。しくしく」
うん……お姉さんたちは気の毒とは思う。
というか、女の子は成人まで男の子姿で過ごすとか、シュテルネの初代国王は何を考えていたのか聞いてみたい。
「おっ、ネクロウ、パレードの目的地、中央広場に到着だぞ」
「ひょえええー、ネクロウどうしよう、人があんなにいるよー」
両腕を片方ずつ二人にからめ捕られ、右へ左へと引っ張られている。
大通りの両脇に建ち並ぶ屋台から美味しそうな匂いが届き、中央広場からは、衝撃波のような肌を震わせる音の波が届いた。
包まれる歓声と、正面の陛下たちから左右の大切な人へ意識を移す。
ぎゅっと俺の腕を掴み、戸惑いながらも集まった住民たちへ手を振るセレス。
俺を支えに腰を浮かし、女の子の姿で満面の笑みを振り撒くヘルヴィ。
影から祝いの言葉を念話で送ってくるデバンにジェイミー、ジム。
職業を授かってから、半月足らず。
死霊魔導師なんて、忌み嫌われる職業に戸惑いもしたけど、もし、違う職業だったなら、まったく違った今になっていただろう。
ティウス公爵領も、フォイルニス侯爵領も、それに、ここ、シュテルネの王都も荒れていただろう。
転生ガチャに失敗したと思っていたけど、今、大好きなセレスとヘルヴィが俺の婚約者になった未来に立っている。
「回復魔法使いで押し通すつもりだったのにな」
思わず口に出した言葉は隣にいた二人に届いてしまったようだ。
その時、中央広場に俺たちの乗った馬車が入った。
もう石畳を叩く馬車の車輪の音は耳に届かず、鼓膜を震わせる万人の歓声しか聞こえない。
俺の顔の前に二人の顔が視界を遮った。
なにか、目の前で口を動かすが声は届かない。
だけど、言った言葉はわかった。
二人は揃って同じ言葉を口にしたようだ。
「ネクロウは死霊魔導師です」
「ネクロウは死霊魔導師だろ」
と。
そして歓声と、多くの視線の中、二人はあろうことか、俺の頬へキスをした。
パレードが始まってから俺は初めて自然に笑えたと思う。
二人を抱き寄せ、額へキスを返す。
中央広場を包む歓声の音量がさらに上がったのは言うまでもない。
―― 第一部 完 ――
ここまで読んでいただきありがとうございます。
あまりに伸びなかったので、なろうでは第一部で完結とさせていただきます。
完結で伸びることもあるので、その時はまた続きを投稿するかもしれませんが( ̄▽ ̄;)
次は、また違う作品でお会いできたらと思います。
本当に読んでいただきありがとうございました。




