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第13話 死霊魔導師は死霊魔導師でした。

「物理結界!」


 ジムが前に出たとほぼ同時にヘルヴィが左手を空に向け結界を発動させる。


 ヘルヴィの真上を頂点に透明な青い膜が半球の形で俺とセレスを包んだ。


「魔法は気を付けろ! 通常の攻撃のみ防ぐ結界だ! それにこの数ではそうもたないからな!」


「わかった! セレスはヘルヴィの横へ!」


 そう言うと結界に張り付くゴブリンと、奥から動かないヒーラーにヒールショットを二方向に分けて連射。


 人差し指から間を置かずに放たれる何匹ものゴブリンを貫き無力化していってるが数が多すぎる。


 それもそのはずダンジョンの入口を集中して攻撃していたからこそ数も減ってきていた。


 それなのにダンジョン前に陣取っていたキングが前に出てきたってだけで形勢を逆転された。


「くっ! 手数が足りてない!」


「ネクロウ様! ネクロウ様は入口側を! 私は背後のゴブリン倒すから!」


 セレスがそう提案してくれるがヘルヴィの結界は半径三メートル。


 その半分をセレスが受け持つなんて無謀にもほどがある。


 だけどそうでもしないと涌き続けるゴブリンの数は増える一方だ。


 デバンたちはキングで手一杯。


 森に入ろうとするゴブリンたちの包囲討伐で、死霊騎士団たちも現状を維持するだけで援軍は望み薄だ。


「ヘルヴィ! 少し結界の範囲を小さくして!」


「ぬっ! そうか! 守る範囲が狭ければ良いのだな! ならば――こうだ!」


 ヘルヴィがやった結界の変形は半球から三角柱への変形だった。


 守る箇所が三面。


 ダンジョン側の二面を俺が担当すればセレスは一辺三メートルを守ればいいことになる。


 あの一言で最善の結果を出したヘルヴィ。


「セレス! 後ろを頼む!」


「うん! はっ! やっ!」


「頼むぞ二人とも! 最初の結界よりもたないからな!」


 セレスは反復横跳びのように右へ左へと動きまわり持ち前のパワーで一振数匹まとめて吹き飛ばし、後続のゴブリンにぶつかり合わせて吹き飛んでいた。


「はっ! 流石セレス! 負けてられない!」


 俺も両人差し指では間に合わないと、全部の指からヒールショットを撃ち始める。


 手数は格段に上がり、近づくゴブリンたちは結界に張り付かなくなるほどだ。


 だが貫通力が無くなったからか射線上にいてもよくて二匹までしか倒せない。


 それに倒れていくゴブリンたちが積み上がり、肝心のヒーラーへの射線が刻一刻と無くなっていく。


 邪魔な遺体を影に引き込んでもらおうにも死霊騎士団、デバンたちも手一杯。


 このままだとセレスと俺は魔力切れでこの拮抗も崩れ去ってしまうだろう。


 何か突破口は――


「くっ! 破れるぞ! すぐに張るが気を付けろ!」


「おう!」

「うん!」


 返事をした直後、結界が一瞬で消えた。


 ヒールショットをバラ撒く。


 一、ニ、三のタイミングでヘルヴィの魔力が解放される。


「物理結界!」


 さっきと同じ三角柱が俺たちを包み込んだ。


「ネクロウ! 思ったより魔力の消耗が多い! あと一回、無理して二回が限界だ!」


 懸念していた魔力切れがさらに現実味を帯びてきた。


 ヘルヴィは片ひざを地につけ肩で呼吸をしている。


『主! 何してるっか! 団長殿と一緒で脳筋っすか! 主は死霊魔導師っすよ!』


 あ! そうだ、俺は死霊魔導師、死霊を使役する忌み嫌われる職業の死霊魔導師だ。


 ジェイミーに言われるまでそんなことは記憶の彼方に飛んでいた。


 そうだ。モンスターだって死ねばアンデッドになる。


 ならば今邪魔で仕方がない山積みのゴブリンたちをアンデッドとして使役すればいい!


 どうすればいいか、やり方は職業を授かると同時に頭に流れ込んできた。


 高位のアンデッドなら相手の意思で拒否されるだろうが、相手はゴブリン。


 やってやれないことはない!


 仕事に命を燃やし尽くした俺ならできる!


 ヒールショットを撃ち続けながらも目に魔力を込める。


「うおっ!」


 戦場に数えきれないほどの(もや)が所在無く漂っているのが見えた。


「コイツらだな! お前たち! 俺の名はネクロウ・フォン・シュヴェールト! 俺に従え! 死霊使役(ネクロマンシー)!」


 スキル名を唱えると、体から黒い靄でできた糸状のものが無数に伸びて、漂うゴブリンたちの魂に迫りからめ捕った。


「身の残るものはその身に! 無ければ目の前のゴブリンから奪い取れ!」


 命令を下したあとは早かった。


 目的無く彷徨っていたと言うのにその動きは速かった。


 倒れたゴブリンに飛び込むもの、溢れ返る生きたゴブリンに取り憑こうとするもの。


 そして一匹目のゾンビが同族ゴブリンに襲いかかってからの戦場はゴブリンたちによって同士討ちが始まった。


『流石主っす! 団長殿とは違うっす!』


『ネクロウ様、規格外』


『くははは! やりおるわ主よ! この好機、逃すでないぞ! あとジェイミーは覚えておけ!』


『やぶ蛇だったっすー!』

『『『『『おう!』』』』』


 戦場の雰囲気が反転した。


 アンデッドゴブリン対ゴブリンの勝敗は目に見えて明らかだ。


 頭部を潰されない限り相手を死に追いやるために止まらない。


 潰されれば今度は相手に取り憑き死ぬまで攻め続け、殺されたらアンデッドとして相手に迫る。


 それに倒したゴブリンたちも続々とアンデッドとして使役し、俺の軍門に入っていった。


 これでヒーラーに集中すればキングの回復手段を断ち切れる。


 ヒーラーに意識を向けヒールショットの連射を開始した。


「きゃあ! 来るな!」

「くっ! なんだこれは結界をすり抜けたぞ!」


 セレスとヘルヴィの声に後ろを見ると、ゴブリンの靄より春かに濃い靄が二人に迫っていた。


 その靄はゴブリンたちとは別物だ。粘つくような憎悪と底の見えない悪意が渦を撒いているようだった。


 二人に迫る靄にも死霊使役の糸は絡み付いているが言うことを聞く気配がない。


「なんだよこれ! まさか高位なのか!」


 絡み付いた糸お陰で靄の正体がわかる。


「ゴブリンジェネラルだと!」

 読んでいただきありがとうございます。


 ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。

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