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平和で楽しく可愛い猫の島

 ラデス王の暗殺を防いだノアクル一行は、国を挙げての英雄扱いをされていた。

 今は感謝の言葉をラデス王から直接告げられている最中だ。


「本当に助かった、ノアクル王子。スパルタクス。命の恩人に対して感謝の言葉だけでは申し訳ないのである。欲しい物があればなんでも――」

「俺は何もしていないのでパスです」

「僕も当然の事をしたまでだから……。だからいらない」


 そのままノアクルとスパルタクスは立ち去ろうとしたのだが、その場にいたローズがジト目で睨み付けてきた。


「二人とも……何を言ってるんですか!? 海上都市ノアとしてはまだまだ欲しい物資がありますわ! ラデス王、今からリストを作るので援助頂けるとありがたいですわ!」

「た、逞しい……」


 そのまま〝ノアクルパレード〟やら、〝スパルタクス杯〟などのイベントが行われる予定があるとラデス王から告げられたが、さすがにダイギンジョーを探すために逃げ――もとい海へ出ることにした。




***




「さて、現状確認をしておくか」


 いつものメンバーは、海を進む海上国家ノアの作戦室に集まっていた。

 この作戦室はパルプタを素材として【リサイクル】したときに出来た部屋で、その名の通りに作戦を立てたりするときに使う。

 もっとも、普通に雑談するときに使ったりもするので、お茶うけが置いていたりもする。


「まずは……スパルタクス、腕の具合はどうだ?」

「折れてるけど、問題ない」

「問題大ありだな。しばらくは戦わないように」


 スパルタクスの右腕は当て木がされていて、首に布を通して吊っていた。

 普通は激痛でまともに行動することもきつそうな重度の骨折だったが、スパルタクスは涼しい顔をしていた。

 さすが戦士と言ったところなのだが、それで無理をさせるわけにはいかない。

 肩を落とすスパルタクスだが、ここで甘やかしたりはしない。


「次に~……当面の目的についてだな」


 最初は猫の料理人ダイギンジョーを探すだけだったが、そこへ死者の島というものも出てきたのだ。

 一応、優先順位などをきちんと決めておきたいところだ。


「ダイギンジョーを探すことは変わらない。死者の島というのは手がかりが少なすぎるからな」

「し、死者の島に行けばトレジャンが待ち構えているかもしれませんにゃ……!」


 たぶん、トレジャンのことを一番知っているであろうジーニャスが震え声で言ってくるが、ノアクルは珍しく真剣な表情で告げる。


「その通りだ。トレジャンが待ち構えている可能性が高い。だからこそ……そこで借りを返してやらなきゃな」

「にゃ!? 本気ですかにゃ!?」

「死者の島の情報を掴み次第、向かうぞ」


 スパルタクスはコクリと頷いた。

 他のメンバーも概ね同意のようだが、やはりジーニャスは乗り気ではないようだ。

 ノアクルは表情を緩め、フッと笑う。


「まぁ、そちらはいつになるかわからん。今は猫探しだ。ローズ、ラデス王からもらってきた情報にダイギンジョーがいるという島の情報があったんだよな?」


 ローズはコクリと頷いた。


「はい、珍しい名前なので渡航記録がすぐ見つかりましたわ」

「行き先は?」

「猫の島」


 猫の島とは、随分と可愛らしい名前だなと思ってしまった。


「情報によると、猫の島は猫神と呼ばれる存在が治めていて、住民は〝ケットシー〟と呼ばれる獣人らしいですわ。独特なルールが敷かれていて他からの干渉は受けませんが、観光客たちを快く迎え入れているとか」

「なるほど」

「曰く、実際に行った観光客の感想は『平和で楽しく可愛い猫の島』らしいですわ」

「それなら安心してダイギンジョーを探せそうだな。余裕があれば観光をしていいかもしれない」

「殿下、さすがに気を緩めすぎでは……」

「ふはは! いつもは新しい島へ行くととんでもないことに巻き込まれていたが、今回はバカンス気分でいけそうだな!」




 ***




 ――三日後、ノアクルは猫の姿で地下労働を行っていた。


「どうして」

ヨシ! ご安全に!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回はバカンス気分でいけそうだな!」 …あ、フラグだな。 思った直後に回収かい。
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